紙の本
「ヘンな虫」にも充分な教訓。
2012/10/04 15:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「珍虫」とか「わっ!」などの表紙の文字から判断するよりはずっとまじめで高度な内容です。
「この虫はナニ?」とクイズの写真で始まる、カラー写真が豊富な虫の本ではありますが「なぜ派手なものが多いか」「どんな擬態があるか」「構造色とは」とかも難しくはないがきちんと説明されています。最後の方になると「多様性の重要さ」とか「命の大切さ」とかまでも。
ヘンなたとえかもしれませんが、「面白いキグルミのショー?」と子供を連れて出かけたらかなり教育的で、子供は「ヘン!」と楽しんでいても連れて行った大人は「なるほど・・」と勉強して帰った。そんな感じの本でした。
「探検昆虫学者」という、新しい昆虫を探す職業の著者。コスタリカという国(かなり詳しい説明もあります)にはまだまだ未知の昆虫が多いことを、著者自身の研究内容も含めて豊富な写真で説明してくれます。
大きな虫、派手な虫・・・多彩な昆虫がいることの面白さもさることながら、自分の皮膚に寄生したハエの幼虫(ウジですね)を「成虫が欲しい」と殺さないで飼いつづけてみたり、と著者自身の研究生活もなかなか興味深いです。
そして、たくさんの虫たちや植物がさまざまに関係しあっていることが著者の体験として熱のこもった言葉で書かれます。外来種ばかりが増え、関係が壊れてしまった例としてハワイの島々の話は「緑が濃いけれども、必要な循環をしていない」という警告になっています。
それそれの生きものが大きな安定状態の一部となっている。いろんな虫を紹介しても、「ヘンな虫」と騒ぐだけで終わらないでほしい。そういうメッセージが流れてくる本です。
「ヘンな虫」にも充分な教訓。
だから、「もうちょっと違うタイトルにならなかったかしら」とも思います。でも、このタイトルでひきつけられて「よく考えてみよう」と思ってほしいということなのかもしれませんね。どっちなんでしょう。
紙の本
Nice Book
2016/07/15 00:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koz - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は友人です。
内容は、とても良く出来上がっています。
昆虫の存在価値を改めて教えてくれる1冊です。
投稿元:
レビューを見る
小さなものは、人の目に入りにくい。
神様がこの虫達に完璧な肢体を持たせ、
ミニチュアの様に小さくしてしまったわけ、とは…
人から(外敵から)守りたいから?
それとも、
目を凝らしてものを見るように、と言う教え?
『害虫』と呼ばれ、
人から嫌われている小さな虫達の側になって
見た世界がとても新鮮でした。
投稿元:
レビューを見る
以前、NHKの番組でツノゼミの研究者として紹介されていたので、それだけのオタクかと思っていた。
でも、これを読んで、昆虫全般に広く深い知識と採取・飼育の長い経験、そして、自然の多様性維持への強い思いとそのための活動を行っている素晴らしい方であることがわかった。
僕は動物の本をかなり読んでいる方だと思うが、ここに出てきた寄生の話には仰天。寄主の判断力まで占有して自分のための巣を作らせたり、繭を守らせたり、そして、最後にその寄主の体液を全部吸い取って殺してしまう。もし、人が同じことをやったら凶悪罪人にあたるようなことをやって種を維持している昆虫がいるとは。
また、本人のお腹の皮で寄生ハエの幼虫を半年寄生させていた話にも仰天!
自分の採取・飼育・調査・発表などの活動の様を具体的に説明しているので、著者の生活=研究の実態がわかって興味深い。
ここ数年読んだ動物関係書でベスト!
投稿元:
レビューを見る
不思議で変な虫をたくさん見たい人にオススメ。 表紙からして変な虫しかいない。虫かどうかもよく分からないものもたくさん。 小説を読みなれている人からしたら、本文中に「(汗)」や口語と文語が混じっていて読みにくく感じるかもしれない。 変な生き物を写真で見ながらフィールドワークの話を知りたい人は楽しめると思う。
投稿元:
レビューを見る
ドぎつい原色が鮮やかなガの幼虫、植物の新芽や枯れ枝、水の滴やイモムシの糞の形をしたツノを持つツノゼミ、プラチナやシルバーに輝くコガネムシ、A4サイズの紙の大きさほどあるガ、虫こぶ、寄生バチその他。世にも珍しいコスタリカの希少な虫がフルカラー写真で満載に紹介された一冊。
載っている種類が多いので一種あたりに語られる生態はそれほど多くはないが、あまりにも異形すぎる、絶対に今までみたことがない形をした虫たちのインパクトは絶大。めちゃめちゃ気持ち悪くて直視できない感覚と、見たことがない生き物をじっくりとみたい好奇心がないまぜになって、ページをめくる手が動かしにくい。ただフルカラーとはいえ写真だからまだなんとかなったが、これが動画だったら途中で諦めていたかもしれない。
希少なハエを標本にするため、自分の皮膚に寄生した幼虫を育てるぐらいの特性がないと探検昆虫学者にはなれないのか。自宅に居ながらしてその業績の一端に触れられる書籍に感謝。
投稿元:
レビューを見る
先日「ダーウィンが来た」で紹介されてたコスタリカで活動する日本人昆虫学者。思いがけず著書を見つけたので楽しみに読む。子供向けらしく語り口は優しいが、大人ももちろん楽しい一冊だった。写真を見ているだけでも楽しいけれど、昆虫を通して見える自然の仕組みや著者の考えも興味深い。あまり計算のない素朴な語り口も好感が持てる。外来生物はみんな殺しちゃえ、という「生物多様性」はなんか胡散臭い、と思っていたけれど、現場からの報告は説得力があるな。外来生物の増加と生態系の撹乱には、著者が一翼を担っているらしい天敵の導入が一つの解かもしれない。ただ、天敵の導入そのものが、外来生物の導入にほかならないという意味では、いたちごっこのような気もするんだけれど。
投稿元:
レビューを見る
虫のことなんて興味なかったけど「ヘンな」に惹かれて借りました。擬態についてや寄生バチについて、模様や大きさについてなど興味深いものがありました。
投稿元:
レビューを見る
著者はコスタリカ在住の探検昆虫学者の西田賢司さん。コスタリカは、熱帯雨林、熱帯乾燥林、熱帯湿潤林、熱帯雲霧林、高山草原があるところで、昆虫や鳥の種類が非常に多い所だ。著者も新種の昆虫をばんばん発見している。
①コスタリカのヘンナ虫たちーいやあ、凄い。想像もつかないような変な形で、けばい色の昆虫が写真と文で詳しく解説されている。異常にでかいやつやメタリックなやつもいるし、擬態や寄生の様相も凄まじい。
②虫こぶの未知なる世界ー著者の専門部門。意外と虫こぶというのは多いらしいが、まだまだ研究途上で、新種がどれだけいる事やらという。8割がた、寄生されているというのも驚く。
③バックマンと呼ばれる探検昆虫学者ー著者のフィールドワークや研究の様子を詳細に述べているが、猛獣、毒を持つ動物、寄生虫など非常に大変な環境にいるらしい。ヒトヒフバエの幼虫を自分の体で育てたという話など吃驚仰天する。カメラや研究論文の話も興味深い。
④昆虫たちが教えてくれる未来の地球ー地球は昆虫の惑星なのだ。生き物にはみんな役割がある。そのバランスを崩さずに共存していくことが肝要と訴える。
この人、とにかくすごい人だ。文章にユーモアがあるし、内容もべら棒に面白い。