紙の本
密室、っていうともうそれだけでゲンナリしてしまうんです。現代における密室っていうのは、もうパロディ以外にありえないんじゃないか、なんて私は思って、そうなるとユーモアは不可欠なんですが、どうも貴志は真面目なんですね、笑えない。それに榎本の登場の仕方がなんとも不愉快なんです・・・
2012/05/01 19:03
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本のデザインをみていて思うんですが、出版社によって傾向っていうのがあると思います。無論、デザイナーが絡むことも多いので一概に言い切ることはできませんが、それでも角川書店と新潮社、或いは講談社や集英社とでは明らかに違う。で、この本なんかは完全に角川してるな、って思うわけです。新しい感じはありませんが、古くもない。なんていうかポップアート的? そんな装画は池田孝友、装丁は角川出身の高柳雅人。
で、です。それはこの小説の内容についてもいうことができます。四つの密室、これ自体が古くて新しい。シリーズ前作『狐火の家』が出たのが2008年ですから、4年ぶりの出版。で、『狐火』にしても、その前『硝子のハンマー』(日本推理作家協会賞)から4年して出ているのですから律儀です。で、当然ながら登場するのも前二作とおなじ弁護士・純子&防犯探偵・榎本ということになります。
ちなみにこの二人について、出版社の特設ページで
*
榎本径、青砥純子という「カギ」 今回も名探偵ぶりを発揮するふたりの人物像をレビュー
榎本径:冷静にして明晰な頭脳を駆使し、純子から持ち込まれる密室の謎を次々に解き明かしていく榎本。その経歴には一抹の胡散臭さを漂わせつつも、防犯コンサルタントとして見事に事件の真相を手繰り寄せる手腕は、やっぱり名探偵そのものだ。
防犯コンサルという職務上、あらゆるセキュリティ事情に通じているのが榎本の最大の武器。密室破りの様々な可能性を吟味し、純子の珍回答を含めた別解を片っ端から潰した末にたどり着く真相は、いつでもサプライズに満ちている!
青砥純子:弁護士として、様々な事件に立ち会うことになる純子。端麗な容姿に豊富な法知識を携えているが、密室を解く才能には恵まれなかったのが玉に瑕!? 毎回、事件の謎を解こうと躍起になるも、的はずれな解を掲げては榎本の失笑を買う。「なるほど。……今度こそ、わかりました!」「はいはい。言ってみてください」。こんなやりとりも今ではお馴染み。ただし、微笑ましいこの掛け合いが、しっかり別解潰しに一役買っている点は見逃せない。二人はやっぱりいいコンビなのだ。
*
とあります。各話についても同様の内容紹介がついていますので、覗いてみてください。私は簡単にタイトルと初出、そしてHPの決め言葉を引用しておきましょう。
佇む男(「野生時代」2008年5月号):ドアの前に佇んでいた男の不審な死の真相は?
鍵のかかった部屋(「野生時代」2008年12月号):辣腕の侵入盗が対峙した、完全なる密室の死
歪んだ箱(「野生時代」2010年5月号):地震によって作り出された理不尽な密室
密室劇場(「野生時代」2011年7月号):バカバカしくも謎が極まる舞台上の殺人劇
となります。意外と印象が薄いです。よくやるな、と思ったのが「佇む男」でしょうか。サラリと読んであまり理解できず、もう一度確認して「アリエネー」って思いました。でも、面白い。なんていうか、ここまで無理してしまうと、ウソだろ、っていうよりは笑えるわけです。それが行きついたのが、「密室劇場」でしょう。
でも、読みながらどうも不快感がある。それは密室の論理的な部分ではなく、榎本と純子の人柄のところ。特に榎本の出て来かたが嫌味です。こんな上司がいたら私は絶対にその会社を辞める、そういう感じ。『硝子のハンマー』では、ごく普通の人たちだったような気がしますが、『狐火の家』で脱線し始め、歯止めが利かなくなったような気がします。そしてミステリの切れも、その順で落ちている。
基本的に、貴志はユーモアを解さない人間ではないか、って私などは思ってしまいます。前田敦子ではありませんが〈不器用〉。そういえば、文章も内容を的確に伝えはするものの、読んでいて味わい深いとか、楽しいっていうようなものではありません。ともかく、真面目だなとは思うのですが、えてして真面目な人が笑いを取りに行こうとすると・・・
でも、その不器用さが魅力でもありんです、いえ、アッちゃんのことですが・・・
投稿元:
レビューを見る
「硝子のハンマー」コンビのシリーズ3作目。
