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西暦1900年ごろの山東省高密県、ドイツが山東省を租借し膠済鉄道を敷設する、まさに清朝末期が舞台。
何だか、時代背景が違うだけでそのまま『水滸伝』にエピソードの一つとして紛れ込めそう。もちろん時系列や語り手の視点が入り組むなどの現代的な特徴はあるものの、一般市民の活力と悲哀に満ち満ちた語りは伝統的な中国の小説を感じさせる。
さて、話の筋はそういう意味でも結構ベタベタではあるのだが、作中で重要な役回りを果たす地方劇「猫腔」が、作品自体のいい相の手となってテンポよく楽しく読める。
しかし何よりも、タイトルにあるとおり、本書の見せどころは数々の処刑シーンだろう。残酷にして興味深く、もはや芸術とでも言えそうな処刑シーンは、読んでてこっちがムズムズしてくるほどの素晴らしい出来栄え。あまりの強烈さに読み続けるのも堪えるけど、にもかかわらず読む手が止まらぬ。
賑やかに悲しげに、破滅的な最後に向かっていく物語に強く惹きこまれ、読み終わってみると久々に満足度が高かった。
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2014.4.1~10 読了
清朝末期の山東省を舞台にした小説。西太后の覚えもめでたい清朝の処刑人と残酷な刑罰の模様が出てくる。ドイツ兵の横暴ぶりを何気に読んでいたが、翻訳者のあとがきで義和団の乱、八カ国の植民地侵略、西太后・袁世凱の反発といった歴史背景があることが分かった。現代中国はこのとき諸外国に無茶苦茶にされたことの名誉回復を目指している!
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謀反を起こして捕えられた孫丙(そんへい),美人だが大足の娘の孫眉娘(そんびじょう),眉娘の夫である無能な趙小甲(ちょうしょうこう),その父で死刑執行人を長年続けている趙甲(ちょうこう),県知事で眉娘の愛人である銭丁(せんてい)をめぐる壮大な物語。趙甲による死刑執行シーンのすさまじさ,章によって語り部が変わることでの文体の妙など,大盤振る舞い。
最初は登場人物の名前が分かりにくいかもしれないが、上記の5人が分かれば大丈夫。
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人生最高にエグい本。
あまりにエグすぎて読むのを止めてしまいたいのに、描写の巧みさにグイグイ引き込まれて最後まで読まされてしまった。
見たこともない異文化の情景が熱や匂いまで伴ってまざまざと目の前に浮かんでくる。中国にいたはずなのに顔を上げたらメトロの中なのでビックリするぐらい。
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面白いです!劉の頭を高々と掲げた趙甲は台下の監察役人に向かって叫んだ。「大人、ご検分を願います!」絵になる場面がいっぱいありますね~虚実いりみだれて、そこに幻想も混ざっているので現実と頭の中の世界が交差して異様な世界を見(魅)せてくれます。。
マオチェンの調べにのせて、清の西太后や皇帝、袁世凱に認められた処刑人、趙甲が息子の嫁の父、孫丙に白檀の刑をすることに。
色々な処刑方法がでてきて、グロいです。
感想をアップしてないけど、「首斬り人の娘」を昨年暮れによみましたが、処刑人の話が続きました・・・
下巻へ・・・いよいよ白檀の刑です。はたしてどんな・・・
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清朝末期、西太后が権力を振るう世のこと。ドイツ人を殺害したかどで処刑される一人の男と、そこから連なる人々の物語。独特な物語、語り口、面白かった。
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ノーベル賞を取ったらしいからという安易な理由で出世作を適当に。清末期の天才処刑人趙甲が演出する様々な処刑法は鮮やかの一言。そして彼のキャリアの集大成である白檀の刑とは・・・というグロいっぱいの時代小説。
とにかく処刑法がグロいけど、台詞や描写が全部芝居がかっているので、それほど生理的な気持ち悪さはない。むしろ派手な京劇やおどろおどろしいグラン・ギニョールを観ているような、そんな芝居感覚で読める。その分かなり濃い文体なので、上巻を読むのが精一杯w下巻はしばらくたってからでいいかな…
古代中国や江戸時代、現代でも厳格なイスラム国家だと死刑やムチ打ちなんかは一種のエンターテイメントとして民衆が多く集まったらしい。今ならインドの巷を騒がしてるレイプ犯とか捕まったら台上でそんな一役人気者になるんかな。
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史実を雑えながら、残酷な話をコミカルに描く。上を読み終えた時点での感想としては、登場人物のみなさん人間くさくて実はいい人ばかりのような気がする。趙甲も。なんかフォークナーっぽい気がする。フォークナーよりもずっと明るいけど。
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出だしから、高密県の地方芝居のセリフから始まり、しかも眉娘の父が、処刑人の舅に刑にかけられ、さらに眉娘がその舅を殺害する、という残忍ですごみのある話=大筋=が強いインパクトとなりました。
この地方芝居の下敷きがあって、それに肉付けをした作品化と思えば、地方劇も創作、芝居の様に、登場人物の一人一人の回顧が上手く組みたち、読み進むうちに全容が見えてくる巧みさに感動します。
時代背景が清朝末というのも、変化と旧態依然とで厚みを増しています。
読みはじめ「眉娘の繰り言」の一人言の言葉使いが、あばずれのような雰囲気の「うち」「ぶちこまれた」を使うかと思えば、「~でした」「~ございましょうかね」と丁寧で、キャラクターが定まらず日本語訳が、作品へ入り込む妨げになり残念でした。
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詳細は、こちらをご覧ください。
『あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノート』 → http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1552.html
2012年ノーベル文学賞は、中国の莫言氏。
以前読んだ 「 転生夢現」も すごく面白かった!
