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謎がある、犯罪もある。解決に向かおうとする。だから、これはれっきとしたミステリには違いない。
しかしそれ以上に、孤独についての物語、と言えるだろう。
「ミスティック・リバー」を彷彿とさせるなあ…などとも思っていたら、最後の謝辞にデニスル・ヘインの名も。
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読み終えたとき『人生は物語である』---という言葉を、思った。たった四半世紀に及ぶ、たった2人の人生の物語に、いつまで経っても消えない生まれ育った家の匂いのような感動を覚えました。
少年時代をともに過ごし、親友同士だったラリーとサイラス。彼らが互いに訣別したのもまた、少年時代のことでした。
そんな2人が、少女失踪事件により再会を果たす所から、物語は大きく動き始めます。
かつての約束を忠実に守ることで嫌疑をかけられ続け、孤独と後悔の中で生きてきたラリー。
凶弾に倒れながらも、自分を撃った人間を許そうとするのが、ラリーという人間なのです。
物語のラスト。ラリーの窮地を救ったのは、かつて訣別をした一人の親友でした。
ここでのサイラスの立ち回りの描写は、圧巻の迫力です。
現在と過去を、ラリーとサイラス2人の視点により的確に結びつけ、全ての根源的事象といえる過去のある一点に読者の意識を向けさせる展開の仕方に、筆者トム・フランクリンの文才と高い構成センスを感じました。
読了後、この物語を締めくくる空気と余韻は、とても心地のよいものでした。懐かしい友人に会いたくなったのは、私だけでしょうか。
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読書好きで内気な白人少年ラリーと野球好きで大人びた黒人少年サイラス。
過去友情を育み、とある事件きっかけに疎遠になった二人の人生が、少女失踪事件をきっかけにふたたび交わり始める。
いや、痛い痛い。
切ないと言うより心が痛む話だよ。
四半世紀に渡り犯してもいない罪で周囲から孤立してきたラリー。
冒頭で撃たれて意識不明になるわ、その後続いて描かれる少年時代のエピでも碌なことはないわで、読んでいて辛いの何の。
これでもかと言うぐらいその孤独感を煽っておきながらのラスト。
一見救いがあるように見せつつも、余計にラリーの辛さを強調しているようにしか思えない。
長年自分を疎んできた周囲が、今更手のひら返したところでラリーの孤独は本当に解消されるのだろうか?
うーん。
普通の小説ならラリーとサイラスは人種が逆になっているんじゃないかと思う。
その辺もまたラリーの痛みをひしと感じる一因になっているんだろうなあ。
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CL 2012.4.1-2012.4.11
ミステリとしてはたいしたことはないけど、
余韻の残る作品。
少年時代、だねぇ。
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人種の壁を背景にした南部アメリカが舞台のほろにが友情ストーリー。
序盤が入り込めなくて辛く感じた。
が、物語が見えてくれば、ラリーに沁みついた悲哀、サイラスの抱える罪悪感と、2人が年期に直面した人種の壁をめぐる微妙な葛藤が読みごたえを与えてくれる。必ずしも「黒人=虐げられる対象」ではないところも興味深い。
物語の発端となっている事件自体はご都合主義的にとってつけられた展開で幕を閉じるが、要するにそこは推しのポイントではなく、過去の事件に端を発するラリーとサイラス、2人の心理をめぐる展開が読みどころと感じた。
■このミス2012海外8位
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読書を愛する気弱で内気な白人のラリーと、活発で大人びた黒人のサイラス。少女の失踪事件を軸に、この二人の人生が交錯していきます。1970年代のミシシッピ州の風土や人種問題を背景に、サスペンスを盛り込んだヒューマンドラマになっていました。
25年前の少女失踪の容疑をかけられたラリーの人生は、街の人々から疑われ、虐げられ続けた孤独なものです。周囲からの冷たい視線や仕打ちは残酷なものですが、それ以上に、その状況を甘んじて受け入れ、孤独に慣れ親しんでしまうラリーの弱さが悲しい。
対して、活発で明るく、現在は治安官として活躍するサイラスも、過去から目を逸らし続けて自分の弱さを見ないように生きている、これまた悲しい男です。
周囲の状況にとことん受身なラリーと、貧しい境遇でたくましさを培ったサイラスという対照的な二人ですが、孤独と弱さを共有しています。
全てが明らかになったラストで、ラリーがこれまでの人々の仕打ちを詰るわけでもなく、サイラスを受け入れようとしているのが、ラリーのこれまでの孤独を表しているようで、なんだか悲しかったです。かつて自分を見捨てた男にも関わらず、お見舞いにきてくれることに、戸惑いつつ喜んでいる姿も切ない。
ぎくしゃくとしていて、しかし大きな希望を感じるラストは心地良いものでした。
