投稿元:
レビューを見る
Amazonで売られている本の商品ランキング(順位)の変動をモデル化してみよう、というところから始まるお話。
ただし、ランキングの動きとして観察するのはベストセラーではなく、例えば10万位とか、20万位といった普段目をつけられていないマニアックな順位です。
一冊の本をつぶさに観察していくと突如として1万位くらいになるところからmove-to-front、つまり注文した瞬間に他のすべての本を飛び越して一位に躍り出るという規則性(しかも古く研究されていた規則性)に目をつけるわけです。
1冊の本の情報とmove-to-frontという推論、始まりはたったこれだけ。でも、そこから順位のモデル化をして、推論が現実と適合することを確認してみると、そこからAmazon全体の売上の構造が垣間見えてしまうというのだから不思議な話。
ランキングという一側面だけでAmazonのすべてを語れるわけではないでしょうが、着実な議論で(もしくは数学的に神経質な議論で)論旨は展開されるので、なるほどと唸らされます。
一般的な社会で言うと、人とか物とかを個別に観察するのは大変ですが、ある程度の塊で考えると規則的なパターンができる。これをシンプルにモデル化することで社会の動きを捉え、社会の利益を考える。これが統計学の世界です。
この本はAmazonで売られている本を題材としていますが、限定的な情報で大きな構造を把握するという、統計の魅力がこの本にはあると思います。
ちなみに、本書には数式がたくさん出てきていますが、式を読み飛ばしても議論をちゃんと追っかけていけば結論にたどり着きます。そもそも縦書きの本であることからも分かるように、数学アレルギーを持っている人でも大丈夫なようになっています。
数式の方がいいんだけどというマニアックな人は、本文と合わせて巻末の補遺をどうぞ。「数学的にどうなってるんだっけ?」という疑問にも抜かりない答えがなされています。
投稿元:
レビューを見る
2011年48冊目
使われている数学は私には難しく数式を理解することはできなかったが、ざっくりいうとほとんどのモデルを作って、ほとんどの売れていない本から1冊選びランキング変化を追うだけで、Amazonの売上がロングテールからの寄与が無視できないか、一部のビッグヒットで成り立っているかがわかるという話。
数学の応用力がなんとなくわかった話でもある。
投稿元:
レビューを見る
私の書いた本「レジデントのための血液透析患者マネジメント」は、なかなかAmazonに入荷せず、一瞬15冊入荷されましたが、その後、再び、在庫切れという状況が続いています。なんか、ビジネスチャンスを失っているような気もしますが、息の長い本になって欲しいので、まぁ、いいかと。
自分の本のAmazonの在庫状況を見ながら、ついつい目がいってしまうのが、Amazonランキング。入荷があったときには、3桁台まで上昇しましたが、その後、在庫切れになったら、1万-3万台あたりをふらふら。
ところで、このAmazonランキングというのはどうやって計算しているのでしょうか?Amazonランキングの更新頻度が1時間に一回だから、当然、1時間当たりの売上冊数によると考えたくなります。1時間に何冊も売れる本はそれでよいのですが、ロングテールビジネスをおこなっているAmazonにおいては、大部分の本が1時間当たりの売上冊数はゼロなはずです。1日で売れた数、1週間で売れた数、1ヶ月で売れた数に、係数をかけて、ランキングをはじき出しているのでしょうか?Amazonが取り扱う、大部分の本は、年に5冊くらいが売れるロングテール本だと言われています。そうすると、Amazonが扱う300万点もの書籍すべてに、それぞれ一意のランキングを付けるには、どういう計算方法を用いているのか?考えると、とても不思議な感じがしてきます。
ちょうど、そんなことを考えていたとき、いつも行く日本橋の丸善に、「Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造」が平積みされていました。タイトルを見ると、ビジネス書みたいな感じがしたのですが、パラパラと見ると、本格的な確率論の本。さっそく、購入して(私がリアル書店で本を買うのはよほどのことです)、あまりに面白く、あっという間に、読んでしまったので、みなさんにおすすめしたいと思います。
著者の服部哲弥氏は、慶應義塾大学経済学部教授で、確率論、数理物理学の研究者です。Amazonの内部の人間ではないので、実際に、Amazonのランキングがどのように計算されているかについて解説しているわけではありません。Amazonランキングを題材として、数理物理学を展開している本です。つまり、Amazonランキングを計算する数理モデルを構築し、サンプルデータ(いくつかの書籍のAmazonランキングを毎日書き写して採取したもの)を用いて検証するということをやっている本です。
