紙の本
引き裂かれる二人
2011/03/28 21:05
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
イスラ艦隊を圧倒した空族に対し、ニナ・ヴィエントことクレア・クルスが風呼びの力を取り戻し一矢報いた結果、空族は停戦の条件として風呼びの少女の引渡しを求めてきた。イスラの4人議会の全権委任を受け、外務長のアメリアは空族との交渉に臨む。
一方、イスラ生き残りの生け贄としてクレアが差し出されるかもしれないことに納得が行かないカルエル・アルバスやアリエルは、寮生たちと共にクレア救出の策を練る。しかし、管区長の警備状況は以前より厳しくなっており、彼女と会うことすらままならない。
そして交渉はまとまり、空族の重要人物と引き換えに、クレアは空の一族の中心地、アレクサンドラに囚われの身となることとなる。その代償として、イスラ艦隊とレヴァーム艦隊は世界の果ての事実を知ることとなるのだが、納得できないカルエルは、カール・ラ・イールの名を利用して、クレアを取り戻す策を練るのだった。
とある飛空士への恋歌の完結編。長い空の探索航の結末、生き残った生徒たちのその後、亡くなった生徒たちの思い、カルエル、アリエル、クレアたちの物語のその後が描かれる。
今回は砲門を背景にした外交戦が前半のメイン、そして後半は最後のクライマックスに向けての物語となっている。ストーリーは完結したのだけれど、番外編として、この物語世界の秘密にまつわるエピソードなどを描く外伝があっても面白いなあ、と個人的には思う。でもそういうSFチックな物語はあんまり売れないんだろうなあ。
紙の本
抒情的かつ壮大なスケールがまさにスカイ・オペラなクライマックス
2011/01/19 21:16
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投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
どの作品でも完結すれば「終わっちゃった……」となるものだが、今回の余韻は最高級に清々しく、そして切なくて悩ましい。物語としては見事の一言に尽きるが、最後の行方をあともう少し読ませて!と願わせる引き際の良さに心地良い憎たらしさをも感じた。夢と希望とロマン溢れる恋歌の終幕である。
【一章 約束】
前巻からの懸案事項の顛末。アメリア外務長の冷静沈着な策士振りが発揮される空族との交渉をシリーズ最後の“戦い”に位置付けたところに妙味あり。この結果、後に思わぬ助言が予言となる人物の登場を見るが、立ち入る術のない己の無力に肩を落とすカルエルでもある。しかし、最後の最後でお互いの真の想いを重ね合い、新たな目標を見据えたカルエルと、恋する乙女が最大級の忍耐力を発揮できる言葉を貰ったクレアの一時のクライマックスと言えよう。
【二章 空の果て】
『空の果て』に物理的な設定を盛り込んだファンタジー展開には好みが分かれるかもしれないが、「還る場所」でもあるという輪廻転生的な位置付けに希望を見出すメッセージを感じた。何かの終わりは新たな始まりであり、人もまたそれぞれの帰還と次への旅立ちを思い描かせる迫力があった。カルエルを憎悪を取り払い、新たな希望を育んだ“大地”イスラのクライマックスである。
【終章 イスラの帰る場所】
『島流し』が4年もの歳月を経て『凱旋』へと変わる劇的な旅の終焉。カルエルの真の想いが実にこっ恥ずかしくも「よくやった」と喝采の盛り上がりで披露され、「最後の大仕事」へと繋がっていく。大きく変わりながら何も変わらないアルバス家の人々も久し振りに登場して弾けている。新たな希望を携えた別れと1つの切ない恋の終わりを挿んで旅立つカルエルに去来する風の便りが明るい未来を展望させる『恋歌』のクライマックスである。
『追憶』のような別れの悲しみではなく、心温かい人々の成長に涙し、希望を持って生きる尊さに感銘を受ける素晴らしい内容である。独り善がりな憎悪から脱した後は周りへの感謝を繰り返したカルエルだが、その「最後の大仕事」が皮肉にも壮大な独り善がりに見えてくるのはご愛敬として、この真摯な想いと行動を貫こうとする人生最大のロマンチックにエールを贈りたい。
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緊迫する外交交渉。カルエルの成長とアリエルの秘めた想い。期待を裏切らない感動のエンディングでした。
外伝として、ナナコ・ハナサキ『空の果てのイスラ』、出ないかなぁ。
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3巻や4巻に見られる派手な戦闘シーンはないものの、終盤の演説シーンなど見所は多く非常に楽しめた。
最後の終り方ははっきりしたものは提示されず賛否両論あるかもしれないが、読者に想像させる隙間を作ったのは読後にいろいろと考える事が出来て自分にはよかった。
楽しみにしていたシリーズが終った時の虚無感というか消失感が半端ないのは、それだけ自分がこのシリーズを楽しんで読んでいたんだと実感する。
今後この’とある飛空士’シリーズが続くのか、はたまた違うシリーズが始まるのかは現時点では分からないが、この作者の次回作には大いに期待したい。
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シリーズ通して名作でした。犬村先生の次回作に期待しております。
「こういう演出を絵にすると綺麗だろうなぁ」ってのを文章で書くのがうまい作家だと思いました。
「とある飛空士への追憶」での最終章を思わせる描写の美しさが、キラキラ光る。
空戦はないです。そういうのは4巻がピーク。本巻はほぼ後日談のようなもの。
1冊まるごとグッドエンド?
