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向こう10年のアメリカ帝国の処方箋。マキャベリ的な皇帝としてのアメリカ大統領とそれがとるべき行動の指針。均衡維持。
独を中心とした「欧州」とロシアとの協商を阻害しロシアを押さえ込む。そのためにはそれらの間にある国との関係性を向上させ、経済と軍備の強化をするように仕向けなければならない。特にポーランドとの関係性を向上させうることは地理的にも独露協商にくさびを刺すことになる。あらゆる意味で過去のトラウマにおびえるポーランドを安心させ、経済を強化し、軍事的な協力を惜しまず、最終的には拠点を作り軍隊を駐留させる。
イラクからは撤兵するのだし、どのみち今の中東において最も力のある国はイランにおいてほかなく、中東地域を安定化させるにはイランとの関係改善を行い、手を組むしかない。またその過程で、そのような顔は全く見せないようにしつつ事実上イスラエルからは撤退しパレスチナ問題には手をつけない。その一方でトルコとの同盟は強化する。とにかく均衡化させる。
中東と欧州の問題が大きく手をつけれないので西太平洋は現状維持。中国はどのみち今のような経済発展は維持できないので、経済成長が鈍化すれば国内の問題に取り組まざる終えず、拡大拡張路線は維持できない。日本は今後長い目で見れば今の状態から立ち直り軍備とりわけ海軍力を強化し米国の脅威となるが、今後10年のうちは国内再構築と、人口構成の不均衡が足かせになって前進できないし、国家の根幹を海洋に頼る以上現在のアメリカとの関係を維持しようとするだろう。また日中の同盟はあり得ない。従って基本的に現状維持されるし、欧州と中東の問題が大きくこちらに咲くりソースは米国にはないので基本的に放っておいてもかまわない。日中を牽制する意味で韓国の軍備強化特に海軍の強化は合理的だ。(将来の日本との戦争で有力な同盟者になり得る)
アフリカは米国が帝国として対応する国家はなく、長い目で見れば世界勢力を担うような国家が現れるだろうが10年にいないそういったことにはならないので、介入も干渉もしない。
インドはインド洋の覇権を狙うだろうが、アメリカは帝国の維持のためにこれを阻止しなければならない。そのためにはインドの軍備拡張を海軍ではなく陸空軍に向かわせるべきで、そのためには弱体化しているパキスタンを強化し、印・パの均衡状態を復活させること。
南北アメリカでは、ブラジルは強国であるが地政学的に帝国の権益を直接脅かすような位置にはいないないが、牽制の意味で特にアルゼンチンやその他周辺国への援助は行い周辺国との均衡状態を作るべき。キューバは今後10年以内にカストロ兄弟の支配が終わる可能性があり、そのときを待ってアメリカにとって安心できる体制にする。メキシコとの二つの問題、麻薬と不法移民ははアメリカ自体がそれ欲している以上どのみち解決できないので、皇帝たる大統領は何か対策を実施しているように領民に見せつつ実際には失敗させ現状を維持する。(失敗は部下になすりつければいい)
感想:
オバマ自身はマキャベリから一番遠い存在に見えるが、二期目の大統領となったときにどうだろうか。就任時の理想的なリベラリストの���ち位置から今は現実的な中道政策者の顔に変わっており、もう選挙のない二期目にどう変わっていくか。マキャベリストに生まれ変わるんだろうか。どちらにせよ外向的には本書に書かれているようにロシアとイランが中心課題になることは間違いないだろう。
あと、日本に対する見方。基本的に日本が潜在的脅威であるという見方は米国内では特に軍事や国際関係の専門家の間では一般的だと思う。潜在的な脅威だから味方に引き入れおいた方が米国にとって安心なのだ。案外日本人の片思いかもしれないというのは頭の隅入れておいた方がいいのだろう。
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アメリカを中心とした10年後までの予測とそれに対応したアメリカの戦略。
100年後は無理でも10年くらいなら予測できるんじゃないかと思って購入。
過去の事件の解釈に関しては、間違ってないかと思うところもところどころあるが、ドイツとロシアの接近は先日FTでも報道されていたりと予測が当たっているようにも見える。
著者がほんとにどこまで政策にかかわっているのか知らないけど、戦争は古いものではなく、どの国にも常に起こりうることでみな戦略を練っているということにふっと気づかされた。
