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実に良い本だった。
日本人の感性が分かる(というか、一応、日本人として分かっているつもりであるが)、それを日本人以外に理解してもらおうとするなら、どう説明するかが、よく分かる。
第1章「内と外をわける」の最初の項が「内と外」。「うち」が家族、家庭だけでなく自分の所属する集団を意味し(例えば学校や会社、チーム等)、それ以外を「よそ」といい・・・と説明がはじまり(よそ行き、よそよそしい等)、おいおい、「内(うち)」と「外(そと)」を説明しはじめて、いきなり、「うち」と「よそ」じゃぁ、分かりにくいだろう、とひっかかったが、一応、中~上級日本語学習者向けの内容なので、「外(そと)」と「よそ」は同義ということは分かるということか。
と、まぁ、冒頭、ちょっと「?」と思うが、後に続く項目、章立てを見ていくと、なるほど「内と外」から説明をはじめる理由が分かってくる。
「内」に対する「外」は、いわば世間であり、世間様に迷惑かけないようマナーやルールが大事で、不手際があれば悔い改める、そんな流れで「世間」「しつけ」「けじめ」という言葉が並ぶ。
本音と建前ではないが、「うち」と「そと」の使い分け、気遣いの妙から生まれた言葉、感性が多く、それが言葉の意味の難しさになっていることが順序だって良く判る。何が「内」で、「外(そと・よそ)」が何を意味しているかが分からないと、その先の語彙感覚が掴みにくいということだ。
第2章は「他人の目を意識する」、第3章「周囲に配慮する」と続き、「外」との関りにちなむ言葉が並ぶ。「迷惑」「恥」「甘え」「みっともない」・・・etc.
なんとまぁ、我々日本人は、どれほど世間体を気にして、気を遣い、内と外の関係性に配慮し、自分を押さえることで、この風土と言葉遣い、ひいては日本文化を築き上げてきたかが、よく分かる。
個々、紹介される言葉の意味、例文を、我々日本人が読んで得心したり感心するものはたいしてないのであるが、その背後に、いかなる深慮遠謀というか、大和言葉の時代から積み上げて来た心遣いが込められているのかの再確認になる。。
人は教えることで、学ぶことが出来る。素晴らしい。