・ 『転生夢現』 上 2008/5/23 読了
・ 『転生夢現』 下 2008/8/05 読了
この本も、パワフルで日本や西欧とは全く違う中国の民衆の生き様が、飾り気なく語られている。
登場人物は、ふつうの庶民のようで実は、とてつもない個性的な人々。
飾らぬ語り口が、読み手をグイグイ惹きつける。
わかり易い文章には、生活臭がプンプン。
普通ならうんざりしてきそうな話が、構成の巧さ、思想やらで品格さえ感じる。
2012/10/11 予約 11/27 借りる。11/28 読み始める。
内容と著者は
内容 :
清朝末期の山東省。鉄道を建設しようとしていたドイツ人技師に妻を陵辱されそうになった孫丙は、技師を殺害。
報復のためドイツ提督は中国人を大量虐殺。その背後には袁世凱がいた…。
第1回鼎鈞文学賞受賞作品。
著者 : 莫言
1955年中国山東省生まれ。76年に人民解放軍に入隊。
85年「透明な赤蕪」でデビュー。「白檀の刑」で第1回鼎鈞文学賞を受賞。
著書に「赤いコーリャン」など。
2012年ノーベル文学賞受賞
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実際に読んだのは 2013年頃
一言でいうと、強烈だった。読み終わったあとは、しばらく何も読めなかった。色んな意味で衝撃的だった。
著者の出身地である中国東北部についても、歴史を混ぜながら盛り込まれていて、それだけでも意味していることが伝わってきた。
改めて、むかーし日本でも一時期話題になった映画 赤いこーリャンも原作が莫言だったのね。
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初めて読んだ莫言。地方劇を題材としてるから始まりの各章、主要人物がそれぞれの口調で語る口語調で描かれているのか。まるで京劇の舞台のようにそれぞれの角色が舞台に出てきて歌ったり見栄を切ってる姿が浮かんできて凄く懐かしい気持ちになった。文章中使われてる言葉が割と荒っぽいというか直で汚くて、大学の教授が中国文学は半端なく罵語が豊富!って言ってたのを思い出した。罵語にしろ典故にしろ韻文にしろ翻訳めちゃ大変そう。原文はどういう言葉で書かれているんだろう。特に擬音どうなってるんだろう。処刑の描写が想像以上に生々しくえげつなくて、でも凄く惹きつけられて読む手を止められなかった。中国の処刑がやばいという話は色々と聞き及ぶ所だし、そもそも老仏爺からして物凄くエグい事してるんだから何をか言わんやって感じではあるけれど。そこに処刑人がいて、上からまるでお品書きのように発注された刑を職人の如く遂行していることには、この本を読むまでは思い至らなかった。その分、余計に処刑という行為が血肉を持ったというか。ぐぅっと来るものがあった。中国近代文学や元代の戯曲ばかりで列強に蹂躙された後の中国文学をちゃんと読んだことが無かったけどなるほど…と思った。あとがきで吉田氏が書かれている「莫言はこの小説で、人間の修羅を見つめていると言えましょう。」という言葉には凄く得心がいった。とりあえずそんな感じ。