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印象に残ったのは、「ドイツはEUを見捨ててロシアに接近する」ってところかな。
影のCIAが明かすなんてかいてあったので、どんなもんじゃ? と期待しながら読み始めましたが、正直いって、私には合いませんでした。翻訳ものって、たまにこんなことがあります。たぶん、相性の問題です。
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【レビュー】
アメリカと各大陸の強国との今後の関係を読み解く、新たな視点を提供してくれる。日本のマスコミだけでは得られない情報が要領よくまとめられている。今後ビジネス其他で海外に目をむける人には格好の資料となるだろう。特に第六章のイスラエルに関する記述は最高に面白かった。
【特記事項】
・アメリカは意図せずして「帝国」となってしまった。共和国を守れるのは大統領のみである。
・大統領はより大きな道徳的価値観のために嘘をつくことも必要。リンカーン、ルーズベルト、レーガンが其点で素晴らしい。リンカーンは大義を守るた、め、全米で人身保護礼状請求を差し止め、メリーランド州の離脱に賛成する国会議員を逮捕することまでした。
・ルーズベルトの恐慌に関する取り組みはほとんど意味なし。大恐慌が終息したのは第二次世界大戦のおかげ。
・北朝鮮は、危ない国と思わせるためにあえて奇怪な行動をしている。
・大統領は、テロの根絶は不可能とわきまえつつ、それは可能であるふりを国民にはする必要がある。
●本来テロはアメリカの存亡を揺るがすような脅威ではないし、完全に根絶することもできない。
・通説とは違い、エジプトとシリアが反米になったから米国はイスラエルに接近した。
●イランとは和解せよ。
・ロシア対策としてポーランドに焦点を絞れ。グルジアは戦略的価値はほとんどないから撤退せよ。
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勢力均衡のために米国がなすべきことが書かれ、大統領に求められていることが何かがよく分かる。今後の世界情勢分析の一視点として有効なフレームワークと感じた。
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①氷河型社会、地震型社会という分類は興味深い
■氷河型社会:変化が絶えず、社会・政治体制が常に少しずつ変わっている。氷河が動くように物事は不断に進展しているが、1つの出来事がいきなり社会をいっぺんさせることはない→米国
■地震型社会:さまざまなことが起きても、長い間にわたってほとんど変化が見られない。そのうち、水面下で国内体制や対外関係への圧力が高まり、突如として体制が瓦解して大変革が起きる→日本
②プーチンは、世界をイデオロギーではなく地政学の観点で捉えている
■グルジア攻撃は(1)ロシアが戦力を投射できることを周辺国に見せ付ける必要があった(2)米国の友情や保証に何の意味もないことを旧ソ連諸国に示すことに成功した
③ドイツの行方
■(続きは時間のあるときに・・・)
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なんだかやるせないな。
自分らが生活しているのとは全く違う次元でこんなパワーゲームが繰り広げられているなんて。
目的はなんなんだろって思う。
でも、まぁ一般人には意味を見出せないパワーゲームでも世界情勢の一側面だと思うと考慮に値する指摘はある。アメリカは否が応でも世界のごたごたに巻き込まれるし、自国の利権を守るために他者どうしの勢力を拮抗させなければならないとか、道徳的でありながら欺瞞に目をつぶるような大統領でなければならないだとか。
ほんと、グローバル化だとか、ネット社会だとか、BRICsだとかアフリカだとか巷のキーワードの裏に横行する世界があるんだなと思った。
世間知らずでした。
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前作『100年予測』に続き今度は今後10年を予測する。マキャベリ風の米国帝国主義は確かに鼻につくが、豊富な情報収集と鋭い洞察力に裏打ちされた筆致は流石と唸らざるを得ない。本文前に特別に収録されている『地震型社会、日本』には今後の日本のあり方を考えさせられる。