Amazonのランキングの計算方法を推測する上で、著者が採用したモデルは「move-to-front規則」(最後に売れた順に並べる、つまり、注文のたびに1位にジャンプする)というモデルです。たしかに、これは、自分の本のランキングをながめていても起こる現象で、順位が、10万台であろうと、100万台であろうと、1回注文すると、順位が、おおむね1万位台または2万位台に一気に上がります。実際には1位ではありませんが、本研究では、研究対象をロングテールの本にしぼり、1位と1万位が同等と見なせる単純化したモデルを用いているので、モデル内では同じ意味合いと考えて下さい。
そして、もう一つ重要なことは、検証対象を、1週間に1冊以下しか売れないような、Amazonが取り扱��ている大多数の本にしぼったことです。よく売れる本(ビッグヒット書籍)と大多数のあまり売れない本(ロングテール書籍)では、Amazonランキングの計算の仕方が異なる可能性があり、著者は、ロングテールのランキング1万位以下の書籍のAmazonランキング計算方法に焦点を当てました。
著者はパレート分布に基づき、非常に単純なランキングの数理モデルを構築しました。そして、サンプルデータのランキングの時間変化のデータを統計的に当てはめて、各種係数を決めています。それによれば、著者の構築した数理モデルはランキングの推移と、非常によく一致しており、ランキングの数理モデルが正しいことを検証しています。
中身の1/3くらいは、かなり本格的な数学なので、私もついて行けないのですが、この本で、Amazonランキングの意味するものが 、明確になりました。
1万位以下のAmazonランキングでは、そのランキングが意味するものは最後に売れてからの経過時間と考えるとよいようです。
順位 最後に売れてから
70万位 72日
60万位 41日
50万位 26日
40万位 16日
30万位 9日
20万位 4.5日
10万位 36時間
5万位 13時間
4万位 9時間
3万位 6時間
1万位以内(上位)のAmazonランキングは、実際の売れ行きとイメージが近いと理解できます。
順位 平均注文時間間隔
10位 5秒/冊
100位 1.5分/冊
1000位 30分/冊
1万位 7.5時間/冊
上記、テーブルは、いずれも「Amazonランキングの謎を解く」服部哲弥著から引用。
さらに、この本がすばらしいところは、ランキング計算モデルを、実際のサンプルデータに当てはめて、係数を決めた結果、実は、「Amazonはロングテールビジネスではない」ということを明らかにしたということです。つまり、ほとんど売れない本は、コストがかからないと言っても、Amazonの収益にはほとんど寄与しておらず、実際には、Amazonは「よく売れる本」で収益を得ていると言うことです。すでに、「Amazonはロングテールビジネスではない」というのは、私の書いた本のような、たいしして売れない本が、ずっと在庫されないままになっているという事実とも一致しているのかもしれません。詳しくは、本書を読んで下さい。
本格的な確率論で、ついて行けていない部分もあります(そう言う人には、読み飛ばせる工夫がしてありますのでご安心下さい)が、かなりおもしろい本です。久方ぶりに、楽しく数学と接することができました。おすすめの一冊です。
投稿元:
レビューを見る
2011 9/14読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。
以前、北大の行木孝夫先生からうかがっていたAmazonランキングは確率的順位モデルである、という話。
本にまとまっているのは知らなかったのだが、図書館の新着棚で見つけて喜び勇んで借りてきた。
あまり売れない本(ランキング上位に入らないような本、10万位~100万位のオーダーの本)をAmazonで注文すると、次回ランキング更新で順位がジャンプアップする、それも直前の順位にかかわらず1万位~2万位前後まで上がる、という現象に着目。Amazonのランキングは「最後に売れた順」に従っている、ということを説明していく。
さらにそこでわかった数理モデルに従って分析していくと、Amazon.co.jpでは本のロングテールビジネスモデルは成り立っていないことまでわかる、と指摘。実際の収益は少数のビッグヒットから成る分布になっている。
行木先生から伺ったときにも思ったが、いやー・・・面白い!
