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紙の本
マスコミを操作して虚構の世論を作り上げる、というのは旧権力者たちの常套手段ですが、それにしても陰険なやりかたです。しかも、操られることに何の疑問も覚えない市民たちがいます。キングの新作『アンダー・ザ・ドーム』でも見られたし、マスコミの反小沢一郎キャンペーンなんて、愚かしいを通り越してバカバカしい。ハラハラドキドキして結末まで見届けるところまで一緒・・・
2011/09/03 19:11
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
二つ並べると、一つになるデザインのカバーはよくありますが、なかなか迫力があります。字の入れ方もですが、血痕を象徴させた赤いドットの大胆な入れ方も、そして空色とでもいいたいような微妙な色合いの写真もそれに寄与しています。色合いは全くことなりますが、似たような雰囲気の文庫にトム・ロブ・スミス『グラーグ57 上下』があります。サスペンスにはこういったデザインが合うのかもしれません。ちなみに、カバーデザインは岩郷重力+WONDER WORKZ。、カバー写真は(C)tanakawhoと注記があります。
で、クーンツ。キングと並び称されるモダン・ホラー界の巨人ですが、この二人、膨大な著作を持っている点でも共通していますが、日本での出版状況は微妙に違います。基本的に、クーンツは文庫で出ます。出版社は今のところ、講談社、早川書房、文藝春秋が中心。で、キングは単行本で出て、それが数年後に文庫、時々オリジナル文庫。出版社は文藝春秋、新潮社、角川書店といったところ。二人とも長い話、シリーズものが多いのですが、総じてキングのほうが分量は多めで、全作品が一つの世界に収まっている感があります。
私としては、文章力や提示する世界の大きさ、時間のスケールなどトータルで見た場合、やはりクーンツはキングに負けるな、とは思いますが、かなり以前から読んでいるし、それなりに面白くて、エンタメという観点だけに絞れば、互角の戦いをしているともいえるので、一時期、読まなかったことがありますが、基本は本が出れば読む作家ではあります。で、今回のタイトルは意味不明ながらカッコイイ。カバー後ろの案内文は
上巻が
*
カリフォルニアのナパ・ヴァレーでバ
ーテンとして働くひとりの男。昏睡
状態となった婚約者を見守りながら、他
人と極力かかわらずに暮らすビリーの日
常は、一通の不審な手紙から揺らぎ始め
た。それは殺人予告であり、否応なしに
犠牲者を彼に選ばせる脅迫状……。巧妙
に仕組まれた恐怖のゲームが幕を開けた。
*
下巻が
*
正体不明の犯人の予告通りに、連続殺
人は正確に実行されていく。事件の
容疑者をビリーに仕立て上げるような痕
跡を、用意周到に残しながら。残虐さと
恐るべき知性を兼ね備えた殺人者はいっ
たい何者なのか。状況は絶体絶命。恐怖
はどこまでも速度を増していく――。ク
ーンツ・ワールドに満ちた傑作ミステリ。
*
となっています。
主人公はビリー・ワイルズ、34歳。バーテンで元作家で、婚約者のバーバラ・マンデルの信託基金の管理者の一人になっています。そして、今回の事件の核には、事故にあい、四年以上昏睡状態で入院中のバーバラの何百万ドルもの賠償金に基づく信託基金があります。ちなみに、バーバラは言葉を口にし、目を開けることもありますが、医者からは意識があるとは受け止められていません。
ついでに、信託基金の他の管理者を書いておけば、ビリーの会計士のミンや、弁護士ハリー・アヴァーキアンがいます。ビリーの心配を全く気にせず、信託の運用はうまくいっていると明言します。この三人が、バーバラの巨額の賠償金を管理しているわけですが、それに不満を抱き、自分こそが正統・唯一の管理者である、という人間がいます。
それがダードレ・マンデル、バーバラの双子の妹です。悪のエネルギーの塊りとでもいうべき存在で、母親が精神病院に入ったために、二歳で里子に出され、バーバラと別々に育ち、二人はそれ以降会うことなく過ごしてきました。21歳になったとき、バーバラの会おうという申し出も拒否しています。合成薬物と派手な生活を好む彼女は、姉と絶縁状態で暮らしてきましたが、バーバラが事故にあい、何百万ドルもの賠償金を手に入れると、信託財産のただ一人の管理者と認めるよう訴訟を起こしたのです。
信託基金については、もう一人、ビリーとは全く異なる考え方をしめす人間がいます。ジョーダン・フェリアは、昏睡前のバーバラからは信頼されていた彼女の担当医で、42歳の分別盛りの男性で、彼は四年経っても意識の戻らないバーバラの延命治療を止め、遺される信託財産で困った人を救うべきだとビリーに進言しているのです。
でも、一通の不審な手紙さえなければ、ビリーの生活は平穏といえたでしょう。彼が働くバーには、ファミリータイプのバーを経営しているつもりのオーナーのジャッキー・オハラや、ウェイトレスで、彼女を目当てに足を運ぶ客も多いという美女アイヴィ・エルギンや、彼女のの同僚で、長身のがっちりした体型で、ファンも多いシャーリー・トゥルーブラッドといった素晴らしい仕事仲間がいます。
ちなみに、アイヴィですが、周囲が羨む美貌と健康な肉体に恵まれているものの、それを武器に男を騙そう、などという気はまるでなく、最高のウェイトレスと評価されています。自分を、生贄の獣の内臓で吉凶を占う腸卜者だと信じているところが面白いです。ビリーにはラニー・オルセンという、美術学校にいきたかったものの、警官だった父親の命令でいやいや警官になったという46歳の友人もいます。
そう、一通の手紙は殺人予告でした。しかも鍵を握るのはビリーの返答。とはいえ、それは究極の選択ともいえる、必ず人が死ぬ選択ではあるのですが。そして、ビリーの逡巡を無視して、殺人が行われていきます。犯人と目されるのはビリー。そして警察には、ジョン・パーマーがいます。彼はナパ郡の、上昇志向の強い保安官で、14歳の少年だったビリーに、厳しい尋問をしたことがあります。その後、警部補から警部、署長と順調にのぼりつめ、保安官の選挙に立候補、二度も当選しています。年齢は50代前半でしょうか。
彼は、若さゆえか、杓子定規の捜査をする巡査部長ヴィンス・ナポリティーノと、その相棒で、ヴィンスが鞭であれば、飴の役を果たす巡査部長サム・ソビエスキを使い、ビリーを追いつめていきます。権力を握っている人間が、さらにその立場を強固なものとするために、誰もが疑いなく思っている被疑者を追いつめていく、或いはマスコミを操作して虚構の世論を作り上げる、というのは小沢一郎に対する検察の手法に酷似していて、旧権力者たちの常套手段ですが、この罠に陥った人間にとっては、数少ない支持者だけが救いです。
この苦境をビリーは乗り越えることができるのでしょうか。手に汗してお読みください。キングの新作『アンダー・ザ・ドーム』と読み比べるのも一興でしょう。最後は目次
第一部どちらを選ぶかは、おまえしだいだ
第二部 ふたつめの傷を負う覚悟はできたか?
第三部 おまえがもっているものすべてが、おまえの人生だ
訳者あとがき
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