密室トリックに焦点を当てた短編集で、まあ自分で解けるようなものでは無いので、読んでなるほどねって感じ。
投稿元:
レビューを見る
【自称・防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)榎本と、美人弁護士(実は天然!?)純子のコンビが、超絶トリックに挑む!貴志祐介にしか考えつけない、驚天動地の密室トリック4連発!密室ミステリの金字塔、ついに登場。 】
投稿元:
レビューを見る
犯罪者として疑われている鍵師の防災コンサルタントとボケ役の女性弁護士のコンビの密室ものが、いつのまにかシリーズ化されていた観があるが、短編集なので、物語として完結させるためにストーリー展開は、かなり強引。また、トリックありきで話を組み立てた観があることと、その肝心なトリック自体が、密室ものが語り尽くされた中での組み立てなので、ここでも強引、そのため、犯人の動機も特殊であり、密室のトリックさえ解き明かせば、おのずと犯人が特定されてしまうという展開となっている。したがって話が少々、無味乾燥的になるきらいがあるため、女性弁護士が閃きとしてボケをかますことで、鍵師と掛け合い漫才の体裁で味を加えている。特に最後の劇団物は、劇団員も含めてボケまくるので、ミステリーを通り越したコメディとなっているので、この辺りは作者としては新境地の感がある。軽く読むのであればお勧め。
投稿元:
レビューを見る
ここのところ新刊続きの貴志先生、最新刊。
「硝子のハンマー」「狐火の家」にも登場し、知らぬ間に「榎本・青砥シリーズ」とシリーズ化していたらしいそのシリーズの最新刊でもある。
内容は、密室に拘った短編ミステリが4本。
お決まりの殺人が起こり、それを榎本・青砥の二人が解決していく…。
と、まぁTHE王道なミステリ短編集でございます。
犯人は初めから明らかであるor分かっているため、本の楽しみ方としては、「この犯人が使った密室のトリックを解明すること」に尽きる。
気軽にサクッと読める、ジャンクフード…もといトラットリア的な作品。
(※貴志先生の作品は普通はリストランテ。)
…まぁ、貴志先生の知識量には足元にも及ばないんで、大筋は分かっても精緻にピタリと解明するのは無理ってもんなんだけど^▽^;
同じ大学出てるはずなのにどうしてこんなに知識の差があるの…?
実のところ、「硝子のハンマー」があまり好きではなかった私。
文章・構成・ストーリーテリング・語彙はいつもながら本当に圧巻なのだけど、肝心の「犯人」があまりにも突拍子もないところから出て来たモンだから、ちょっと肩透かしをくらったというか。
ミステリって、読みながら(そして作者の意図を探りながら)自分で犯人捜し&トリック解明をしていくのが楽しいものだと思ってるのよね。
だから「硝子の~」みたいに、それまで話にまるで関係なかった部分から犯人が忽然と出て来て、後半でその犯人のバックヤードを語る、ってのが、ちょっと合わなかったみたい。
榎本と青砥のキャラにも、そこまで惹かれなかったし。
蓋し、貴志先生はいわゆる「キャラもの」は向いていないと思う。
この御仁の知識や文章力をもってすれば、何もキャラ頼りのキャラものになんて仕立てる必要はないのだし、お話が圧倒的すぎてキャラはあくまで話の一要素、で済んでしまうから。
そんでもってわたしは貴志先生のそんな「まず話ありき」な作品が大好き。昨今のキャラに頼った厨二病患者向けの作品の氾濫には反吐が出る^^
なんてね☆
嘘ですキャラものも好きです…たぶん(笑)
そんなわけで、更に言えば「狐火の家」は未読だったりする。
今作は後述するように、ブクログさんが大変面白い企画をしてくださった+サイン会ということで買ってみた。
面白かったら「狐火~」も読もう、と思って。
結論から言えば、「狐火~」を読もうという気にはなった。
ので、それなりに楽しめた。
4本中、前半の2本は面白かったのだけど、後半2本がつまらなかった(←言った・笑)ため、総評は3点。
奇しくも「硝子の~」と同点。
うーん、やっぱり(笑)
貴志先生もきっと、こういう作品は息抜きで書かれているんでしょう。
「黒い家」(単行本)からもう10年以上も先生のファンをやっているからそう思う。
貴志先生の本領はやっぱり、まるで人類未踏の、未知かつ神秘驚異の(微)生物がうっそうと生い茂る密林の奥深くのように芳醇なその知識を遺憾なく発揮して、読者なんか置いてけぼり上等な勢いで長編を書いて欲しいな!��※例:「天使の囀り」「クリムゾンの迷宮」「新世界より」「ダークゾーン」)
次回作はぜひとも、がっつり重い長編を期待してます!
