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死んだお母さんの同人誌を発見した事に端を発する、連作短編集。
同人誌制作に関わった4人+子ども2人が、それぞれ主人公になる。
おもしろいのは、同時代じゃなくて、人によって時代が違うところ。点が線になるように、それぞれの時が繋がって、全員の人生が見えてくる仕組み。
同人誌は、普通にオリジナルのノーマルっぽいものと想定されるから、よくいう「今死ねない」(解釈:遺るものが恥ずかしすぎる)ってことではないので悪しからず。
個人的に一番しっくりきたのは、この作品内唯一の、男の子視点の話。やっぱり笹生さんの描く男の子像が好きみたい。
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笹生さんの作品を読むのはこれで4作目。
ヤングアダルトの書き手、ということでちょいちょい読んでみてるのですが、どうやらワタシ余り好みでないようだ。
面白いのは面白いンですけど、好みではない。それもまた一興か。
今後も気が向いたら読む感じかな。
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デビュー以来、児童文学の世界で活躍してきた笹生さんが、一般文芸誌「別冊 文藝春秋」へ連載したシリーズ作品6編を収録。結果として、瑞々しいヤング・アダルト向け青春ノベルとなっている。第一話「サドルブラウンの犬」は、やんちゃな高校三年生の息子・セイヤの一人語り。40歳になったばかりの「おかん」が心臓発作で亡くなって、呆然とするところから話が始まる。その葬儀にやって来た弔問客の中に、「おかん」の中学時代の親友3人組が登場するのだが、どうにも共通点が見つけられない不思議な三人連れだった。亡くなった「おかん」の遺品を整理するうちに、昔のマンガ同人誌が現れて、「おかん」とあの三人組の関係がセイヤにもうっすらと分かってくる、、、工夫された設定で、25年も前の不思議な中学生たちの日々が甦ってくるストーリーだった。
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懐かしいアイテムが垣間見える作品だった。見た目からキャラから共通点がなさげな4人組を結びつけた「描くこと」を軸に広がっていくエピソードいろいろ。こんなふうにゆるく付き合っていける人間関係が羨ましく思った。
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母さんが突然死んだ―というかなり重い内容から始まるオムニバス形式の作品集。
重いけど、主眼はその母と周りの人たちの視点で、母が死んだ→母の昔1、2、3→母→母の死後、というような流れで進んで行きます。
仲間内で漫画を描くとか、ネットだとか、その時々らしい感じがしました。
サクッと読めるので、ちょっとした読書にオススメ。
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笹生 陽子
文藝春秋 (2011/06)
デビューは児童文学からでしょうか とっても読みやすかったです
語り手が次々意外性をもってかわっていくのが面白いし
息子と母 その友人 そしてまたその子供 と
各章がいろんなカラーでイメージされているのもいいな
≪ 空色の バトン渡せば マゼンダに ≫
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(2011.08.10読了)(2011.08.07借入)
日経夕刊の読書欄で、お話作りが上手になった、と紹介されていたので、図書館から借りて読んでみました。ごく平凡な人たちのごく普通の生活が描かれているだけなのにお話としてちゃんと読めるので、確かに上手かもしれない。
6つのお話が収められており、語り手が変わり、年齢が変わるのですが、登場人物が重なるので、連作短編集ということになります。
作品名は「サドルブラウンの犬」「青の女王」「茜色図鑑」「僕のパーマネントイエロー」「パステル・ストーリー」「マゼンタで行こう」です。読んでいるときは気が付かなかったのですが題名に色が付いているようです。パステルだけは、色の名前ではなさそうですが。
話の中心になるのが、小学校の同級生だった四人の女性、樹村ショーコ(望月ショーコ)、吉野、森川、陣ノ内、です。
●「サドルブラウンの犬」
語り手セイヤくんです。望月ショーコの息子です。高三です。
望月ショーコ、専業主婦、40歳、が亡くなって、お母さんの3人の友人たちがお葬式にやってくる話です。死因は、急性心疾患とのことです。
ショーコさんの最期を看取ったのは、娘のマドカちゃん11歳です。
お母さんの3人の友人たちは、中学の時に漫画の同好会で一緒で、その時発行した同人誌を持ってきて棺に入れてくれということだった。お母さんが漫画を好きだったなんて知らなかった。
●「青の女王」
語り手は、陣ノ内アキさんです。小学校の五年生です。富士山の見えるまちに引っ越してきました。転校生です。絵描きさんになるのが夢でした。
テストの時に消しゴムをなくして困っていたら樹村ショーコさんが自分の消しゴムを半分に切って分けてくれました。
ショーコさんは、陣ノ内さんが絵に興味があることがわかったので、森川さんと吉野さんに陣ノ内さんを紹介しました。
四人の交流のお話です。
●「茜色図鑑」
語り手は、吉野さんです。中学三年です。漫画家を目指して雑誌に投稿しています。
漫画同好会で、文化祭に同人誌を発行することになった。
仲良し4人組に、野球部の芹沢君が飛び入り参加。
