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不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生 みんなのレビュー

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みんなのレビュー36件

みんなの評価4.2

評価内訳

36 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

汎用される細胞株にも、親があり子どもがあり、生きた人生があった。固有名詞で捉える事で見えてくる世界を描くことで多くの問題を提示する力作。

2011/08/09 08:26

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヒト由来の細胞として最初に樹立された培養株、ヒーラ(HeLa)。1951年に子宮頸がんから採取されて以来、世界中で研究に使われている細胞である。
 この細胞がどのように、どんな人間からとられ、家族や本人、そして世界にどんな影響を与えてきたのか。本書ではヒーラ細胞を、ヘンリエッタ・ラックスという名前のある、一人の人間としてみていくことに重点が置かれている。

 本人の同意なく研究に細胞を使うことの問題、家族に無関係に販売したり特許をとったりすることの問題。果てはそのことで訴訟するべきだと家族を巻き込む偽弁護士まで登場する。科学研究と倫理の問題、人種の問題ばかりではない。信仰や報道についても、本書を読むと考えさせられることがあるはずである。

 多くの課題を含み、時間も場所も錯綜した書き方は読みやすいとはいえない。科学的な価値説明をするために専門用語が多い部分もあり、宗教的な記述の特殊性を感じるところもある。ヘンリエッタや家族、特に子どもたちの生活の部分は、取材を通して知りえた事実なのかもしれないがここまで書く必要があるか、と危ぶむぐらい立ち入った内容である。本書にも記載されている、最初にドキュメンタリー番組を作成しようとしたジャーナリストの「実名で家族の様子まで細かくみせることが視聴者ひきつける要素だ」という言葉と、著者も同じことをしているのではないだろうかとすこし「ひいて」しまう。
 正直、ここまで書く必要があったのかについてはまだ疑問を拭えないのだが、知らないうちに母親が世界中でなにかわけのわからないことに使われていることを知ったあとの苦悩まで読むと、執拗な家族の記述も、その中でいかに彼らが彼らなりに生きてきたのかを示すために必要だったようにも思えてくる。あの時代の医療や研究、特に黒人に対しての劣悪な環境を示すためにはこれも必要だったのかもしれない、と。

 感動を呼び起こすのは、遺体解剖のときにペディキュアを見てはじめて一人の生きていた人間だと感じたという実験助手の話と、細胞の染色写真を送り感謝の言葉を語った医師の言葉で家族の心がほぐれていくところ。
 家族の苦しみも、結局は「母は、私たちはなんだったのか」を人間として認めてほしい、というところからきているのではないだろうか。多分人は誰でも、個人として、固有名詞のある存在として認められることを必要としている。
 普遍的な単語としてではなく固有名詞として考えると、物事は違う受け取られ方をする。関わった個人の尊厳を認め畏敬の念をもつこと。これがあれば、起こらないですむ問題もたくさんあるように思える。本書には多くの問題が提示されているが、このことが、忘れがちであるが重要な問題(相手を思うという想像力の問題といってもいいのかもしれない。)であることを指摘している点は重要だと思う。

 著者はいま、ヒーラ細胞の財団を設立しているとのことである。これも、一歩間違えば家族の意向とは離れてしまう怖れは拭えない。しかし、ずれを正しつつ信頼を保ち続けること、それだけが人としてのできることなのではないだろうか。

 重たくて複雑で、よくまとめられたとは言い切れない部分もあるが、丹念な取材の上に真摯に作られた本であることは確かである。ものものしく長い内容紹介文には気圧されるが、医学や科学と社会について、個人と社会の関係について、感心が少しでもある方には一読の価値ありである。

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紙の本

著者の真摯な取材姿勢に好感がもてる、大変読みやすい医学ノンフィクション

2011/12/13 06:25

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 1951年に黒人女性ヘンリエッタ・ラックスから切り取られたガン細胞は大変特異なもので、切除後も容易に増殖できる細胞であった。ヒーラ細胞と名づけられたそれは世界中に売買され、ポリオワクチンや遺伝子マップの作成、放射能の影響の調査など様々な医学的分野の進歩に貢献してきた。そして製薬会社などに莫大な利益をもたらしたのだ。
 過去半世紀以上に渡って人類の健康に寄与してきたヒーラ細胞の由来を取材していくうちに著者は、ヘンリエッタの遺族が細胞の生み出してきた経済的恩恵をまったく享受することなく、またヘンリエッタの死後にその細胞がそうした利用をされてきた事実を全く知らなかったことを知る…。

 この本が描くのは、高度な資本主義社会という基盤の上で急速に進歩する医学の特異な姿、だからこそ発生する莫大な利潤が生みだす経済格差、そして公民権以前はもちろんのこと以後であってすら社会的立場の弱いアフリカ系アメリカ人たちの切迫した日常です。
 自分の体から切除された細胞には、もともとの持ち主の権利が及ぶことはないのか?
 医学の進歩のためという大義名分のためにも、切除された細胞の使用権を元患者やその家族が妨げることがないよう、医療従事者や製薬会社は細胞の優先的使用権を持つべきなのか。
 今も答の出ない課題に、アメリカ社会は議論を続けているのです。
 
 私自身、近年腫瘍切除手術を受けたことがあります。切除した腫瘍は検査のために生検にまわされました。幸い結果は良性でしたが、もちろんその細胞を返却してもらったわけではありません。
 日本の実情は分かりませんが、この本によればこうした場合の切除細胞に関してアメリカでは数百万件を目標に標本集積が開始されているというのです。日本の私の場合はどうなのでしょう。この本を読むうちにそのことが気になり、うすら寒い思いにとらわれて仕方ありませんでした。

 一般読者向けに書かれた書籍とはいえ、科学的ノンフィクションですから医学や法律などにまつわる記述も多く、決して容易な翻訳ではなかったことでしょう。しかし訳者はこの本を実に分かりやすい日本語に巧みに置き換えていて、読み進めるのに難渋することが全くありませんでした。
 「やおら」という言葉を「ゆっくりと動作を起こすさま」という本来の意味ではなく「急に、いきなり」の意味で使っているところが幾度かあるのと、「~に鑑みて」というべきところを「~を鑑みて」と助詞の使い方を間違えているところがわずかに目立ちましたが、全体的には大変見事な訳出作業だと思います。

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2011/06/21 08:59

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2011/07/10 14:05

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2011/12/20 00:24

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