紙の本
夢のような
2017/02/03 21:42
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
不安など無い理想的な世界が出来上がっているはずなのに結局 悪意も絶望も無くならない。その事実に寒気を覚えた。
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彼の作品がもう読めないとは。
密度の濃い言葉の羅列。
文脈が、美しい。
これからどう生きるか。
優しくないな。
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前作の虐殺器官で繰り返し描写された、地獄は頭の中に存在すると言う軸。
そしてハーモニーでは操作された脳が、天国を作り出す。
高度に発達しすぎた医療体制が、人から生きる意義を緩やかに奪っていく。
少女時期の仲間との一体感から、大人おとなしてない大人を描くのが、ホントにうまい。
終盤のヤマでは、すっかりそうだと思って読んでいた事かわ結果として「はっきりとわかった」と出てきて、逆に驚いた。
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ハッピーエンドといえばハッピーエンド、バッドエンドといえばバッドエンド。
……この世界に人々がなじめず死んでいくのならーー」「そ、人間であることをやめたほうがいい」
111027
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最初は例のフォーマットがあったんで、正直読みづらいなぁ、と思った。
けど、結果はそんなの全然気にならず、すごく読みやすかった。虐殺器官よりはすっとはいってきた。
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意識の必要性を問うた物語。
人間というのは「何がしたい」と「何をすべき」との葛藤に苦しむ生き物だ。しかし仮に意識を取り除いてしまえば、欲望に打ち勝つ必要もなく最適な行動がとれる。結果、世界は確定された秩序の中で上手く回る。
でも選択肢が存在しない世界なんてゾッとする。すべてが打算的で無駄なことができない調和のとれた世界より、不協和音奏でまくりの世界の方がきっと面白い。それが幸せであるかどうかはわからないが、人であるからには『個』であるべきなのだと思う。
虐殺器官もそうだったが、伊藤計劃は本当に考察力がすごい。面白い着眼点からイマジネーションを膨らませ念入りに設定を組み立てる。小説家として必要なものをすべて持っているような人である。まだまだこの人の作品を読みたかった……ご冥福を。
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今の社会体制(=価値観)に生きる人間としては最後の展開に抵抗感を覚えずにはいられないんだけど、論理的に突き詰めていくと彼女たちの選択はこれしかありえなかったんだろう。でもなにより、作者の切迫感が伝わってきて苦しい。隅々まで論理を重ね、余計な音を、言葉を削ぎ落として本自体に調和を図ったような印象。
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第30回日本SF大賞受賞。「ベストSF2009」第一位作品。前作の「虐殺器官」の未来の位置づけの作品である。医療分子の発達で、病気が無くなった社会。争いも無く、人類は一件平和な世界を送っていた。そこに真のハーモニーを求めようとする集団が現れた。SFというよりは、ある意味哲学的内容を持った作品である。ハーモニーの意味するもの。なるほどと思わせる作品であった。
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2010/12/11 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2014/5/2〜5/9
伊藤計劃氏の第二長編、かつ最後の長編作品。第30回日本SF大賞、第40回星雲賞日本長編部門受賞、ベストSF2009第一位。
前作「虐殺器官」から約二年ぶりに読んだ。前作も凄かったが、こちらの方がより緻密で有りそうな世界。若くして亡くなってしまったが、本当に惜しい才能を無くしてしまったんだなあ。もっと作品を読みたかった。
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「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」—御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、 3人の少女は餓死することを選択した—。それから13年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監察機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。これは“人類”の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語—。『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点
幸福とは、夢も希望も必要ない状態と定義はしうる。
それを一つの作品に仕上げるとどうなるか。
その幸福すら必要ないところに逝ってしまった著者最後の長編の意義がそこにある。
