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紙の本

満開の時を夢みて

2012/03/10 06:02

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今年は例年になく厳しい寒さでした。三月も中旬になると桜の開花情報がちらほらと聞こえてくるものですが、どうも今年は遅いらしい。
 まだ固い蕾のなかでゆっくりと目を覚まし始めている木々たち。満開の瞬間(とき)を夢見ている時間でしょうね。
 「百年文庫」72巻めの表題は、「蕾」。未熟な若者たちの、それは子供の場合もありますが、心もようが描かれた作品3篇、小川国夫の『心臓』、龍胆寺雄の『蟹』、プルーストの『乙女の告白』、が収められています。

 龍胆寺雄は戦前から戦後にかけて活躍した作家です。本巻に収録されている『蟹』は1929年に発表された作品で、15歳の少年の心象風景を描いたもの。
 読んでいて気になったのが、第144回直木賞を受賞した道尾秀介の『月と蟹』。時代設定も状況設定もちがうのですが、少年が孤独を癒すために蟹の世話をすること、主人公の少年に同年代の少女が関係することなどよく似ています。
 龍胆寺雄の場合、貧しい少年と裕福な一つ年かさの少女の関係は初恋のひそやかな想いが重なっていきます。子供だからこその孤独との特有の対峙の仕方があるのでしょう。
 二つの作品は100年近い時を経て交わったような気がします。

 小川国夫の『心臓』はそっけもない題名がついていますが、逆にその即物的な印象が二人の異性の間で揺れる主人公の青年の心のうちを表現しています。
 ストレートに言葉を使うというのは若い作家たちがよく使う手法だ。おそらく曖昧なものでは伝わらない、そういう心象を描きたいという想いだろう。
 『失われた時を求めて』の作家として有名なプルーストの『乙女の告白』は、純潔がもっとも清らかなものと信じられていた時代の、そしてそれを越えようとする少女の物語です。
 従前のしきたりを踏襲しようとする母、母の時代の慣習や思いを越えようとする娘。それは異性との接触において顕著だったといえます。古風な文体で、現代の人には理解し難い話ながら、まるで映画のワンシーンをみているようなラストが印象的な作品です。

 蕾の中にある力は自分を守ってきた殻を突き破ろうとするものです。それもまた満開の時を夢見る力のひとつだといえるのではないでしょうか。

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