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人間は弱いものだという前提の下、すべてを神にゆだねるイスラムの考え方が、自殺を少なくしているという説には考えさせられた。
イスラムについて西洋からの偏見に満ちた見方を払拭する良書だと思う。
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日本との対比は、具体的に異文化体験をしているようで、実に興味深かった。全体的な論調として、ややイスラム偏重の傾向性あり。
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母のおすすめ本。日本に暮らしていると普段あまりなじみのないイスラームの考え方について(たぶん)わりと詳しく紹介してある。
人間は弱いから規律を破ってしまうことがある、という前提で喜捨のシステムが組み込まれているというのが興味深い。「インシャアッラー(神の御心のままに)」(自分も他人も責めない)という考え方はいいなと思った。
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タイムリーにもエジプトの革命は引用の理由も一理あるように思える。
日本人は何かを「してもらう」のを「恥」に感じる文化があるということをベネディクトは指摘していたが、キリスト教でもイスラム教でも、貧しい者が富める者に「してもらう」ことは宗教によって当然視されている。また、お客様が家の者に「してもらう」ことも当然で、そこに返礼などは発生しないという。
イスラムの自殺率は大変低いという話も書かれていた。自殺が宗教で禁止されているということもあるが、困っている時でも誰かに「してもらえるかも」と思うことで、追い詰められる機会も少なくなるのではないか。ちょうどリストカットの本を読んだ後だったので、双方の本から考えさせられることがあった。
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仕事の関係でイスラム教の人と接する機会があったので、知っておこうと思い、読み始めました。
自分はイスラム教ではないが、イスラムの考え方について少しわかったような気がします。
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イスラム地域研究者が,イスラムの教えをポジティブに解説。イスラム圏では自殺が少ないらしい。どの宗教も自殺は基本的に禁忌だが,イスラムは特にすべてを神に委ねる考え方なので,自殺は神の否定につながる。
ではなぜ自爆テロ?という話だが,それは著者の『イスラムの怒り』に詳しい。信仰の敵とのジハードで命を落とす殉教は,イスラムでは価値ある行為とされているから。ただ911なんかを殉教で正当化するのはかなり無理で,現実にイスラム共同体の存続が脅かされている場合に限られるらしい。
悲しいことにパレスチナ,特にガザの状況は絶望的。自爆テロを殉教とみなしてしまうくらいに悲惨。だからこそハマスが支持を得た。しかし,本来イスラムの教えはかなりポジティブで,多用される「インシャアッラー」もその表れ。日本人は重い病気などすると「因果」とか「霊」とか後ろめたさを感じるが,その点,神の御業と達観しているムスリムは,くよくよすることも少ない。結果,予後もよいのではと著者は推測。少なくともQOLは上がるだろう。
それと,アッラーは人間の弱さを知悉していて,欲望に負けてラマダンなど戒律を破ってしまっても,後で喜捨などをして善行を積むことで,回復可能。ちなみにラマダン月の日中は,断食だけではなくて,性欲とかあらゆる欲望を絶つんだという(サウム)。日中だけ絶てばいいなんて食欲より簡単だ…!
