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紙の本
「その苦しみを共に感じること」
2011/07/25 19:40
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
厚生労働省は2011年7月、これまで「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできた、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とする方針を決めた。 そうしたニュースが流れる中、近年の精神疾患の症例報告として本書を読んだ。という理由もあるが、当事者としてはタイトルに「ガツン」とやられて、読んでみることにした。
本書では、「アルコール依存症」「統合失調症」「摂食障害」「広汎性発達障害」「痴呆(認知症)」「うつ病」「強迫神経症」など、多くの症例を紹介している。著者の岩波明氏は、都立松沢病院をはじめとし臨床経験の豊富な精神科医である。
本書評では、とくに第8章の「うつ病の不都合な真実」を中心に述べてみたい。2007年の「元総理・安倍晋三」の突然の辞任に伴う、ジャーナリズムの報道の在り方、例えば「無責任だ」「逃亡した」「国の最高指導者として考えられない」「政権を放り出した」などの批判に対して、「一国の首相といえども、普通の一人の人間であり、重い病気にかかることは起こりうる。しかし、通常われわれはそういった点を忘却している」(p.224)と著者は言う。
そして、「トップリーダー」がおおきな健康問題を抱えることは少なくないようだ。現実問題として政治的空白が生まれてしまうという状況を放置するわけにはいかないとし、第三者による心身の健康についてのチェックが必要だと言う。そして、当時の安倍氏の精神状態について「不都合な真実」であり(著者は安倍氏がうつ病だったのではないかと見ている)、うやむやな病名でごまかしているのではないかとしている。
また雅子皇太子妃についても、ほぼうつ病ではないか、と診る。「もし雅子妃が自らうつ病であることをカミングアウトすれば、この病に苦しむ多くの人々の励ましになるであろう」(p.226)との見解を示している。
「うつ病は、今やだれでも罹患する可能性がある疾患になった」(p.266)とし、「うつ病は『心のかぜ』と言われることも多く、ごく軽症の疾患であるようにとらえられることも少なくない」(p.237)。だが、うつ病は時には死を近くに招き寄せる恐ろしい病であることをわれわれは理解する必要がある(p.237)。
「最近うつ病患者が、病気から回復した後においても、人生や将来に対して希望や興味を持てなくなっていると訴えることが多い」と著者は指摘する。これは、日本社会が、途中で社会から外れた人々にとって、とても生きづらく、厳しい社会であり、再度、チャレンジできる社会ではない、ということを示している。日本社会については、次のように考察する。「相互監視のシステムはより強力になり、些細な瑕疵(かし)に対する執拗なバッシングがジャーナリズムと一般国民によって繰り返されることによって、それは社会の自由度をさらに狭め個人はますます委縮してしまう」(p.250)。同じ章で引用されている言葉を孫引きすると、「世間の冷ややかな視線に耐え、厳しい労働環境や苦しい現実を訴えることすらもあきらめている」(『ワーキングプア 日本を蝕む病』NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編、ポプラ社)。この8章は、「うつ病」を扱いながらも、岩波氏の日本論、日本社会論ともなっており、一読に値する。
最後に、文庫版のあとがきで、著者は、「病気や震災という不条理」について「病気は人を選ばない」。どんな善良な人にも突然襲いかかる。精神疾患に罹患し、心に狂いが生じることも、どんな人にもありうることだ。その時必要なのは、「彼らの気持ちに寄り添い、心を開いてその苦しみを共に感じること」(p.293)だと言う。
「いまや精神疾患は『ありふれた病』になっていることをわれわれはもっと認識すべきである」(pp.282-3)と著者は言う。そうした中で、苦しむものを理解しようとし、ともに共感しようと寄り添うこと。ただそれだけで、精神疾患を持つ当事者にとっては、心強いのだ。当事者の僕もそう思った。
紙の本
病気を見る目
2013/07/11 09:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:パパゲーナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
患者を見る目が温かいです。
紙の本
この本を読んで
2018/05/09 20:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kiyo - この投稿者のレビュー一覧を見る
私がいちばん心惹かれたのは
うつ病について書かれたページです。
そうして現代日本において
なぜこんなにも自死が多いのか
人々が自死に至るメカニズムについても
うつ病と絡めて
わかりやすく記されています。
身をもってわかっていたはずなのに
筆者の言葉で改めて学んで
「そうだよ岩波先生!」
と叫びたくなりました。