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パーソナリティ(性格、人格)というのは、心理学の中でも取り扱いの難しい捉え所のない概念のひとつである。これまで多くの心理学者がパーソナリティにいかに迫るか苦労してきた。
そうした過程で、現在では過去の遺産となった類型論やフロイト理論といったものがパーソナリティを説明するものとして提唱されてきた。しかし、類型論やフロイト理論のほとんどは科学的に立証できていない。
だが、臨床心理学を専攻する同期や先輩の研究の話を聞くと、未だに類型論やフロイト理論に基づいたアプローチをしている人が少なからずいる。
これはかなり残念なことだ。
さて、だとすれば、どのようにパーソナリティに迫るのか。
この問いに対して、著者は本書の中でこれまでのパーソナリティ(著者は「性格」と訳している)研究の歴史を詳細にレビューしつつ、性格をタイプ(類型)に分けるのではなく、程度の差として研究する特性論を紹介している。
これまで、パーソナリティはその概念の曖昧さゆえに、ある研究者は発達心理学から、またある研究者は臨床心理学の観点から研究するなど、パーソナリティの定義自体にばらつきがみられた。
そうではなく、性格心理学という一つの領域を今一度確立することの重要性を本書は示している。
ただ、本書は著者の研究領域にあまりに近すぎるためか、著者の既刊と比べて、いつものシニカルでユーモラスな書き方は影を潜めている。なので、少し読みにくい。
また、初学者がいきなりこの本を読むのは難しいだろう。ただ、これに代わるようなきちんとしたパーソナリティ心理学の本があるかといえば、そうそうない訳だが…。
あと、些末な点だが、私が買ったのは初版本のためか、誤字が結構ある(○「二乗」×「自乗」、○「写真を撮る」×「写真を取る」など)。
そうした点を考慮して、星は3つとした。
しかし、パーソナリティを研究しようと思っている方はぜひ読んでほしい一冊であることに変わりはない。
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パーソナリティ研究に手を出す前に読んでおきたい一冊。なんとなくデータがあると信じてしまうけど、批判的な視点を持つことを忘れないようにしたいものです。
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性格や行動特性にまつわる最新の心理学研究について書かれた本。一般の人が読んだら「?」となるところが何箇所か。
心理学を専攻している人ならば、理解出来る内容だと思う。
ただ、古典的な心理学研究の否定に終始している印象が拭えず、だからなんなのよというところの記述が少ないのが残念。
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性格に関する様々な研究の歴史と問題点に紙面の多くを割いている他、「自尊心の高さは学力の成績や対人関係の能力の高さと相関関係がない」こと等、面白い研究が複数取り上げられている。
ビッグ・ファイブが性格分析の主流になるまでの過程と、ビッグ・ファイブに基づいたメタ分析結果を知りたい方にオススメできるかと思います。
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Big5の協調性、外向性、良識性、開放性、情緒安定性の要素の解説、環境と遺伝の影響、BIG5に至るまでにあった、類型論や精神分析の観点など、現時点でのエビデンスを元に特性とはどういうものかを細かく分析されているように感じた。この本の発売時点だとまだまだ、特性五因子との関連性はわからないことがあるので、これからの研究がこの本を覆すこともあるのだろうと思いながらもエビデンスの出し方、多角的な考察はしっかりしていて納得のいく内容で説明されているところは好感が持てる。
一部、結論何が言いたいの?と思うところもあった。
最も記憶に残ったものはやはり特定五因子の細かな構成要素の説明であった。協調性、外向性、良識性、開放性、情緒安定性の要素は自分がこれらの言葉からイメージするものだけでなく、なるほどこういう要素も含むのかと勉強になった。まだ、覚えきれていないので再度読み直して頭に入れたいと思う。
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「本書は・・・言わば遺物となってしまった宮城著『性格』の現代バージョンである」と強く来た。実際あの本いまでは有害だから(レポートとか見るといまだに読まれてるみたい)、岩波は責任もってまともなやつを出すべきなんだよな。
新鮮な話はないけど、まあとにかくわかりやすい。私はこの先生は(なんかメガロで攻撃的な点はさておいて)信頼できるんではないかと思っているのだが、業界内での評価はどうなんだろうな。
しかし一貫性論争ってのはなんだったのか、渡辺先生の『性格とはなんだったのか』読みおなおさなきゃならんようだなあ。