さて最後に。
この本については、ブクログさんが大変面白い企画をしてくださっていた。
それは、発売前に犯人とトリックを正解した人には貴志先生からプレゼントがあるよ~というもの。
まぁ…躍起になりましたよね(笑)
「答えは本で!」のとおり、企画の作品は本の2作目に同名「鍵のかかった部屋」として収録されている。
(※ちなみに犯人とトリックの一部は当たってた(ドヤッ)犯人は言わずもがな。トリックも、「初めから鍵はかかっていなかった」「気圧差の利用」は分かったのだけれど、紙テープの謎が解けませんでした…ガクッ)
とても面白い企画だったんで、ブクログさん、是非またやってください^▽^
投稿元:
レビューを見る
犯人がほぼ特定できているが、犯行現場の
密室状況により解決出来ていない事件を
「硝子のハンマー」の青砥&榎本コンビが
解き明かす、連作ミステリ集。
短篇と中篇の間くらいの長さの話が4本収録。
物理トリックだけに焦点を絞った、ある意味
非常に硬派な作品集だった。
(4本目の作品だけ、貴志作品としては異色かも)
私としては、ストーリー重視の貴志作品は
動機等の点で救いがないことが多いので
その辺のウェイトが軽めのこのシリーズは
気軽にロジックだけを楽しめて好き。
(スパイスとしての青砥推理も・・・それなりに)
トリックを解いていく過程もそれなりに論理的だし
密室を解いたから観念しろ、という状況証拠だけ
ではなく、どの場合も一応別の証拠があって
犯人に逃げ場をなくしているのも良いと思う。
なんとなく青砥の(推理の)バカっぷりに拍車が
かかっている気はするけど、このタイプの作品だと
ユーモア小説にして殺人という負の要素の印象を
軽減するのは常套だと思うから仕方ないか。
個人的に貴志作品は当たり外れが激しいけど
また新刊が出たら買うと思う。
投稿元:
レビューを見る
いわゆる密室ものの短編集。
表題作が一番面白かった。主人公二人の掛け合いがクスリとさせられます。
シリーズものって知らなかったので、過去の作品も読んでみたいと思います。
投稿元:
レビューを見る
基本的には読み始めの段階で犯人が誰なのかは分かるので、倒叙ミステリーと言える短篇集。
本作には密室で起こる4つの事件が収録されています。『犯人がどのようにして密室を作り上げたのか』--- 本作のテーマは、それに尽きます。
密室の謎を解き明かす防犯コンサルタントと弁護士のコンビ、榎本&純子のやり取りを考えると、決してシリアスなミステリーでは無いことが分かります。
密室のトリックについてはどれも派手さや斬新さはあるものの、地味ではあれ人間の心理を突いた『心理的密室』を好む自分には、特筆すべき目新しさは無かったように思う。
ただ。
『第一発見者が犯人だった場合、密室をこじ開けるのを躊躇する』
という一言は、得てして人の心理を突いているのでは…と思うのです。
投稿元:
レビューを見る
『硝子のハンマ』『狐火の家』の続編になるのかいな?
青砥弁護士と自称防犯コンサルタントの榎本の掛け合いが好きだな。
投稿元:
レビューを見る
いわゆる趣向を凝らした密室短編集。
密室を芸術的密室と科学的密室に分類するとしたら本作品はだいたい後者。
なるほどぉ、と思うのだがあまり感慨がない。
物語より仕掛けありきといった感じですね。
投稿元:
レビューを見る
素晴らしい論理とトリックで繰り出される
密室。
さすがです!
短編物が苦手なわたしには
のめりこみきれずだったようです。
投稿元:
レビューを見る
純粋にトリックの謎解きが楽しめる一冊。
青砥さんは恐ろしいほどの天然ボケになってたんだなあ。
ラストの「密室劇場」は、それまでの真面目なトリック暴きで疲れた頭をゆる~くほぐしてくれる。
「ダ・ヴィンチ」のインタビューによれば、この「土性骨」改め「ES&B」のメンバーの名前にネタふりがしてあるらしいのだが、残念ながらわからなかった。ロベルトとか須賀礼とかなにかあるんだろうなあとは思うんだが。
「狐火の家」を読み返そうと思った。
投稿元:
レビューを見る
内容(「BOOK」データベースより)
自称・防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)榎本と、美人弁護士(実は天然!?)純子のコンビが、超絶トリックに挑む!貴志祐介にしか考えつけない、驚天動地の密室トリック4連発!密室ミステリの金字塔、ついに登場。
投稿元:
レビューを見る
防犯コンサルタントシリーズの密室ミステリ短編集。どれをとっても不可思議で不可能に思える密室ばかり。だけど……この犯人たちって、あえて難解な密室を作ることで自分自身の首を絞めちゃってるんですね(笑)。
お気に入りは表題作「鍵のかかった部屋」。このトリックは……思いつけません。苦手な分野でした。でも説明は分かりやすくて、「なるほど!」と感服。
「密室劇場」はなんともコミカルな読み口で、一風変わった印象だけど。これもしっかり真面目なトリック。まあトリックとしては真面目だけど……やっぱり笑えますね。
投稿元:
レビューを見る
硝子のハンマーから続くシリーズ第三弾。
防犯コンサルタントの榎木と、弁護士の純子がひたすら密室のトリックを解いて行く。トリックの解明がメインなので、ストーリー重視をする人にはあまりオススメは出来ないかも。