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評価は3としたが実際は2.8といったところに感じた。
親の威光,殉死に苦しみもがきながら生き,なおそういった親に恥じぬことを期待,強要されることに反発する主人公の様子がありありと書かれていた。
どことなく,人間失格,と似た雰囲気を感じた。
本質的な部分では世間から見て尊敬に値する価値ある死を遂げた父の後,到底その息子とは思えぬほど堕落した主人公の葛藤であったり実に人間の人間らしい醜さの部分であるという点では,人間失格,と微妙に違う気もするが大凡は似通っていると思う。
全体としてあまり明るいテーマではないし,ところどころわかりにくい表現であったり,蛇足に思われるような部分であったりはあるのだが(私の理解が足りていないだけかもしれない。例えば韓国女性とのやり取りであったり)1度はこの本を読み,人は何を頼りに生きるのか,を考えてみるのもいいのかもしれない。
終わり方であったり,主人公自身の家族について詳しく書かれていない点,公役場の同僚であったりCIとしての仕事であったりはもう少し詳しく主人公以外の視点でも見てみたいとも思った。
また,物語は終わって1度主人公も改心?自分自身を見つめ直したような感じになっていたが,やはり冒頭でヒサコ(変換が面倒なのでカタカナ)を幻覚で見ている点や,最終盤で息子に金をせがみ口先では「返す」といっているが、その口ぶりがどことなく軽いのはやはり主人公に染み付いた父とは違う落伍者の一面がなお残り続けていることが想像された。
もう再読することは無いと思うが,題名と作品内容とはしっかりとマッチしており読んでよかった思う。(2024/02/09 23:13:34)