もらったコートに袖を通す母親の描写が一番痛々しかったです。
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「BOOK」データベースより
ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れる。それから25年後。自動車整備士となったラリーは、少女失踪事件に関与したのではないかと周囲に疑われながら、孤独に暮らす。そして、大学野球で活躍したサイラスは治安官となった。だが、町で起きた新たな失踪事件が、すべてを変えた。過去から目を背けて生きてきたふたりの運命は、いやおうなく絡まりあう―。
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素晴らしい余韻をもたらしてくれるミステリです。
二人の青年の人生が少女の失踪事件を機に離れ、交わるというストーリー。
ただ、私には嫌いな形式のミステリです。
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胸に染みる小説。
暗くて辛い話だし、もっと悲惨な展開になる可能性もあったと思う。「甘いよ~」と言うひともいるかもしれない。
それでも、わたしはこの終わり方が好き。
読後感もいいです。
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題名になっている「ねじれた文字」の由来となっているミシシッピという土地が生み出した物語。出口のないような濃密な空気感に包み込まれています。その息苦しさは白人と黒人、ふたりの少年の運命にも複雑に絡みついていきます。そして、悲惨な事件が。果てしない孤独を受け止める悲しみ、頑なに過去から目をそらす悲しみが重なり合いながら、しかし、救いのラストへ。アメリカ南部ならではのストーリーだとは思いますが、本と野球、少年たちの心は普遍的だとおもいました。
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2012.03.08. ミステリというよりは、友情物語のような色が濃い。シンプルに語られる事件と、みずみずしく描かれた少年時代。
2011.11. BSの本の紹介番組で見て。ミステリ、今年は全然読めてないぞー…。
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このミスでもランクインしていたし、ミステリの範疇に入るのだろうが、読みどころはそこではない。米南部ものとして秀逸であり、それ以上に「孤独」を描いた小説として胸に迫る。
ティーンエイジャーの頃少女を殺した疑いをかけられたまま、四十一歳まで一人で生きてきたラリー・オット。その生活のディテールが冒頭で語られる。序盤はなかなか物語に乗れなかったが、次第に引き込まれていって途中で再度冒頭を読み返し、悲哀が胸に広がった。
ヒーローは登場しない。気の利いた会話のやりとりがあるわけでもない。かっこいい女性は出てくるけどこれ見よがしではない。「アメリカ探偵作家クラブ賞」と聞いて思い浮かべるツボをほとんどはずして、しかし、しみじみ読ませる佳品になっていると思った。
さりげなく語られる周辺人物達もステロタイプではなくリアリティがあり、血が通っていると感じられる。著者の長編は日本初紹介だそうだ。他のも是非読みたいと思う。
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ミステリーと言うより、ある男の悲劇、と言って良いだろう。余りにも不憫な描写が多く、後味悪い感じなのか、と身構えて読み進めていったが、思ったより腑が落ちる結末だったと思う。だが25年もこの仕打ちは酷過ぎる。そして、やっぱり私は海外文学になると、途端に読み進める速度が落ちてしまう。苦手なのだろうか・・・。
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土の匂いが立ち込めるアメリカの田舎での黒人と白人の心のふれあいがリリカルに描かれていて、ラストはせつない。
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親友同士だった二人の少年。
長じて疎遠となった二人は、ある事件を機に運命の再会をとげる――
ホラー小説を愛する内気なラリー(白人)と、
野球好きでまわりの子どもよりどこか大人びたサイラス(黒人)。
ふたりの少年が育んだ友情は、ある出来事で喪われてしまう。
そして25年後―
まるで周囲の環境ががらりと一変した彼らが運命の再会を果たし…
というお話。
物語は中年のラリーが何者かに襲われ、サイラスがその事件を担当することになります。
主に昔の回想をラリーの視点で、現在の事件をサイラスの視点で綴られるのですが、
衝撃の展開ってわけでもなくミステリの要素はあるものの、青春小説でしょう。
特にラリーの方に感情移入したために孤独感を味わいました。
差別と偏見は過去も未来も在り続けるのでしょうが、この二人ならば。
そう思わせる作品でした。