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「予言(予め言う)」を、原初のシャーマニズム・神託(預言)から、占い、個人的能力に頼る予言者、近代の未来予測、現代の未来学まで網羅。各章もきちんと説明しながら、難しくなくサックリ読み進められる。
予言を文化的に捉えているので、オカルト本のような予言肯定の内容ばかりではない。ノストラダムス予言の多義性、予言の日付がはっきりしているエドガー・ケーシーのはずれっぷり(と今の冷遇)についてもしっかり言及している。
とはいえ、懐疑派(検証派)に徹しているわけでもない。
ジーン・ディクソンのことは書かれているが、彼女の名を冠した「ジーンディクソン効果」については書かれていない。
あれも予言を語る上で重要な現象なんだけどなぁ。
また、個人的にいろいろ面白いことが学べた。
タロット占いの歴史が浅い。もともとはカードゲームの一種だったタロットが特殊な属性を獲得していく様子は、神秘的とはややかけはなれていて面白い。
(昔「タロットを買うときは持ってみて自分との相性を感じるの!」といった先輩、元気かなぁ…)
水晶占いの系統は鏡や水を使うものもあるが、この占いのやり方や見え方は日本の怪談話にある「覗き込んで姿がうつらないと近く不幸になる井戸や池」に通じる。
そして予言は『ハッキリと日時や内容を書いてはいけない』のだ…、失敗のもとはそれ。予言者として名を残すならノストラダムス戦法が最適で、エドガー・ケーシーを真似てはあけない。等々。
終章の「予言が必要とされる社会背景」は、今読むとまた違った意見になる。
社会不安が増大する時、人は予言(未来予測)を欲するというが…。
本書が出てから10年以上経った今。
この本が出た翌年2012年のマヤ予言もはずれ、個人の予言は出るものの、大した話題にもならず、はずれて忘れ去られる。ネットを中心とする集合知は懐疑検証派として予言の偽りを見抜く。
むしろ、今は「こんな事態を起こしたのは誰だ!」という陰湿な陰謀論のほうが花盛りのような気がする。
将来を予感させる予言よりも、今現在の憎き黒幕を求めるようになった世界は、なんだかディストピア小説のように予言に頼った時代よりも未来がもっと霞んでいる気がする。