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最近永田和宏づいている。
はずかしながら、最初にこの夫妻のことを知ったのはつい最近で、新潮の「波」だったはず。そこで書かれていたエッセイと短歌が素晴らしく、永田氏の著作を読みたくなって、目についたものをどんどん手に取っているといった次第。
河野裕子氏やご家族とのエピソードなどをまとめた章、主に日経に掲載されたエッセイをまとめた章、科学者としての立場から書かれた章の三つに分かれており、書かれた時期や場面がいろいろなエッセイをまとめて作られているので、他の著作で既に読んだエピソードとダブるものもままあるのだが。
これが歌人のなせる技というべきなのか、非常に文章がうまい。どれもごく短いエッセイばかりなのだが、その短い中でこれと押さえる言葉選びが見事で、すっかりはまってしまった。
河野氏との仲睦まじいエピソード、奥様の余命わずかにしてご夫婦で詠んだ歌など、お二人の深い愛情を強く感じる。
「時間に錘をつける」短歌って、いいなあ。
きっとまた永田氏の著作は読むだろうなあ。
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生物学者の歌人による初のエッセイ集。自称「物理の落ちこぼれ」で、二十九歳で無給の研究員になり、科学と文学の生活の両立に苦しんだことや、歌の同志でもあった妻・河野裕子との日常などが綴られる。
タイトルは、「一日が過ぎれば一日減ってゆく君との時間 もうすぐ夏至だ」の歌より。河野に乳癌の転移が見つかり、日が短くなる一方の夏至の哀しさを想った。平明な言葉が温かい。
(「週刊朝日」 2011/06/24)
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スコットランドへ持って行った3冊のうちの1冊。生命科学の研究者で歌人の著者の初めてのエッセイ集。新聞連載からの転載が多いので、全体としては読み易くいくぶん教訓的な手触りがあるけれど、著者の妻であり昨年の夏に亡くなった歴史的歌人、河野裕子との日々をつづった第1章は、やはり胸を打つ。「生きてゆくとことんまでを生き抜いてそれから先は君に任せる(河野裕子)手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が(河野裕子)たつたひとり君だけが抜けし秋の日のコスモスに射すこの世の光(永田和宏)」。河野さんのことは河野さんの本を読んだときに触れることにするけれど、それにしても、短詩型の詩人には、有馬朗人、岡井隆、永田和宏など、第一線で活躍する理系の研究者が多く、なんだか計り知れない頭脳の持ち主もいるものだといつも思う。
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永田和宏『もうすぐ夏至だ』読了。
亡き妻、河野裕子さんにふれる筆は微かに揺れるが、科学と短歌、二つながら懸命に向き合ってきた誠実な人柄が、抑えた筆致から伝わってくる。
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細胞学者にして歌人でもある著者によるエッセイ集。意外なことに初のエッセイ集とのことだが、大事な人との別れを綴った心情の描写などは心にぐっとくるものがある。
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「"知ることは感じることの半分も重要ではない"といったのは、『沈黙の春』のレイチェルカーソンだったと思うが、私がいつも思うのは、知識を説明することに較べて、感じたことを表現することはとてもむずかしいということだ。」
その通りだと思う。卒業旅行として国内海外の素晴らしい建物や景色に出会った時、どんなにガイド本を読み込もうと、一瞬で感じた想いをアウトプットするのは大変難しい。その感動を表現できる同等の語彙力があったらいいのになぁと何度思ったことか。
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タイトルに惹かれて手にした。「もうすぐ夏至だ」や「後の日々」では永田、河野夫婦につがいのひとつの在り様を教えてもらった。父親、母親になってもずっと恋人同士として互いを見ていたんじゃないのかな?そしてそれに適うだけ二人はお互いを引き付ける何かを持っていたんだと思う。いくつになってもそんな関係でいたいから結婚するけど、何十年も一緒にいるとなかなか難しいことなんだとオイラにもわかった。伴侶を失ったときに永田先生みたいに感じるとは限らない。伴侶が介護を経て亡くなったとしたら、オイラはほっとしちゃうかもしれない。痴呆でも生きていれくれればいい、っていまのオイラは言えないな。残念なオイラだ。
「時間という錘」で研究者と歌人の二足のわらじについて触れているが、なんか勇気をもらった気がする。せっかく始めたボランティアだけど、仕事を理由にその役割にもう一歩踏み込むことにブレーキをかけてしまうところだった。やりたくて始めたこと、まわりに迷惑をかけるのはダメだけどそうでなければやってみればいいんだよね。仕事だってそうだよね。言われたことばかりするよりも、自分でよかれと思ったことを自発的にした方が楽しいに決まってる。
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妻の女性誌で初めて永田先生を知った。生物学の京大教授にして歌人という二刀流に興味を持ち本を読んだ。タイトルもすごく魅力的だし、内容も家族、仕事、歌など、非常にしまった文章で書かれていてすごく良かった。