「自由を守れ」という言説は、たぶん「無能はさっさと死んでくれ」という言葉と、ほとんど同じ意味を持っているのだと思う。自由を守るためには、だから「俺に死ねというのか?」という人たちを説得しないといけない
本作は、これに対する究極の回答になっている。
しかし本作のように「生きる」のが彼らの、いや我らの望む回答かといえば、「そんなばかな」ではないのだろうか。
しかし「そんなばかな」と思えるのは、我々に選択がある--とまだ思い込んでいるからでもある。選択があるから、「別の道を行けばよかった」という後悔もあるというのは、理屈の上ではあっている。
それでは、常に「最適の選択」しかしない人々に不幸は存在しうるのか。
それが、本作の提示する幸福だ。
正直なところ、本作の幸福を選ぶ人々というのは、たとえフィクションであっても少数派であると容易に推定できる。悲劇は喜劇ほど売れない。本作がハガレンや「アイの物語」ほど売れるかどうかは多いに疑問だ。本作に幸福はあっても救いはないのだから。
しかし本作の「解」というのは、幸福というものを突き詰めて考えれば必ず一度は遭遇する解でもある。別解を示すのはそう簡単なことではない。その意味において、本作は幸福を考えるものが避けては通れない 「門」となるのではないか。
本作はそれゆえ劇薬でもある。中二病患者には致死性さえある。現時点において本作はおとぎ話ではあるが、本作の世界で実現している技術が実現したら、発禁になっても私は驚かない。本書はそういう作品である。覚悟してお読みいただきたい。
それにしてもSFというのはすばらしい。こういう夢も希望もない--どころか必要ない--という作品をも、懐に抱くことができるのだから。
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前作の 虐殺器官に続いて伊藤計劃の面白さを堪能した。SF独自の造語 新語 科学用語などに慣れてしまえば、結構読みやすくなる。さすが第30回SF大賞受賞しただけの内容だと思う。これからが期待できると思う人が、夭折してしまうのは非常に残念だ。これを機会に SF物を少し読んでいきたいと思った。
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危うい、綺麗な物語だなあというのが一読しての感想でした。
人間とは何か。意識とは何か。『わたし』とは本当に必要なものなのか。どういう状態が幸福なのか。揺らぎを極限まで削った状態が理想なのか。
とても素直に、伊藤計劃さんがどういう捉え方を世界に対してしているのかが、引っ掛かりなくすとんと落ちてきた感覚です。あまり本を読んでてそういう風に著者の考えを『成程』と納得することは無いのですが、この本は違っていました。
文章の所々に配置してあるタグがまたいい仕掛けだなぁと。これは一体なんだろうかと読んでいるときは思ったんですが…。
究極の社会性生物になってしまうことが、人間にとっては究極の理想的な状態で幸福なのかなぁ。大きな秩序の元、誰の意志も他と抗争することがない世界。それは確かに、人間が求めてやまない『平和』を実現した世界かもしれないな、と思いました。
それでも、どれだけ間違いを繰り返して他を踏みつけにせずには生きていけない生物なのだとしても、やはり人間は『わたし』を持ち続けるべきなのか。
彼がもう亡くなっているということが、とても大きな損失に思えます。
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「ハーモニー」伊藤計劃
叙情SF。ベビーピンク。
第30回日本SF大賞。「ベストSF2009」第1位。第40回星雲賞日本長編部門受賞。
全世界がサイバー医療ネットワークで包括され、健康的で慈愛に満ち溢れた未来、
人間の本質を問う、優しく悲しい物語。
際立ったドラマ性やサスペンスを演出する書き口ではなく、あくまで文学的に紡ぎ出されるSFはこんなにも綺麗な読了感なんです。
『虐殺器官』と同様に非常に綿密な設定が素晴らしいです。本当に現在の延長線上にありそうな未来。
何より本テキストの記述言語 etml の設定が…!やられました。
著者の伊藤計劃氏は本作を病床で書き上げ、発表3ヶ月後の09年3月にに34歳で亡くなりました。
なんというかその悲劇的な経歴も評価の一端に関わってしまうとは言え、
とにかくもうすごいいいSFなのはまちがいないです。色が。
個人的に、物語世界への没頭感が少なかったと言うことで☆4.5で。
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大災禍と呼ばれる地球規模での大擾乱と核兵器の使用による荒廃の時代を経て、そのトラウマと反省から、テクノロジーによる極度の厚生社会、高度医療社会が実現された世界が舞台。この世界では生府によって統治されていて生命主義、社会の全員の健康を最大限に尊重されている。と言えばとても魅力的な世界に感じれるが。。。
作者の書き方がすごくうまくてリアリティがある。本当に起きそうな話。面白かったです!
あとetmlがとても面白いなと思いました。
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素晴らしかった「虐殺器官」に続き文庫化された物語。あり得そうな未来の物語。世界のこと、個人のこと、意識について。読後の脱力感は物凄い。本当に素晴らしい。切ない。悲しい。でも読んでいる最中のわくわくドキドキする感じは極上。もっと読んでいたいと思える至福の一冊でした。