とまれ,イスラムの教えはムスリムの生活に深く入り込んでいて,敬虔の程度には差はあれど,基本的に望ましいものとして認識されている。
思いがけず叶った著者たちとトルコ外相の会見が詳しく紹介されている。EU加盟が後退したために実現した会見だが,外相の言うことは理にかなってる。「ヨーロッパの価値というのは、宗教、民族、言語にあるのではありません。…民主主義、人権、自由な市場経済システムにあるはずです。」p.103
ただ,著者がかなりイスラム贔屓で,西洋文明に批判的なのが少し気にかかった。宗教のおかげでよりよく生きているムスリムも多いだろうけど,余計な世話を焼かれる共同体重視の環境を煙たく思っている人もいるようだし,その程度がひどくて傷ついている人々もいるかもしれない。
それでも,西洋側からのイスラム理解が偏見に満ちていて,それが両者の関係をギクシャクさせていることは事実なのだろう。もっと相互理解が進むといいけれど,移民労働の問題もあり,経済面でもっと余裕が必要かも。宗教にこだわりのない日本人ができることも少なくない,のかもしれない。
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『なぜムスリムは自殺をしないのか』という問いをはじめ、全知全能のアッラーのみにその身を委ねることの安らぎ、イスラーム的なもてなしの心地よさ、クルアーンやハディースに記された弱い人間を導くための行動規範などについて述べられている。
著者はムスリムではないが、『どうしたら西洋とイスラム社会の対立を緩和できるか』という立場、どちらかというとムスリム寄りの立場で書かれている。閉塞感が漂う、日本をはじめとした世俗主義を採った国家の中で、イスラーム的な考え方が人々に癒しをもたらす可能性は大きいと、著者は期待している。
わたし自身もムスリマとして、イスラームの癒しには確信を持っている。この本は、ムスリムもノンムスリムにも読んでもらいたい一冊である。
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イスラムでは命は神の手にあるものであり、人がどれくらい生きながらえるのか、いつ死んでいくのかも、全て神の手にあるとする。命を決めるのは神であって、人間ではない。
厳格なムスリムは墓を作らない。作ったところで霊が現れるという発想がないのだから、墓に詣でること自体に意味がない。
イスラムでは理由なき殺人は厳禁である。
苦境にある人にとっては、神に全てをゆだねていれば、いつか良いことが起きる。成功者にとっても、神に定めるべき義務を果たして親切な行いを積めば、来世でご褒美がもらえる。
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[ 内容 ]
イスラム教徒は自殺しない?
イスラム教徒の実像は好戦的ではなかった。
張り巡らされる癒しの知恵は、助け合いから性にまでおよぶ。
我々はイスラムを、ふだん異質の文化、宗教としてしか認識していないかもしれないが、既存の価値観が崩壊しつつある今、実は彼らから学ぶべき事は多い。
日本ではまったく伝えられていない、平安と癒しをもたらすムスリムのメンタリティーを学ぶと同時に、日本人の心の処方箋ともなる一冊。
[ 目次 ]
はじめに(自殺の大国)
第1章 信じることによる癒し(イスラムにおける自殺の禁止;すべてを神にゆだねる ほか)
第2章 行いによる癒し(信じるだけではイスラムの信仰は成立しない;イスラムは喫煙を禁止するか? ほか)
第3章 ひとりでいるのは悪いこと(「助けて!」と叫べる社会;個の確立が求められる日本 ほか)
終章 世俗主義の国家という不幸(イスラムの発想に学ぶ;科学と宗教 ほか)
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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ムスリムの文化について述べられていることで驚いた点は以下である。
今後のムスリムとの付き合い方に生かせそうだ。
・お店でムスリムがお茶を出してきたら、買い物をしてお返しをすると、ムスリムは悲しく思う
・ひとりでいることは悪いこと
・何でも分け与える文化
外相と急遽面会できたというエピソードには胸が温かくなった。
日本人は人生に安らぎを見出せず、生き物やキャラクターに癒しを求めるという作者の指摘に、とてつもない衝撃を受けた。
私には愛猫がいるが、心の支えになっている。
愛猫=宗教のようなもの、というわけではないが、特定の宗教を信じている人々はこんな気持ちなのだろうか・・・
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日本人が疎いイスラムについて、精神面の観点から解説した本。
日本のような自己責任が問われ、常に努力や競争を強いられる社会とは真逆で、「ま、そういうこともある」「なるようになる」というケセラセラ的な価値観を共有しているイスラム社会。捉え方次第では若干無責任にも感じられるかもしれないが、著者が言うように、これがある種のセーフティネットになっていると思う。
責任を追求し改善していく努力は、社会を劇的に発展させるというメリットももちろんあるし、日本が繁栄したのもそのお陰だと思う。しかし、自分を追い詰めるやり方で、精神的に疲弊している人が多いのも、自殺率が高いこともまた事実である。日本人が常に何かに癒しを求めているという指摘も納得。
精神的な余裕がない我々にとって、心にゆとりと平安を持つイスラム的な考えから学ぶことは多いと感じた。
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そういえばイスラムについて何も知らないなと思って手に取った。やはりここに書いてあることは知らないことばかりで、とても興味深いと同時に自分の無知を恥じた。イスラムに対する自分のイメージが、いかにメディアによって作られた偏見に基づいているかを思い知らされる一冊。これを読んだ後はイスラムの人に対する見方がガラッと変わる。