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第二次世界大戦の戦争犯罪裁判といえば、ほとんどの日本人が東京裁判をイメージするかもしれない。実は僕自身がそう・・・というより、日本以外の連合国で 戦争犯罪裁判が行われていたことを、知らなかった。
本書は、1951年 昭和26年6月11日 マヌス島にて 第二次世界大戦の最後の戦争犯罪裁判 死刑囚となった西村琢磨中将の克明な記録である。
そして、その裁判は、前年の6月19日の裁判開始、数日後の6月22日の死刑判決から見ても無謀であり、その論拠に西村中将に戦争裁判を受けさせる理由は見受けられない。セカンド・タイガーと呼ばれた西村中将は、如何に自らに非がない事はおくびにも出さずに、部下に責任を負わせず一人静かに逝った。
西村中将の歌に
責めに生き責めに死するは長たらむ 人の途なり憾やはする
↓
組織の責任者である自分は、
たとえ部下たちが犯した罪であれ
責めを負うのは人間として当然である
何ら恨むところはない
※本書P23-24
というものがある。
この歌に、己を省みないリーダーは少なくはないでしょう。
そして、子どもたちへの遺言は
1 復讐心を抱くな
2 自棄になるな
3 信仰をもて
の3行であった。
特に復讐心を抱くなは、本書にも書かれているように
戦争が終り、未来に向けては日本とオーストラリアが必ず仲の良い国になるようにと、西村中将は願っている。
西村中将を企業のリーダーに置換えてみたとき
ここまで責任を全うしているリーダーは、いるのであろうか。
もちろん それは自分自身にも言える事で
本書を読んで、リーダーのとるべき姿を自分自身は出来ているのであろうかと
振り返ってみてしまった。
中田整一著『最後の戦犯死刑囚』平凡社新書より。