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影のCIAと言われる著者。
アメリカの外交政策の提言を世界各地の分析から行っている。
日中関係については、中国では無く日本の海軍力増強が懸念だそうだ。中国は国内格差が常に安定の阻害要因なので、アメリカは中国の安定に力をかし、相対的に弱体化した日本がアメリカに依存する様に誘導するのがアメリカの国益だと。
実際に日本が混乱すると中国は尖閣にちょっかい出すし、国内のガス抜きにすぐ日本を批判する。日本も石原慎太郎とか石破茂が結構人気が有り、行き詰まると右傾化の可能性は有るかも。あまり楽しげな予測じゃないが。
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次の10年のアメリカの国際戦略について、「影のCIA」のCEOが予測するという本。あくまでもアメリカ目線。
世界情勢について疎い(というか関心が薄い)米国民のために書かれた本、という印象が強い。定期的に政治経済レポートとか読んでいる人には物足りないでしょう。「影のCIA」らしさは一片も感じられない、ごく綺麗な内容となっています。まぁ短い期間に対する予測の方が独創性の働く余地は少ないので、当然のことなのかもしれない。
同じ著者の「100年予測」の方がぶっ飛んでいて楽しいという評判を聞きました。娯楽としては、そっち先に読んどくべきだった。
世界の各地域の現状と課題をざっくりと把握するには有用だけれど、本屋で各章ラストに設けられている概要を先に読んで、興味ある部分だけ立ち読みするのでも事足りるかも(本屋さんに嫌われそうな発言で申し訳ないと思いつつ)。
私は興味上、中東と中南米の項以外はほぼ飛ばし読み。
あとは、今後10年でドイツがロシアに接近するという話は興味深かった。そういう仮説もあるということを知っておけば、レポートや記事を読む目線もまた一つ増えて面白みを増すので、結果的には読んどいて損はありませんでした。
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地政学的な記述は、回りくどい。
アメリカが帝国なのに、帝国のふるまいをしていない。国民は共和国を指向しているのに、内部の共和制に危機が発生している。
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2011年刊(原本同年)。著者は元ルイジアナ州立大学地政学研究センター所長。◆米国から見た10年先(2021年)までの世界情勢の趨勢と、その将来の有り様を分析する書。とはいえ、未来予想ではなく冷戦終結以降21Cの米の世界戦略分析書として読むべきかも。◆①アフリカ・南米は米世界戦略上、特記事項なし。②中東は子ブッシュ失政のつけとしてのイラン対策として、トルコ援助。③日本の軍備増強への懸念。韓国・シンガポール・オーストラリアとの連携強化。④欧州は、EUの独支配と独ロ協商への対抗。方法は英の重視。独仏の離隔。
地政学的意味としてのポーランドへの経済軍事支援。◆疑問点。①国内に多様な問題を抱えるものの、世界二位経済大国の中国の過小評価。中台関係。食糧とエネルギーへの渇望の異常さ。②中央アジア(露・中・中東関係)の分析皆無。③日本の過大評価。④露の分析不足。
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100年予測が面白かったので読んでみた。今作はアメリカ中心で、今後10年アメリカがどう行動すべしという内容で、ちょっと期待していたものとずれていたかな。
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日本版刊行によせてー地震型社会、日本
まえがき
地震と中東情勢が重なったことで 日本は自らの運命を決められないことに気がついた。 日本の運命は自然とアメリカの手に握られている。日本は脆弱な社会
序章 アメリカの均衡を取り戻す
しかし人が一生を送る期間はそれほど長くない。我々の一生はそれよりずっと短く、そこでは生身の人間が下す現物の決定が暮らしを方向づけるのだ。
付属の時間枠が長いほど未来予測が難しくなると思われている。だが私は逆だと考える。個人の行動ほど予測しがたいものはない。100年の間には 膨大な数の決定が下されるためどの説をとっても重要でなくなる。それぞれの決定は1世紀を作る決定の奔流に埋もれてしまう。
