紙の本
色褪せない名SF
2017/02/12 12:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
人工神経制御言語ITPの開発者サマンサの人生を描いたSFです。
ITPで造られた仮想人格wanna beと、余命半年の生身のサマンサの対立。
倫理を重んじる会社と、生への渇望で倫理を踏み越えようとするサマンサの対立。
運命論を強く信じる母と、研究を重ねて運命に抗うサマンサの対立。
物語の中で常にサマンサは孤独な存在です。しかし筆者はサマンサにハッピーエンドを用意せず、容赦のない展開が訪れます。技術の進歩と共に、人類の人間性まで進化するわけではないので、この展開も必然と言えば必然なのかもしれません。
執念に憑りつかれたサマンサは最期に何を思ったのか。サマンサの心に寄り添って考えることができたなら、これは間違いなく「あなたのための物語」なんだと思います。
電子書籍
この珠玉の小説を海外にも広げて欲しい
2020/04/14 06:05
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふたつゆび - この投稿者のレビュー一覧を見る
「航路」(コニー・ウィルス)の死生観と、「ドゥームズデイ・ブック」(同)の絶望と、「幸せの理由」や「祈りの海」(グレッグ・イーガン)の科学的構築に、「BEATLESS」(長谷敏司)の人工知能と人の心の乖離と恋愛を、かき混ぜた混沌の中から大人の小説としての最良の部分をすくい上げた様な小説。
ヘビーなSF愛好者でないとわかりにくい説明かもしれないけれど、これほど完成度の高い国内SFは久しぶりで、他の表現の仕方が思いつきません。語り口も海外作品ぽくって、翻訳者を確認しそうになったほどです。
冒頭の様な比喩を書くと自分で読み考えずに「所詮、真似事」とか「オリジナリティがない」とかいう専門家(馬鹿?)がいるけど、普遍的な課題の中で何をどう掬い上げ、小説として成立させること自体が、オリジナリティです。個人的には類似テーマで最優の作品と同列視するほど優れた作品です。
村上春樹と同レベルでSF分野に限らず海外にも通用する作品だと思いますので、ぜひ海外展開をお願いします。
紙の本
感動な物語
2015/08/23 19:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やまだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
仮想人格wannabeと余命半年を切った博士サマンサの物語です。
wannabeの「何かお役に立てますか」のセリフが切なくなりこの小説の最後の文で喪失感をあじわいました。
紙の本
AIは小説を書けるのか?
2017/04/29 13:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
AIは小説を書けるのか?作者はこの疑問について徹底的に考察しています。
将来、AIがどのように現実社会に普及するかを考えるうえでも読む価値は十分にあるでしょう。もちろん、小説としても一級品の作品だと思います。
投稿元:
レビューを見る
タイトルからは、テッド・チャン傑作SF短編集である所の「あなたの人生の物語」を想起される所でありますが、中身を読んで思い出したのは「バーチャルガール」「銀色の恋人」「流れよ我が涙、と警官は言った」でした。
何かグチャグチャですかね?