ただ…、
「とある飛空士への恋歌」を歌う人間が、幸せを約束されたヒロインとは限らない。
最初のカラーピンナップ挿絵で、すでにヒロインの顔じゃなくなって、哀しそうなアリエルが印象深い。
「追憶」はファナ様の話だった。「恋歌」は…、
クレアは今回、一貫して
分厚い壁の向こうにいるお姫様として描かれている。
それだけに一度きりの邂逅シーンがマジで…。
アリーは整備士の娘で、アリーは身分違いの義妹で、アリーは怪我をして飛空士になれなくなって…
アリーは本当に強い子。アリーはいいこ。
アリー…。
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読み終わったあと、登場人物に対する様々な思いが去来した。
そうさせてくれるのは、まず既刊で積み重ねてきた過程があればこそだし、この一冊の中でも徐々に成長していく少年たちを見ていたからだろう。
本作の結末は読んだだけでははっきりとはわからない。だが、少年たちが進んだ道は確かにはっきりと見えた。だからこそ、彼らの未来を想像できる“物語”としての価値を本作は生み出しているのではないだろうか。
1巻を読んだ時にも想像もつかなかった読後感を与えてくれた本作に感謝したい。
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イスラとの休戦交渉の座に就いた空の一族の要求は、風呼びの少女ニナ・ヴィエントの身柄だった。
イグナシオの取りなしにより機会を得たカルエルは、出立の日、想いの丈を彼女にぶつける。
「このまま逃げよう、クレア。ふたりで。空の果てまで――」かつての力を取り戻し、愛すべき人を救った風呼びの少女。革命によりすべてを失い、追放劇の果てにかけがえのない生を得た元皇子。
ふたりの選ぶ道、未来は……!?
王道のストーリー展開。
「歌えない恋の歌もある」という文章とイラストから予想されるとおり(以下略)。
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シリーズ最終巻。『追憶』とは異なり5巻に及ぶ長編ということで、シリーズを通じた見どころとしては主人公カルエル・アルバスの成長にあるかと思う。1~5巻(4巻は無いけど)の表紙に描かれた彼の容貌を見るだけでも、その変化はありありと見てとれる。
クレアが空族の下に去ってからは物語の時間経過に比べてページ数が非常に少なく、その間にカルエルが抱えていた感情は多くは語られていないが、一人で空族に挑もうと飛び出したことがあったと後日談で語られている。それほどまでに熱した感情を常に自分の胸に抱きながら長い年月を送っていたことを考えると、彼を突き動かしたものの巨大さ、それを抱き続けた彼の強さに心を打たれる。
途中で読むの止めなくて本当に良かった。その後分かりきったような結末をダラダラと続けずにしっかりと完結してくれた点からは、ガガガ文庫の他の小説も読んでみたいと思わせてくれる一冊だったと思う。
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なんだか、肝心な部分が欠落してしまっている印象。
キャラクター中心、物語中心、設定中心とも軸が定まってない。
一応五巻あるのにそれじゃダメでしょう。
カルの苦渋と、
クレアのよかった探しと、
アリエルの小さな幸せ描写がもっとあるなら、
もっと長くてもよいのに。
あとこういうタイトルなんだから、もっとメカの描写希望。
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綺麗に締まった。 空戦の描写で盛り上がっていた全巻までとはちょっと違って、個々人の思いに焦点が当たっていたと思う。
泣けた(つー`)
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シリーズ最終巻。
カルエルの成長物語だったように思う。
クレアとアリエルの二人の対称性に考えるものがある。
「歌えない恋の歌もある」このセリフが物語っている。
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一気に読んでしまった。普段はこういう終わり方の話は好きではないけど、この話はこれで良かったと思う。
シリーズを通じて、読んで良かった。
これで心置きなくレヴィアタンの恋人の続編を書いて欲しい。
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少年のほのかな願いが、世界を巻き込んだ「革命」へと変わる瞬間。なにかすごいものを目撃したような気になります。
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完結編。
個人的には最後まで書いてあってほしかったけど、余韻が残るこういう終わり方も嫌いではないです。
最後の方は結構泣けたなぁ・・・。
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キャラクターの掛け合い、成長に笑い、涙する。
もっとあのキャラを!というのは後から振り返れば思う部分もあるが、全体として話が綺麗にまとまっているので、こういう作品で良いのだと思う。
世界が優しくなればいいなと思わせる作品。ホロリきます。
改めて前作「とある飛空士への追憶」を読みなおしてみよう!^^