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紙の本

日米戦があったからこそ日本に深く関わり、研究者ドナルド・キーンは生まれた。日本の文学や伝統を深く理解し、日本的感覚や美質に心酔し、それらを次世代に引き継いでいきたいと永住を決めたキーン氏が、長年の友を聞き手に「戦争体験」と「日本人」を語る。

2011/09/05 18:38

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「3月11日の東日本大震災を受けて」「震災で傷ついた日本を励ますため」というように、89歳になった日本文学研究者ドナルド・キーン氏の日本永住への決意が報道され、話題を呼んでいる。
 しかし、本書のための対談が行われた2010年11月の時点ですでに、キーン氏は30年来の友人である小池政行氏に、コロンビア大学の授業は2011年を最後に日本へ移り、骨を埋めたいと思っている旨を打ち明けている。

 日本文学に心酔しているなら自然なこと、親日家のヒューマニズムとして東日本大震災に心寄せたのは納得できることと思えるものの、それでもなぜ90歳にもなろうという米国人学者が、ニューヨークの住まいを引き払い、この国で死のうと決めたのか。そこには、深い奥がある気がして、分け入ってみたく、この新刊を読み始める。

 読んで理解できたのは、強く心に残る体験のいくつかが積み重なり、人はそれによって人生を歩んで行き、そして人生の幕引きのあり方についても思い描くようになるのだという、考えてみれば当たり前のことだ。
 だが、200ページちょっとのインタビューで明らかにされていくキーン氏の体験と考えは実に数奇で独特なものであり、「生きざま・死にざま」を見つめた日本の歌詠みや物書きたちの姿、そしてその作品へと重なっていく。
 日本文学や日本という国に殉教を決めた聖人のように、語られる体験は伝説めいている。太平洋戦争勃発の前年、新古書を売る書店で、分厚くて安かったから『源氏物語』の英訳本を買った物語も、戦争へとひた走る先進国の軍靴の音に、耽美な世界へひたることで耳をふさいだ物語も、日米戦の語学将校としてアッツ島に上陸、ハワイの収容所では日本人捕虜を尋問し、ある日、ベートーベンが好きだという捕虜のため、シャワー室で「英雄」を聞かせたという物語も……。

 3回にわたって行われた対談の2回目の最後で、永住の心づもりは吐露されている。だが、書かれたもの、活字になったもののうち少なからずがそうであるように、事実はいつも正確に記録されるばかりとは限らない。
 キーン氏が徐々に移住への気持ちを固めていく間に、それは何となくでも親しい友の小池氏には伝わっていたのかもしれない。そこで、決意に至った境地を、キーン氏が日本に深く結びつけられた日米戦の回想から語ってもらおうと企画は成り立ったのであろうか。

 日本人に浸透していた虜囚になることの恥辱、日米の兵士の手紙や日記についての比較など、戦時の一般的価値観を支えていたものに対する分析は、「日本人らしさ」なるものがここ数十年でどう変わり果てたか、しかし何は残されているか等を考えるのに大変興味深い。
 また、日本の作家たちの開戦に対する意外な反応、京都を原爆から救った陸軍長官、三島由紀夫の自決の意図など、日本文学の研究者ならではのトピックスと見解に、「そうだったのか」と発見が沢山あった。

 日米戦があったからこそ日本に深く関わり、研究者ドナルド・キーンが生まれ、戦後という長い歳月は流れた。
 私たち一般的な日本人より、はるかに詳しく日本の文学や伝統を知り、はるかに深く日本的な感覚や美質に心酔し、それらを次の世代に引き継いでいくべきだという熱意を持つ。そのように生きようというキーン氏に、過去、数々の日本人が強い印象と体験をもたらした。それが、彼の学究や明日を支えてきたのである。
 同じようにして、この本の強い印象と読書体験は、読者の意思と、それが向かう明日を、影になり日向になって支えてくれると思う。

 
 

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2011/10/30 00:06

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2012/03/08 13:54

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2018/02/22 21:32

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2021/04/08 22:49

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