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改訳版とのことで、しかもこれが文庫化されるとは思いもよらなかった。
文庫になると装丁が今一歩だけれど、これは久しぶりにすき。
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う〜ん。へんなおじさんのへんなお話。
しかも筆者はもう鬼籍に入られているので、これ以外にあと2冊くらいしか残されていないらしい。
まるで、この筆者自体が虚構みたいな。
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〈ロコス亭〉に集う人々とその奇妙な体験を纏めたという体の連作短篇集。
存在感のなさすぎる男や、葬儀愛好者の女など個々の短篇の奇妙な味わいに加え、何度も役割を変えて登場したり、”作者”の思惑を超えて勝手に動き出すキャラクターたちに幻惑されっぱなし。物語間の繋がりを追いかけるとさらに泥沼に……w。
お気に入りは「チネラートの人生」かな。
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「スペイン」という国の在り方が緻密に、細密に描かれた本。
しかし、其れ以上に「物語の在り方」を形にしたような本。
現実もまた、小説世界と同じ様に、
不明確な、不確定な、けれども一種予定調和的な物語のはず。
そこを疑ってかかるべきではないか、と考えさせられた。
現実の現実感を疑わされた。
そうした側面を持った、危険な小説。
『犬の物語』中の「僕」のように、
も意志と無関係に体が動く感触を感じた事がありませんか?
あなたも誰かに動かされているんじゃないですか?
あなたの現実が「本当の現実」である事を、あなたは証明出来ますか?
『ロコス亭』の奇人たちは、小説世界を越えて、
あなたの現実を浸食しにやってくる。
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最初に抱いた印象は、「わけがわからない」。追い続けていけないほどの難解さではないんだけれど、著者が作中人物を書くという行為に不思議な現実感と非現実感を与えてる。プロローグでの著者の姿勢にも戸惑ったし、脚注のあんな使い方、初めて知りました。
でも読み進めるうちに、登場人物の生き方を追うのが面白くなってきた。
個人的には「指紋」「ネクロフィル」あたりが好きです。あと、上手く説明できないけれど「犬の物語」も好きだったなあ。雰囲気だとか、春という季節の描き方とか。
スペインについての知識がもうすこしあったらまた違ったのかなあ?と自分の無知を残念に思います。国民性や環境についてあちこちで述べられているので、それがどこまで的を射るものなのか、突っ込みどころのあるものなのか知りたかったかもしれない。
知的でユーモアのある、という点においては勿論賛成なのだけれど、★3つにとどまったのはひとえに自分の理解や思考が著者のそれに追いつかず、いや追いつかなくて良いのだとは思いつつも、深いところは気にせず思い切り楽しめるラインにも達しなかったせい、かな。考察をがっつりしたり解明したりする気は全くないけれど、知識が多少あれば雰囲気や、分かるべきところと考えずに楽しむところの区別はついたのかもー、とか。
あとがき・解説も面白かった。これはちゃんと読むべき。
きっと献本でいただかなければ一生出会わなくてもおかしくない作品だったので、この作品と著者を知ることができてラッキーだったなと思いました。
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取材前に、その近辺の本屋で購入。
読み始めてますが、面白いです!
値段を見ずにレジへ行ったら、1000円超えててビックリしましたけど(笑。
読み終わったら感想書きます。
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話や繋がりをひとつひとつ理解しながら読むことはできなかった。そうしたものを読書の楽しみとしている身としては辛いけど、プロローグで作者自身が「深く考えて読むなよ」といった意味のことを延々、念押ししてくれたおかげで、最後まで読みきることができた。
正直、よくわからなかったけれど、わかった時点で「ロコス」、狂人の仲間入りをしてしまいそうなのでわからないままでいいかな…。
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まずあおり文句が気に入らない。ラテンアメリカ文学の原点って。合衆国において英語で書かれた本書が?作者は確かにスペイン人であるが。面白くないとは言わないけれど、3回は読まないと思う。
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スペインの作家さんだそうで。
面白かったです。多分今月のイチオシ。
「ロコス亭」って酒場の常連さんの連作集で、
まあヘンな人ばかり。タイトルのごとく。
なんか頭がグラグラして目が回ります。
■アイデンティティ
存在感が薄すぎて誰にも気づいてもらえない男。
回避するために狂言自殺を図ったら、それすら人にパクられて。このオチは・・・ ^^;
■ネクロフィル
3人の夫を持った、カタプレシー持ちのドニャ・ミカエラ。タイトルから想像できる通りの内容です。陰惨・・・・
■犬の物語
「?.春」が圧巻。
−−−午前中のほうが春はよく聞こえる−−−
春に捉えられ絡め取られていくガルシーア。
衰弱した体を、白髪頭を摺り寄せてくるガルシーアに
太陽が降り注ぐ。
身じろぎもせずじっと、ひたすら耳をすましているガルシーア。
神経をやられているのは彼なのか語り手なのか、
それとも・・・・私なのか?
