投稿元:
レビューを見る
まず、妖怪を扱ったミステリとして、レベルが高い。妖怪と事件の謎がうまく結びついていて、事件も興味を引くものだし、解決も腑に落ちる。
また妖怪研究としても、これまでの説を踏まえつつ、著者の本領である自然科学の知識を駆使して、一歩進んだ推測がなされている。
ネックなのは事件の真相が明らかになっても、犯人が断罪されないところ。しかしこれは探偵役が「観察者」と名乗っている以上、仕方ないのか。
シリーズ化して、観察者が犯人としっかり対峙しなくてはならないときが来ることを願う。
投稿元:
レビューを見る
妖怪テーマだけど、きちんと動機やトリックを解明していて面白かった。
でも、天の狗の動機というか、目的はちょっと納得いかない。
あの目的なら、違うところの方がいいんじゃないかなあ。
投稿元:
レビューを見る
動物学&民俗学の少し楽しい知識も学べるミステリ短編集。どの事件にも怪奇の気配がして、非常に好みです。その解決は非常に現実的ではあるのだけれど、どこかしら一抹の恐怖と不安感が残される結末もまた、非常に好みど真ん中。
お気に入りは「洞の鬼」。もう舞台と道具立ての魅力だけでもお腹いっぱいなんですが。そこで起こる事件とその解決がまた凄い。結末の凄まじさも圧倒的です。
投稿元:
レビューを見る
江戸時代物かと思ったらしっかり現代物。
妖怪・・・。昔のひとは理解できない恐怖を理解しようとして生み出された物。
結局本当に怖いのは人だというようなお話。
とても分かりやすいし、猫田さんと鳶山さんの会話が面白い。
投稿元:
レビューを見る
“「なんだ、鳶さんが見たのはカラスだったんだ」
「違うよ。どうしてホシガラスが天狗なんだよ」
「だっていま烏天狗の話をしていたじゃない。日本の天狗のモデルとなった動物はカラスなんでしょ?それにホシガラスってなによ。わたしはただカラスと言っただけで......」
わたしがまじめに説明していると、変人生き物オタクが声を荒げて遮る。
「キミは壊滅的に愚か者だな。世界中探したとしても、カラスという種名の鳥なんかいない。カラスは科あるいは属の単位を指すグループの名称だ。おそらくキミはCorvus属のハシボソガラスやハシブトガラスを念頭に置いて発言したんだろうが、ヤツらは原則的にこんな高地には生息していない。最近ではたまに山小屋から出る生ゴミを目当てにやってくるヤツもいるらしいけどね。高地に適応したのはNucifraga属のホシガラスだ。だからボクは丁寧にキミのことばを補足して、ホシガラスと言い換えてあげたわけじゃないか」
非難が耳に痛い。いったいどうすればよいのか。ことば足らずの発言をフォローしていただき、ありがとうございました。と礼を述べるべきなのか?わたしの困惑をよそに、鳶さんお叱責が加速していく。”
雰囲気はQEDっぽい?
変人が蘊蓄を垂れ流しつつ事件を解決する。
そしてちょっとぞっとするような結末。
“鳶山久志という人物は生き物全般に興味を示すが、例外的にヒトという生命体には無関心を装っている。人間嫌いかというとそうでもないようで、他人から相談を受けると親身になって応えてくれようとするし、孤独が好きとうそぶきつつも知人からの誘いを待っているようなところがある。単に他人との距離の取り方がへたくそなだけかもしれない。不惑の自立した男としてそれはいかがなものだろうと思わなくもないが。
人付き合いは得意でないとしても、他の生物とはすぐに仲良くなるのが鳶さんだ。目先に生き物がいれば周囲が見えなくなるのは彼の本能のようなものらしい。”
投稿元:
レビューを見る
河童、天狗、鬼など、犯人は妖怪かと思われる不可能状況で起こった犯罪を”観察者”鳶山久志が生物学の知識と卓越した洞察力で暴く短編集。
妖怪といってもおどろおどろしい雰囲気はあまりなく、土着的な怪異と自然科学的な解明がしっくり融合している。
ベストはなんといっても、トリックもぶっ飛んでいるが動機もイッちゃってる「天の狗」。
投稿元:
レビューを見る
河童に天狗に鬼。この世界観は周りに溢れてはいるので、
なんとなく聴き覚えてる事象はあるけど
観察者の世界観は面白く読んだ。
謎解きの後に、そのままだとあなたも殺されちゃいませんか?
なんて心配してしまうような余韻の中、
天の狗の犯人が自分だったら跡形も残さないように頑張るし、
洞の鬼の後味の悪さは心に残るくらいじゃすまないうえに、
それを言われちゃあ一生もんでしょうな。
投稿元:
レビューを見る
河童、天狗、鬼とモチーフが統一されていて面白かったけど、最後に読んだ「洞の鬼」のイヤーな読後感が…。やっぱり実は真犯人が・・・、っていう話は後味が少々悪いね。鳶さんのキャラは結構好き。猫田さんといい感じになることは…ないのだろうかね。
投稿元:
レビューを見る
シリーズ6作目。
「眼の池」「天の狗」「洞の鬼」3篇からなるホラーテイストの短編集。
“人間を水中に引きずり込む河童”
“空を飛び気まぐれに人を殺す天狗”
“異形の姿ゆえに恐れられ退治される鬼”
を題材にして、生物に関する知識を駆使しながら怪奇事件の謎を紐解いていく。
どの話も後味が悪く不気味な余韻を残して終わる。
何かに憑かれてしまった“人間”の、恐怖と悲哀を感じる作品。
投稿元:
レビューを見る
猫田夏海は鬼払いの秘祭の取材で、鳶山久志らとともに瀬戸内の悪餌島を訪れた。その夜、神社で神事の準備をしていた女性が宝物の刀で惨殺され…。「洞の鬼」ほか全3編を収録。
主人公たちが動植物に詳しいという設定のためか、薀蓄が多すぎて辟易とした。作品のおどろおどろしい雰囲気は悪くないのだけれど…。
(D)
投稿元:
レビューを見る
怪異な事件が起こり、博学で人嫌いで変人な鳶氏が解説してくれるという京極夏彦系ミステリー。
骨格は面白げなんだけど、探偵鳶氏の語り口が眩惑的というより人の話をこれっぽっちも聞いてないだけ、というくらい脈絡なく飛んで無理やり本筋へ繋ぐのであんまりスマートな印象を受けないというか。頑固な変人で付き合うの大変そう、というまあ話し手の解説どおりではあるのだけど普通は読者にとってはそれより魅力的に映るはず(…だよね?)。
あと短編という情報量の限界もあって、鳶氏の持つ知識と目で見た事実だけで隠された真相にまっすぐ辿り着かせるにはかなり頑張らないと作為を消すのが難しい。何を根拠に何を得て何を削ったのかの経緯が足りなくて、やや御都合感が見えるのが残念。