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投稿者:tix - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作「座布団」では要が初助から芸の道を学んでいく様子が描かれているのに対し、
今作では初助の真の恋に焦点を当てており、よりBLっぽさを感じました。
前作の初助の冷淡ビッチぶりからは予想しづらい健気受けっぷりで、
収録作品中、添い遂げ話の【夫婦茶碗】では号泣してしまいました。
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長らく絶版だったものが単行本として復刊されて大変嬉しい。本作主人公の初助師匠は私にとって最強最愛の受けです。これはBLの枠を超えた名作だと思う。ひとつ残念なのが文庫版にはあった山田ユギさんの挿絵がない事。
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弟子の要でさえも知らなかった噺家・三九亭初助の知られざる過去。そして、たったひとりの、愛したひと――
内容は「子別れ」は普通に寒也と要の話、という感じでしたが表題作の「花扇」から初助主役の話に。あんなにつんと澄ましてたくさんの男と関係を持ちながらも孤高を貫いてきたと思われた初助の愛の物語。
その人の最期まで暮らした日々を描いたのが最後の「夫婦茶碗」ですがこの何とも言えない、あらがえない淋しさと切なさ、でも確かに感じる暖かさと愛が胸にじん…ときたなあ。たぶん二人とも年老いてるからかしら。涙腺弱かったら泣いてただろうななどと。後編の二作は書き下ろしなのかなー? マクラの内容が実に最近なものだったので。
辛口なこと言わせてもらうと結局は外見の好みかよ、と思わなくもないが。まあ銀さんは確かにかっこよかった、BLに攻めとか受けとか超越したものを見た……ような気がする。専門じゃないのでよくわかりませんね。もっと落語家シリーズ続いて欲しかったなと思います。
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「昭和元禄落語心中」はこういう展開になるべき。銀さんの顔が山田ユギさんの絵で描かれてない?
それはさておき、いい話。ジーンとしました。しみる…ね(「演歌の花道」のナレーション風に)。
「座布団」と並び今年の個人的上半期ベスト3は「三匹のおっさん」とこの本です。
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何の未練もなく男を使い捨てた師匠・山九亭初助。落語の道一筋に孤独な生涯を送ったかに見えたその裏には、真を貫いた驚きの愛情物語が。
視点が師匠に移って、昭和色が強くなりました。こういった皆が傷を抱えて生きていた時代って、なんだか胸にきます。
いろいろ超越していそうな師匠も、にんげんだったのだなあとしみじみ。
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うーむ。三九亭感謝(要)を通して見た師匠・初助の物語であったのか。かといって要の方も疎かになっていない、かえって奥行きが出ている巧妙さ。笑いの芸の底に敷いてある痛いほどの切なさ。参りました。ハイヤー運転手の太田さんも何気にいい味出してました。
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芸のためなら男だろうが何だろうがどんどん踏み台にして、どれほどの愛憎にまみれようと芸の道を貫く初助師匠の生き様の揺るぎなさ、凄まじさにもうため息しかでない。そんな初助師匠が生涯誠を尽くしたただひとりの男寺田。寺田の最期の時をままごとの夫婦みたいに寄り添って暮らしたささやかな時間。
一生の相方を得て仲むつまじく暮らしている愛弟子要とは対照的で、初助の孤独がより一層浮き立ってたまらない気持ちになる。それを不幸だとかつらいとか断じるのはおこがましい気がした。
自分はさみしくて不幸だなどと無粋なことを初助はただの一度も考えたことはないのだろう。芸の道に信を貫くその姿に、読後はらはらと涙が止まらなかった。名作です。
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座布団に続き、満を持しての初助編、花扇です。
前作と続けて読んで分かったのですが、これは要を通して
語られる初助師匠の一代記だったんですね。
初助の評伝を作りたい、と記者一色が要に接触したことから、
過去と現在を行き来しながら初助師匠の生きた軌跡を辿ります。
謎に多く包まれた初助の人生の中で、男を食い散らかしてきた
だけかと思いきや、とんでもない真の恋がそこにあったわけです。
寒也と要が陽だとすれば、銀さんと初助は陰。
正反対の番ではありますが、初助が決して長くはなかった生涯で
唯一、真の恋を貫いた相手が本当に【粋】な人でした。
物語は淡々と進み、ジェットコースターのように起伏が
あるわけでもなく、ドラマチックな展開が繰り広げられる
わけでもなく、ただ一人の人間の日常を、あたりまえのように
積み重ねていくお話でした。
18年という長い年月の中に、初助が愛しい人とふれあった
時間は、つかず離れずの5年間と、晩年のたった半年の間です。
その間の中に、確かな愛というものがあって、初助の生い立ち
からくる寂しさや悲しさ、そして確かに幸せがそこにあったの
だと感じられるものが詰まっていました。
膝の上にある頭の重みが忘れられない、というところで
涙腺がついに崩壊。
そこに至るまでに、何度も鼻を啜りながら読んでいましたが、
この瞬間ばかりはもう、哀しくて、せつなくて、寂しくて……。
今のBL業界では、絶対にタブーなネタではありますが、
一昔前のBLはこういった話でも書かせてもらえたてたんだなぁ、
と感慨深いものがあります。
そしてタブーなネタでありながらも、こんなに読後に
あたたかいものが胸に満ちるというのは、作品が間違いなく
名著である証だと思いました。
私の拙い表現では、とてもこの作品のすばらしさを
伝えることがでないので、とりあえず何でも良いから
読んでみて、と勧めたいです。
ドナドナなんてとんでもない、永久保存版決定。
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これは、確かに同性愛がでてはくるんだけど「BL」って括りにおさまらないお話なんじゃないかなぁ。人間の愛憎、芸で身を立てていくために生きていくために、身をはって命を懸けて行く様……なんかもう、ただ圧倒された。
時代もツボ。戦中生まれで戦後の混乱や高度成長期に、落語自体が栄え、そして衰退しつついこうとする時代まで。
初助師匠の激動の生涯と、愛した相手がいたこと、穏やかに過ごせる時があったことが本当に救い。
実在する人のように感じてしまう……。
あと、あの時代の人の(例えばサザエさんの時代にも感じるんだけど)「粋」にすごい憧れる。
さくら餅から柏餅へ店先の売り物変わったのを「馬から鶏か」なんて、言えないもの!はぁ、粋……。
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言葉では言い尽くせないほど素晴らしいお話でした。
巻通して初助師匠のお話で、特に「花扇」と「夫婦茶碗」の章は何度も泣きそうになりました。
初助と寺田のエピソードが大好きです。
艶があって魔性の初助が、寺田を前にすると一途で健気になるのが本当にたまらない。
何度も読み返したい、大好きな一冊になりました。
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「座布団」が図書館に無かったので、落語家シリーズ続編のこちらのみ。
おそらく、「座布団」で主人公であった、三九亭感謝。彼の師匠初助の隠されていた生涯。
華やか芸人だった母親は刺し殺され、父親は定かでない。落語家の叔父に引き取られ、その美貌と話術で早々と真打も手中。噺家に生きる金の為なら、多少、耐え難い事もやりましょう。
弟子から見た初助は、男を使い捨てる独り身を自由に生きる芸の人。
独り身を続けていたのは、一人の男への想い。
長い刑期を終えた男との最期の時期を知りながらのふたりの佇まい。
もう、表現の自由。
時折、入る洒落や小話も雰囲気がある。
この作品も良いんだけど、雲田はるこ「昭和元禄落語心中」をすごく読みたくなった。