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スペインに生まれ、アメリカに移住した批評家が
英語で執筆した短編連作小説。
酒場《ロコス亭》に集う人々の奇妙なロンド。
キャラクターが複数の名前と役柄を
割り当てられたり、
小説内現実と小説内虚構を行き来して
相互に動機付けを行ったりする
追いかけっこの様子は、
まるでエッシャーの騙し絵「描く手」のようだ。
ただ、メアリー・マッカ―シーが
解説「跋」で指摘したとおり、
欄外の作者注=登場人物の不審な行動や
不自然なストーリー展開に対する言い訳は
不要だったのでは。
特に「チネラートの人生」における
残酷な描写に対しての弁解などは、
せっかくの目くるめく眩惑世界の魅力を
僅かではあるが削ぐ結果になっている気がする。
とはいえ、細かい仕掛けを確認すべく、
時間を置いて読み返したくなる一冊
……かもしれない。
赤の他人だろうと構わず、葬儀があれば駆け付け、
故人の知り合いを装って
その死を悼むポーズを取りながら歓喜にわななく、
死を愛好する未亡人の物語「ネクロフィル」は、
単体で短編として「死」「倒錯」といったテーマの
アンソロジーに採録されても、
しっくり来そうな面白さ。
彼女自身は時の流れが止まったような家の中で
定期的に「死の期間」を迎えては
極めて完全な死に近い仮死状態に陥り、
また蘇生することを繰り返している――
というのは月経のメタファーか(?)
あるいは、彼女はゾンビか吸血鬼か、はたまた……。
ちなみに、タイトルのロコス(locos)は
「狂気」を表すスペイン語らしい。
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20世紀、スペイン。三文文士たちが作中人物のモデル探しにやってくる居酒屋〈ロコス亭〉。存在感がなさすぎる男、金満家の物乞い、死に恋した女などのキャラクターが姿を変えながらお互いの物語を縦横無尽に行き来する。飄々としたユーモアで笑わせるメタフィクション連作短篇集。
表面上は上記あらすじのように軽く読める明るさがありながら、同時に本作の全体を覆うのは濃い死の影である。開幕の「アイデンティティ」から医者がとある人物に自殺を唆して終わるし、「ネクロフィル」は言わずもがなとして「指紋」の最後でロープを求めるもう一つの意味は…などと考えてしまう。人殺しはもちろん、停電に便乗してマドリードが犯罪大会状態になったり自分の息子をローストする男まででてくるが、露悪的な印象は希薄。それは〈作者〉の注釈によると物語で死んだのは〈作中人物〉であって「ありふれた人形にすぎない」から。つまりこれは人形遣いの顔が見え、血の流れないグラン・ギニョルなのだ。
収録作の後半に進むほど幻想味が強くなっていく。特に、スペインの宣教師に拾われたアジア人移民が清→フィリピン→ハバナを経てスペインに辿り着く貪欲で奇妙な冒険物語「チネラートの人生」が好き。レスリングチャンピオンになった巨漢が転身してサーカスで蝶々を操るという繊細な芸を披露するくだりが美しい。マドリードからバスク地方のキリスト教系学校に転校した少年の皮膚感覚と詩人の最期を描いた「犬の物語」は他の収録作より純文学寄りの構成になっており、ラスト一文の余韻が残る。
解説の風間賢二が類似作にオブライエン『スウィム・トゥ・バーズにて』を挙げているが、わかる!私が連想したのはジャック・ルーボーの『麗しのオルタンス』の語り手と、ダンセイニのジョーキンズ・シリーズの酒場の与太話感だった。ぜんぶがロコス亭で語らう語り手とホセ・デ・ロス・リオス博士の即興話にも思え、ならばメタフィクションと構えずに夢とうつつを往復するキャラクターのから騒ぎを楽しんでしまえばいい。