投稿元:
レビューを見る
児童文学的な要素と、閉ざされた山荘のテーマ的なミステリーが混在した作品。
ファンタジーの要素を含みつつ、ちゃんとミステリーとして成り立っている点はおもしろいと思う反面、純粋にミステリーとして見るには、少々登場人物の掘り下げが足りないような気もしました。モーリスの設定が設定なだけに、人の死とは切り離せないが故の物語の構成だとは思いますが。
投稿元:
レビューを見る
内容紹介でミステリーと紹介されていたことと、タイトルに何か惹かれるものを感じて購入。ただ、考えていたようなミステリーではなかった。確かに殺人は起きるけど、それを解くことがメインではなく、起こった死を通して少女たちが成長する過程がメイン。
陸の孤島、殺人!といった期待感で読み始めてしまったので読み終わった後は少し残念だったけど、時間を空けてから読みなおせば少女達のひと夏の思い出として読めるかも。
読後のノスタルジックな感じはとてもいいので。
投稿元:
レビューを見る
猫足のベンチソファで静かに本を読む少女と
彼女にもたれてまどろむお人形のような美少女。
その足もとには意味ありげな鍵が転がっていて。。。
セピア調の色彩で描かれた表紙絵がとても綺麗で
思わず手に取ってしまった本。
途中に挿まれる2枚の挿画も、
カラーでぜひ見てみたかったと思うくらい、雰囲気があって素敵です。
避暑地の別荘で、執事や家政婦と共に過ごす10歳の芽理沙と
その家庭教師として雇われた17歳の高校生 信乃、
そして芽理沙が納屋に匿う、「人くい鬼」モーリスの、ひと夏の物語。
これは!という家庭教師を選び出すためにトラップを仕掛け
相手が思いがけない反応を見せると
「笑ってもいいですか?」と冷静に問いかける
ビスクドールのような美少女、芽理沙と
命が尽きた動物や人間の「残留思念」を食べて生きているのだけれど
けっしてそのために生き物の命を奪うことはしない
どこか悲しげな「人くい鬼」モーリスが、とても魅力的だ。
読み始めてまもなくの、家庭教師の面接シーンに
大好きなハインラインの『夏への扉』から
猫のユーモアについて書かれた部分が引用され、
そのすぐ後のモーリスの登場シーンには
またまた大好きなモーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』、
終盤にはマリー・ホール・エッツの『もりのなか』と
出てくる本の顔ぶれだけでも、うれしくなってしまう♪
途中に起こる殺人事件の謎解きは、
ミステリファンにはたぶん物足りなく感じられるでしょうが
祖父、母、芽理沙と3代にわたって愛されてきたモーリスが
芽理沙の危機に初めて見せた情愛の深さと
現実と夢のはざまにたゆたうように生きていた芽理沙が
信乃との出会いや人の死、モーリスとの別れの後に見せる成長に
心洗われる、「魔法にかかったようなあの夏」の物語です。
投稿元:
レビューを見る
死を迎えたばかりの生き物のエネルギーを摂取し体を消滅させる人くい鬼のモーリス。大人にはその姿が見えず、自ら生き物に危害を加えることもない。そんなモーリスを匿う少女とその家庭教師を担うことになった女子高生のひと夏の経験。
いわゆる「嵐の山荘」と「死体消失」、そこに人くい鬼というファクターを加えることによって見え方ががらりと変わるのが面白いですね。しかしそれも全てモーリスと少女たちの関わりを示すための要素に過ぎないのが、この物語の肝なのでしょう。