学校行事担当の志村先生に「文化祭参加許可証」を申請に行ったら、不登校の平岡君をメンバーに入れてくれ、と頼まれた。
平岡君は、扱いにくかったけど、全く協力してくれないわけでもなかった。
同人誌作りの話でした。
●「僕のパーマネントイエロー」
語り手は、芹沢ユウイチ君です。二度目の大学受験で合格した二流私大の商学部一年生です。スキーサークルに入部しています。
コンパに誘われて行ってみると、森川ヒロミさんに会ってしまった。漫画同好会の同人誌を一緒に作ったあの人です。森川さんの小学校時代のあだ名はドラミちゃん。
森川さんは簿記の専門学校に通っている。
芹沢君と森川さんにその後の同人誌メンバーのことを語らせたりしています。
●「パステル・ストーリー」
語り手は、望月ショーコさんです。主婦です。
子供が二人います。長男セイヤは八歳。長女のマドカは一歳。
旦那が単身赴任して行ったので、車の運転を習って、自分で運転するしかなくなった。
四苦八苦の末、やっと運転免許を手にした。
陣ノ内さんが個展を開くというので、森川さん、吉野さんと会場で会うことになり、車で出かけました。
●「マゼンタで行こう」
語り手は、吉野カオリさんの娘さんです。14歳で、中学2年生。
父親と母親が離婚したので、母親の故郷に引っ越してきました。
偶然見つけた母親たちが中学時代に作成した同人誌に掲載されていた故郷の街角の写真を手掛かりに散歩していたら、ケータイを落としてしまったようです。
散歩の途中から、若い男が後をつけているのに気が付いたので、大急ぎで自宅にかけ込んだら、ケータイを拾った男が落とし主に渡そうと追いかけ来ていたのでした。
追いかけて来た男は、望月セイヤ君でした。母親の友人の子供です。
セイヤ君は、高校を卒業し、居酒屋で働きながら、通信制大学で勉強しようとしているそうです。セイヤ君やその妹のマドカちゃんとなじみながら新しい街になじんで行くようです。
(2011年8月23日・記)
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しみじみと楽しめた。 亡くなった主婦(って、ちょっと乱暴だけど)の息子、小中学校の同級生、本人が主人公となった連作短編集。 良くありがちな手法ではあるけれども、妙に心に残り、読み返したくなる作品。 佳品。
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これといって特徴がない(と息子からは思える)母が40歳で急逝した。遺品として中学時代にこしらえた漫画の同人誌が出てくる。遡ってみると、当然のことながら母にも青春時代があった。文化祭に向けて夢中になって同人誌をしあげた当時の仲間たちと、その子どもたちの世代も絡まって綴られる、連作短編集。
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高校生のセイヤの「おかんの人生終了」で始まる『サドルブラウンの犬』。冒頭からイマドキの高校生男児の独白になっていたので、これはきついなあと思って読み進めたら、2編目『青の女王』の最後で「おやっ」と思い、最後の『マゼンタで行こう』まで、一気に読んだ。いい意味で予想を裏切る展開(というか構成)だった。
YAというより一般向きだと思う。
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・・・あの頃のおかんと今のオレ・・・
目立ちたがりのオレとは正反対の地味でおっとりしたおかんが、ある日突然倒れて死んだ。お悔やみを言いに来た同級生のおばさんたちから渡された白黒コピーの同人誌を開くと、そこにはオレの知らないおかんの姿があった。母親、その友人たち、息子や娘たち。時代と場所を超えて繋がっていく想い。それは新たな出会いを生みながら、手から手へと渡されていく。
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冒頭、いきなりなんて作品?
この後、どんな展開と変な意味心配になっていましたが、読み進めていくうちにどんどん引き込まれていき、一気に読破してしまいました。
とても良かったのだけれども、一部いまいちな所があり満点に届かず。
でも楽しめました。
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はじめて読む笹生作品。
あさのあつこしかり、女流作家の世界観はすごい。
すごく地味な世界を視点を変えつつ紡いでいく筆力に
ぐんぐん引き込まれていく。
予算がたっぷりあればNHKの11時台連ドラにもなるんだけどなぁ。
と、何を読んでも原作探しになってしまう自分が嫌です。
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そして、あたしはまたひとつ、わかってしまったんだと思う。
世界がなにも変わらなくても、あたしたちは生きていくこと。
(P.95)
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高3のセイヤは、進路のことより友達とバカ(エロ)話に花を咲かせてばかりいる、ちょっとやんちゃな男の子。しかし、まだ40歳の母が急死した。地味で空気みたいだったオカン。通夜にオカンの同級生の友達「森川さん」「吉野さん」「陣ノ内さん」が来て泣いてた。彼女らは置いていった、中学時代に同好会でつくった同人誌を置いていった。オカンにも中学時代があって、それは空気みたいなオカンじゃなくて・・・。
一冊の同人誌に関わった人の、それぞれの連作短編。時と色のバトンを渡して、ラストはまた、セイヤへとつながっている。