数式が出てくる部分は苦手な方は苦手だと思うが(自分も苦手)、そこは流しながらでも(本当はそこが著者が一番の力点置いているんだけど)説明はわかりやすいし結論も納得がいく。
ランキングという公開情報の動きだけからどれだけのことがわかるか、というのを示してみせた本としてもとても面白い。単行本化されて良かった。
投稿元:
レビューを見る
amazon上の1冊の本のランキングの時間的推移から、amazonのランキングを簡単なモデルで近似し、近似で得られたモデルパラメータからamazonのロングテールビジネスが成立しているかどうかを読み解いている。取り組み自体は面白いが、途中から難解かつ説明がくどい。結論としては、amazonの売り上げは一部のビッグヒットに偏っており、ロングテールビジネスは成立してない、ということでした。
投稿元:
レビューを見る
難しいことを簡単に書くのが理解の高みであり、叙述の腕である。本書のように徒に難しく、理解しづらい書き方をするようでは一般書など書かないほうが良い。なんでmove-to-frontから結論の式に至るプロセスを丁寧にページを割いて説明できないのか。確実に、もっとわかりやすく書ける人が他にいる。半分もいかないうちから確率過程の教科書になってしまうのはどういうわけだ。
投稿元:
レビューを見る
Amazonのランキングがどのように決められているかというのを確率論で解き明かしていく数学の本。AmazonというECサイトはリコメンドなど含めて技術的にも面白い側面があるサイトということもあってタイトルに関心を持ってこの本を手に取ってみた。この本で扱っているテーマは、ランキング上位ではない書籍につけられるランキングについて。上位に食い込む書籍のランキングは販売点数で計算していると思われるが、ほとんど売れない本にどのようなアルゴリズムで順位付けを行っているのであろうか?、という疑問をAmazonのサイトの観察結果から数学的に解き明かしていく。文系の人にもとっつきやすいようにと縦書きで読み物チックな感じで構成されている。とは言え、あくまでも数学の本なので、数式があまり出てこないとはいえとっつきにくさはあると思う。
この本ではAmazonのランキングのアルゴリズムを解き明かすと同時に、Amazonのロングテールビジネスは成り立っているのかについて言及している。ロングテールとは、一般的な商店では売り上げが一部の人気商品で成り立っているが、(Amazonのように)たくさんの商品を扱うとあまり売れない(人気の無い)商品が一部の人気商品の売り上げを凌駕する、という様子をさす。この本では、Amazonのロングテールが成り立っておらず、やはりAmazonでも一部の人気商品の売り上げに依存しているのではないかと考察されている。この結論を導き出すまでのプロセスがミステリーチックに描かれていて面白いので、文系の人でも数学的なことはスルーして読んでみると楽しめるのではないかなぁと感じた。
投稿元:
レビューを見る
タイトルから想像してたものと内容がかなりはなれており,結構数学を使った真面目な本だった.日本語をふんだんに用いた数学論文といった印象.
読み流せる内容ではなく,ひとまず積み.
投稿元:
レビューを見る
感想は以下。
http://masterka.seesaa.net/article/245122731.html
投稿元:
レビューを見る
内容が難しすぎて理解できない。ただ、ランキングが確率論の高度な数式で付けられているのは判った。しかし、アマゾンが意図的に順位をつけているのではという疑問は残る。
投稿元:
レビューを見る
著者が読者に対して本当に要求している数学力はかなりハイレベルなものです。なので、なんとなく興味があるからといって安易に購入するのは控えたほうがよいでしょう。まずは巻末の注釈を眺めて判断するとよいでしょう。
著者が提案するモデルについては面白いけれど、アマゾンがランキングのメカニズム等を公表していないことを考えると結論がどこまでホントかウソかは疑問も残ります。
ロングテールビジネスではないというメインの結論はたぶんホントなんでしょうけれど。
投稿元:
レビューを見る
タイトルを読んだ限りでは、もうちょっととっかかりやすい内容かと手にとったが、数学に対して苦手意識が強い自分には読み進めるのが正直辛かった。Amazonが言われていたロングテールではない事を示す話として受け止めた。
投稿元:
レビューを見る
Amazonの本ではなく、数学の本です。数学に関心や理解がないと、大部分は読み解けません、多分。僕も読み解いてません。
ランキングから分析して、Amazonのロングテールが成り立つか否か、というあたりは理解できた気がします。そしてロングテールは、ビジネスとしては成立していない、という推測をするのですが、一方でAmazonの日米課税問題の時期と重なったりしていて、もしかしてロングテール在庫を削っていこうとしていたのかもしれない、なんてことも(それは本書の守備範囲ではない、としていますが)。
ところどころに出てくる読めそうな部分だけで、なかなかおもしろいのですが、数学が根底にある人はもっと楽しく読めるのかな、こんちきしょう。
投稿元:
レビューを見る
タイトルが面白そうだったので、手に取ったがほとんど内容が分からなかった。これは統計学の知識を持っている人向けの本なので、知識の無い人間が読むと苦痛でしかないが、知識があればそれなりに面白いと思われる。
投稿元:
レビューを見る
「本好き」だけでなく筆者、編集者、書店員など出版関係者が見過ごすことができないタイトルについ手に取った。残念ながらその内容大部分を占める数学の記述は僕にとって理解不能領域だが、「amazonは(輝かしい?)ロングテールビジネスではない」という結論はちょっと納得。