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記者魂 みんなのレビュー
- ブルース・ダシルヴァ (著), 青木 千鶴 (訳)
- 税込価格:1,760円(16pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2011/07/08
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紙の本
はっきり言って、自分で動こうとしない記者に対して、〈記者魂〉っていうタイトルはないでしょ、って思っていたら、原題はROGUE ISLAND 。訳者あとがきによれば「ならずものの島」。魅力的ではないけれど内容には忠実かな・・・
2012/03/26 20:04
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞記事を利用したように見せかけた装画? がとても新鮮。文字の置き方もだけれど、汚れの入れかたがとても上手で、さすが水戸部功だなと感心した次第。よほどポケミスとの相性がいいのでしょう、どのカバーも水準以上、というか出来が良すぎて目移りがするほどです。編集者の理解もあるのでしょうが立派。
で、帯の言葉は
*
どんなに危険にさられようが突き止めるべき真実がある!
アメリカ探偵作家クラブ賞
最優秀新人賞受賞作
〈ポケミス新世代作家〉連続刊行第5弾
*
となっています。ちなみに、タイトルはそれなりに格好いいのですが、小説を読み始めると主人公のマリガンに、果たして〈記者魂〉があるのか疑問になってきます。なぜかといえば、この男、何事も自分の気が向かなければやろうとしません。簡単にできることでもやらない。そして何より、事件の追及をそっちのけでテレビの野球放送ばかりみています。
その間に放火魔が町を闊歩していようが、知り合いの女性が一緒に犯人捜しをしようと言おうが、無視します。プロヴィデンス地区初の女性消防隊長で、マリガンの幼馴染ロージー・モレッリは長身の美女で一度マリガンと関係したことがあり、その後も友人としていい関係が続いている、その元カノが殺されても、それを放置し事件を放り投げ何カ月も自堕落な生活を過ごします。
カバーには
*
幼馴染の消防士も命を落とした。絶対に犯人を捕まえてやると意気込み、取材に奔走するマリガン。
*
と書かれていますが、大嘘。何もしません。確かに、最終的には事件は解決します。しかしそれが遅れた全て原因は、マリガンが事件に本気でとりかからなかったことにあります。しかし、それについてマリガンにそれを本気で反省している気配が全くありません。読んでいて、ふざけているのか、と怒りすら覚えます。
マンホールの調査についても、他人任せにする理由がわかりません。一旦は自分で調べたうえで、他人に渡してもいい、と判断するならともかく、自分が依頼された仕事でも、やるやるといいながら、サボる。これで記者魂もないでしょう。ちなみに原題は ROGUE ISLAND 。訳者あとがきによれば「ならずものの島」の意。これなら理解できます。マリガンはヤクザ以下のクズでしょう。
とはいえ、面白くないわけではありません。特に楽しかったのは、連続放火事件が収まらず、失意の底にあるロージーと一緒にマリガンがボストン・レッドソックスとデトロイト・タイガース戦を見に行った時のことです。マツザカが投げて勝った、というのは日本人向けの愛嬌としても、試合後に彼女が選手専用の駐車場に行って、そこで大勢のファンを押しのけてマニー・ラミレスに手を振り、ラミレスが長身の美女の存在に気づいて彼女の元に寄ってきて握手をするシーン、これはいいなと思います。
それとマリガンの周囲の女性がいいです。ロージーもいいのですが、マリガンの同僚で法廷番記者のヴェロニカ・タンがいいです。27歳の美女で何度も非公開の大陪審員の証言をスクープする才女でもある彼女の存在は大きいです。彼女やロージーのことを考えると、マリガンの妻であるドーカスが、夫が様々な女性と性的関係を持ったと思い込み、マリガンを非難し続け、彼の私物や愛犬を自分のものとして渡そうとしないのも肯けます。
女性では、もう一人、グロリア・コスタがいます。現像室勤務のグラマラスな写真部員で、何となくメガネっ子を想像しますが、これがまたセクシーな美女、年齢も若いはずですが明記されてはいないのは片手落ち。で、彼女は自分で撮影するカメラマンになることを望んで、事件を追いかけ、夜の町を巡回するなど記者顔負けの活動もする。彼女もマリガンのことが好きですが、ヴェロニカのことを気にして積極的には動きません。
こんな美女たちに囲まれながら、テレビの野球以外に興味を示さない新聞記者っていうのは、ないだろ、って思います。逆に、張り切り過ぎて面白いのがドミニク(ウーシュ)・ゼリッリです。マリガンが客として利用する違法賭博の胴元で、連続放火事件に対して自警団を組織し、ヤクザまがいの連中を引き連れ、夜の街の警備にあたるのですが、その単純さが好ましい。
そしてエドワード・アントニー・四世がいます。新聞社社主の息子で、このての人物は日本のミステリによく登場しますが、海外の小説では珍しいキャラではないでしょうか。コロンビア大学を卒業し、現場記者から実績を積みたいと希望してマリガンの下に配属されたので、25歳前後でしょうか。マリガンからは子ども扱いされ、地味な仕事を押し付けられますが、めげずに取材を続けます。お金持ちらしい鷹揚さと、新聞の現状を認識するしっかりした現状認識を持つ若者で、ロージ、ウーシュとならんで好感度が高い登場人物です。
一向に収まる気配をみせない放火事件に、彼らがどう取り組み、解決していくのか。マリガンは置いておいて、周囲の人の頑張りを楽しみましょう。マクベインが見出した、というのも肯けること請け合いです。最後は、カバー後の内容紹介のコピー。
マリガンはしがない地方紙記者。
生まれ育った町で起こる事件を、
自分流を貫きながら追いつづけ
てきた。ある日、古い住宅ひし
めく一画で連続放火事件が発生。
子どもたちや、幼馴染の消防士
も命を落とした。絶対に犯人を
捕まえてやると意気込み、取材
に奔走するマリガン。しかし、
ただの放火魔の犯行とは思えぬ
状況になってきた。この故郷で、
いったい何が起きているのか?
身の危険を感じつつもマリガン
は執念の取材を続けるが……。
エド・マクベインが見出した新
鋭の話題作! アメリカ探偵作
家クラブ賞最優秀新人賞受賞。
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