第1章 意図せざる帝国
第2章 共和国、帝国、そしてマキャヴェリ流の大統領
第3章 金融危機とよみがえった国家
第4章 勢力均衡を探る
第5章 テロの罠
フォンクラウゼヴィッツによると、戦争の目的は、敵国の抵抗力を奪い、自らの意思を強要することにあるという。これを行う主な手段は、敵国の兵力を破壊するか、国民の抵抗意志をくじくことだ。恐れをうえければ、兵力を壊滅させることもできる。
民間人への攻撃は、一般社会に恐怖を引き起こすことを狙う戦術だ。
ここで重要なのは、軍事目的の奇襲攻撃と、恐怖を与えることを目的とする、民間人への奇襲攻撃とを、はっきり区別することだ。自分たちは脆弱だという意識を敵に持たせ、士気をくじくことにある。
第6章 方針の見直しーイスラエルの場合
歴史的根拠に根ざした道徳的規範は、何とでも都合よく変えられる可能性があり、現に変えられている。単純な道徳的判断は、現地の実情を考慮に入れていないし、一貫性のある道徳的見解を導くことだけをとっても、唖然とするほど難しい。
第7章 戦略転換ーアメリカ、イラン、そして 中東
優先されるべき戦略的課題は、じつはアフガニスタンではなくパキスタンであり、この地域の真に重要な勢力均衡は、実はパキスタン対インドなのだ。
地域の心臓部―イランとイラク
第8章 ロシアの復活
第9章 ヨーロッパー歴史への帰還
第10章 西太平洋地域に向き合う
アジアのゲーム
西太平洋地域の平和は永遠には続かない。アメリカは韓国、オーストラリア、シンガポールの三つの主要勢力との関係強化に勤めなくてはいけない。
この三国は、アメリカが西太平洋諸国、とくに日本と戦争になった場合に、重要な同盟国になる。準備は早いに越したことはない。韓国海軍を増強し、オーストラリアに軍事施設を設置し、シンガポールの軍を近代化しても、さほど大きな懸念を招かない。
・アメリカの最大の懸念は、日本の動向である。日本の依存をできるかぎり引き伸ばし、追い詰めないことが重要となる。
第11章 安泰なアメリカ大陸
ラテンアメリカでのできごとは、アメリカにとって大して重要ではない。
南アメリカは一つの地理的実体のように見えるが、じつはこの大陸は、大きな地形障壁によって分断されている。
南アメリカは三つの地域に分かれており、それ���れの地域が、必要最小限の陸上交易が困難で政治的統合が不可能という意味で、残りの地域から遮断されている。
ラテンアメリカには、単独でアメリカの対抗勢力になる力を秘めた国は、一国しかない。それはブラジルだ。ブラジルは、ラテンアメリカ史上初の自立した経済大国克つ潜在的な世界覇権国であり、これまで巧妙に危険を分散してきた。
ブラジルに対抗しうる唯一の国、アルゼンチン
第12章 アフリカー放っておくべき場所
大統領は戦争から決して目をそらしてはいけないが、だからといってうまく立ち回っていけない法はない。マキャベリもいっている。善は施しからしか生まれるものではない、と。
第13章 技術と人口の不均衡
第14章 帝国 共和国 そしてこれからの10年
勝てない戦争や、勝つためだけの戦争を戦わないことが大切だ。
アメリカ軍とイスラム世界との戦争は、今後何世代にもわたって、終わりなき戦争が続くという見方もある。もしこれが本当なら、アメリカはすでに敗北している。10億を超えるイスラム教徒を制圧する方法などないからだ。
「将軍は一つ前の戦争を戦う」といわれる。激しい戦闘の最中には、将来起きるどんな戦争も、いま戦っている戦争と同じようなものになるという。小規模な戦争をいくつ勝っても、大きな戦争を落とせばすべてを失うことを、忘れてはならない。
最初に取り組むべきは、海洋だ。宇宙部隊が僅差でこれに続く。
礼節と判断力と道徳的目標
必要なのは、次の四点だ。第一に、自らの置かれて状況を、感情に流されず冷静に理解する国民。第二に、この現実をアメリカの価値観と折り合わせる重荷を担う覚悟がある指導層。第三に、力と道徳律を理解し、自らの立場をわきまえた大統領。そして何よりも必要なのが、成熟した国民だ。国民は、今何が重要なのかを察し、国を運営するために必要な文化や諸機関を築く時間的余裕がないことを理解しなくてはならない。このような国民がいなければ、何も始まらない。国を成長させるには、とてつもない意志の力が必要なのだ。
謝辞
訳者あとがき