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巷では、「新興諸国の人口や経済が成長がするので、近い将来には、食糧や資源が足りなくなる」というのが定説のようになっていますが、実際はそうではない(マルサスの主張は適用されない)、ということ(p127)がこの本では、実際のデータをもとに解説されています。
特に、食糧の増産についても、ブラジルを始め、旧ソ連地域でも食糧増産の可能性がある(p136)ことを知って、認識を新たにしました。ただ、日本の将来の資源について、原子力の復元を強調して、メタンハイドレードに関する記述がなかったのが、残念でした。
以下は気になったポイントです。
・現在、資源・食糧などの一次産品価格が上昇しているのは、1980年代半ばから21世紀初頭まで、20年近く続いた低価格の修正である(前書き、p4)
・素材、燃料などの需要の伸びは、最終製品の伸びよりも相対的に低い(p6,図1-1)
・地球上では約10億台の自動車と、約2億台の二輪車が走っている(p7)
・中国の人口は2010年末の時点で、13.4億人で世界人口(69)の19.4%だが、資源消費においては中国の存在感は人口比とかけ離れたものが少なくない、石油:10%,穀物:18.7%, 石炭:7.8%(p9,表1-1)
・インドの耕地面積は1.58億haで、中国の1.5倍もある一方で、インドの単収は中国の45%しかない(p13)
・バイオエタノール、バイオディーゼル油を合わせたバイオ燃料は、すでに石油の2.5%に相当している、ノルウェーレベルに相当(p15)
・米国、EUともに穀物や油糧種子(菜種、ひまわり等)は大幅な余剰であり、70年代から補助金をつけて、アフリカや途上国に輸出して処分していた(p20)
・米欧で余剰農産物の処理を目的として、バイオ燃料の生産が拡大したのは、同時に、生産工場や物流で新たな雇用を生み出している(p22)
・米国のエタノール生産が内需にとどまっているのに対して、ブラジルは輸出しているのが特徴(p24)
・世界は、内燃機関の車を維持しつつ電気自動車を導入する、米・EUと、電気自動車の拡大にかける中国、その中間的な日本の陣営に分かれるかもしれない(p30)
・石油価格の決定権がメジャーから産油国側に移るきっかけが、1970年にガダフィ大佐が米オキシデンタル石油に突き付けた要求(利権料と税金の引上げ)であった(p41)
・石油需要が最も増えたのは、1966-70の5年間(日量1461万バレル)であり、2001-05は、709万バレル(直近5年間は100万バレル)である(p46)
・超超臨界圧(USC)発電のエネルギー変換効率は43%,現在開発中の改良USCは48%を目指している、石炭火力発電が世界で広がる可能性が高い(p52)
・IGCCで排出するCO2を回収、固定、貯蔵するCCSと組み合わせて、ゼロエミッションも構想にある(p53)
・エネルギーの視点で見れば、現在は、石油・石炭・天然ガスが鼎立する三国志時代(p66)
・2010年3月末時点で、コジェネ設備導入件数は、8444件で943万KW、これは北海道電力等を上回る規模(p75)
・米国EPAが2010年11月に発表した電気自動車の燃費��は、日産「リーフ」が、ガソリン換算で42km/lとなった(p81)
・電動バイクならば、ガソリンバイク比較で、10分の1のコスト、さらに家庭電源で充電可能(p82)
・トヨタ自動車の将来の自動車の主軸として、電気自動車ではなく、燃料電池車を位置づけている、それまでは、ハイブリッド→プラグインである(p91)
・マルサスの主張(人口は等比、食糧は等差)は20世半ば以降は成り立っていない(p127,図5-1)
・食肉の中では、鶏肉の比率が着実に増えている、世界的に飼料による発育の高い、低コストの鶏肉に需要がシフト(p132)
・BPの海底油田事故は、掘削作業の大幅な遅れでリグの賃貸料が予算を大幅に上回ったために、安全対策を省略したため(p182)
・太平洋戦争開始当時、米国は日本原油輸入の80%、オランダ植民地のインドネシアが15%、樺太が3%(p196)
・日本の原発稼働率が低いのは、定期点検の間隔が13か月、点検期間も30日以上(p206)
・自然エネルギーの規模として、水力:5億、潮汐:7億、地熱:77億、風波:880億、太陽光:42兆キロカロリー(p226)
2012年1月7日作成