自分では大体あってると思うのですが。
伊藤計劃以後、ってのは煽り過ぎかと思いましたが、この文庫版の表紙のデザインは非常に秀逸。
投稿元:
レビューを見る
重かった。ひたすらに重かった。
電脳化、人格の情報化の1歩手前くらいの未来を舞台に、ひたすらに逃れられない死について描かれた物語です。病に体を蝕まれ少しずつ死に向かっていく主人公の姿と、その怒り、いらだち、そして恐怖が赤裸々に描かれていく。
本当に容赦のない物語で、読むには相応の覚悟が必要です。
投稿元:
レビューを見る
重苦しい雰囲気の一冊。
叙述が回りくどいので(西尾維新的ではない悪い意味での)読むのが大変だった。
読了後も「何がテーマなのか?」がよくわからずもやっとした感触が残る。
絶賛されているが、僕は然程面白くはなかった。
SFではあるが、冗長すぎて。
伊藤計劃や円城塔のような面白さを期待していたのだが…。
投稿元:
レビューを見る
医療分野において発展途上であった未来SF?小説。何度も時が経っても、誰にでも死はやってくるという、逃れられない生命の終着点を一人の女性サマンサ・ウォーカーの病気発覚から死ぬ間際までを描いている。じわじわと彼女の体が灰になっていく描写は読んでいて、妙に臨場感があった。
生きることへの思いを描いた作品が多い中、死を描いた作品としては考えさせる作品としてとても面白かったなと思う。
投稿元:
レビューを見る
単に伊藤 計劃の文字が帯にあったのと表紙に惹かれて買っただけだったが、買って良かったと思える作品であった。
成功の絶頂にあったサマンサが唐突に不死の病であると告げられ、残された時間を死から逃れるために必死に抵抗する物語。
もっといかにもなSFチックな展開を予想しながら読んでいたのだが、SF要素よりもサマンサの極限状態に置かれた心理描写が主であった。読み進めていくに連れて、自分の考えていた展開とあまりにもかけ離れて行くので、先が全く読めなくなり逆におもしろかったかな?
投稿元:
レビューを見る
これは「あなた」のための物語である.ひとりの人間の死の物語.その死はただ残酷で,そこには苦痛と絶望しか存在せず,尊厳も何も無い動物的なものである.それまでの人生で得た感傷や経験も彼女の死には何も成さず,なんの救いにもならない.救いを得るとすれば,死にゆく彼女の物語を知る存在である読者であるように思う.
投稿元:
レビューを見る
とっっても重厚で容赦なく妥協なく面白かったんですが、そんな物語でこんな感想で申し訳ないんですが、えー、自分に正直に煩悩全開で語らせていただきます。wanna beに萌えました。なあにこの良質な人外素敵! 人語を解せる人外の人と異なる精神構造が私的ストライクゾーンなのでとってもヒットでした。っていうか直球で求愛宣言がくるとは思わなかったよやったね!
徹底してサマンサを物語の主軸と中心に据えているので、SFよりもヒューマンドラマの印象が強かったり。サマンサがいなくなった後の、別の誰かの物語、というのも読んでみたいな。
サマンサの最期はああだったけど、救いは人生の結末じゃなくてその途中でもたらされていた。だからそれでいいと思う。もっと楽で幸福な結末もあっただろうけど、彼女が「なりたい」のはそんな自分じゃなかったんだから。
投稿元:
レビューを見る
主人公が死ぬ瞬間の壮絶で克明な描写から始まる小説。仮想人格とのやりとり、自己を攻撃する免疫疾患、経験・感情を記述する言語。人間、さらに「自分」とそれ以外を分けるものとは何か、考えずにはいられない。
投稿元:
レビューを見る
憎しみが原動力のサマンサ、自分と似てるなあと思いながら読み進めました。ちょっと可哀想だな、もうちょい素直にならないとなわ。わたしも死に直面したらこんな感じなんだろか。
帯の煽りはちょっち大袈裟な気がする。でも、読後に表紙見て、やっとこの表紙が何を表してるのかがわかって、ドキッとしました。
投稿元:
レビューを見る
ところどころ面白かったけど、文系の私にとってSFは理論で説明する部分が滑っていってしまうのがネック。
伊藤計劃の2長編はそれもなくてのめりこめてしまったけど、今回は駄目だった…
投稿元:
レビューを見る
無機質でいて、生々しい物語。
「物語」って何なんだろう。
この物語のキーワード「平板化」の概念が270ページ位まで実体的に掴めなかった。。そこからは夢中に読み進められた(機械に泣かせられるなんて、不覚・・・!)。
一般読者が共感しづらい所まで無機的観念的に話が進んでしまったような。
この登場人物達(wanna be含む)に苛立ちを覚えるのは、あまりに彼らが人間的でいて人間の根幹を見つめているからだと思う。というかなぜかやたらイラつく^^
女性としては、1ヶ月のこの日に読んでしまったので余計リアルな話(笑)