投稿元:
レビューを見る
食品の放射能汚染を考える上でぜひ読んでおきたい本。放射能汚染のリスクを考える前提として,有害化学物質のリスクもわかりやすく解説。食品に関して生活者がもつ素朴な印象をガラッと変える。
「食べ物は,もともと安全な無垢のもので,汚染物質の混入によって,健康被害が生じる」と恐れるのが一般の認識だが,これはまったくの間違い。自然の動植物に毒はつきもの。人類は長い歴史の過程で,多くの犠牲者を出しながら食べても「直ちに危険はない」ものを見出してきた。
現状でも普段の食事に含まれる化学物質が完全に解明されているわけではない。我々は,そんな未知のリスクのかたまりを,ともかく摂取して生きていかなければならない。そこを出発点としてとらえることが肝要。
添加物や農薬など,人為的に加えられる物質については,動物実験等の結果からかなり安全を見込んだ基準値が設定され,許容できる値を大きく下回るように管理できていると見てよい。それに対して環境に存在する物質が不可避的に食品に混入する場合,管理が難しい。
天然汚染物質の含有にメリットはないが,完全に除去することも不可能なので,主にヒトの疫学調査結果から,耐容量が決められる。その結果,食品に対して意図的に使われる物質については,安全の余裕が大きいが,天然物の場合には余裕が少なくなっている。
放射線管理の基準が,平時と事故後で異なることの背景にも,これと同様の理由があるらしい。被曝はできるだけ少ない方がよいから,平時は厳しく管理。不幸にして事故で環境が放射能汚染されてしまった場合には,過去の知見から考えて実害の少ない範囲でコントロールする。
リスクゼロがあり得ない以上,リスクを比較することが大切になる。そこで,食品の放射能汚染のリスクと,遺伝毒性のある他の天然汚染物質のリスクを比較。両者とも用量と発癌リスクの関係は線形で,閾値はないとして管理されるから,適当な換算を行なえば比較ができる。
仮定の入った大雑把な比較にならざるを得ないが,それでも放射線リスクに過敏になりすぎるのが得策でないことはよくわかる。食品中では米やヒジキ,ミネラルウォーターにも含まれるヒ素が最もリスクが高い。摂取習慣のない欧米では,米やヒジキは控えるようにとの助言もよく聞かれるそうだ。
最近でも時折,食品から基準値を超える放射能が検出されたと騒がれるが,冷静に考えると,ヒ素やカドミウム,アクリルアミドなどの遺伝毒性物質のリスクと比べて別に騒ぐほどのことではないのかも。基準値超えがニュースになるということは,逆に殆どの場合で基準値を下回ってるってこと。
仮に基準値を超える食材が出回ってしまったとしても,多様な食材をとることでリスク分散をしておけば,心配には及ばないと考えられる。心配のあまりストレスで体調を崩してしまえばつまらない。健康的に見えるが,実はマクロビでヒジキをたくさん食べることの方が危ないようだ。
投稿元:
レビューを見る
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第三室長で、
薬学博士の著者が 食品のリスクについて説明している。
農薬や食品添加物のリスクと
放射線による汚染リスクとの比較を
実際に計算して 数量比較をする
その計算方法がなかなか複雑で、
そのため、説明も簡単には読み進められない。
それが、けっこう辛い。
が、主張されている内容は しっかり考えるべきもの
食品には未だ解明されていない多くのリスクがあるなかで、
少ない量でも正確に測定できる放射性物質は
むしろ管理しやすい部類のリスクだと 言う
健康被害が出る危険のある量よりはるかに少ない量の放射線物質、
BSEや遺伝子組み換え作物など、
実際には極めてリスクが小さいのに大騒ぎされる。
他方で、
例えばコメであれば、カドミウムやヒ素など、
もっと大きなリスクが検討されていない。
震災以降の、私たちの過敏な対応に、
食品リスクの専門家はいらだちを覚えているのだろう。
「実際に損なわれているのは安全ではなく、信頼であることの方が多い」
(p.15)
本当に安全を問いたいのなら、
冷静に全体を見渡して、自分で判断すること
それが求められているのだろう。
著者のブログ
食品安全情報ブログ
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/
投稿元:
レビューを見る
そもそも食品中の放射性物質による健康被害は、食品がもともと持つ有害物質によるものに比べてどの程度のものだろう?そんな疑問に対して、正しく怖がるためのイメージをつかむ手掛かりになる一冊。
投稿元:
レビューを見る
そもそも「リスクのない食べ物はない」という認識を持つことが大切だと思う。昨今、放射線による食品の安全基準が問題になっているが、それ以外にも発がん物質はあるし、食品そのものの安全性がよくわかっていないケースも多いのだ。
たとえば、これまで知られている食品中でもっとも発がん性の危険があるのはヒ素。ヒジキや米にも大きく含まれており、英国では輸入や摂取を禁止していたり、乳児に摂取させないように提言している学者もいる。ヒジキ、ご飯を食べ続けたときと、放射線による影響を比較すると、確かに高い。(ただ、確実にがんになるかといえば、必ずしもそうではないので、注意が必要)。リスクを正しく認識するには、そのリスクを共通のものさしで比較することが大切で、一部だけにとらわえれて、全体を見失わないようにすることも大切だ。
というわけで、食品のリスクを理解しつつ、何がメリットかをよく考えて、バランスよく食事することが大切だと思う。食事は楽しくおいしくいただくことが大事だよね。
投稿元:
レビューを見る
放射性物質の危険性について、他のリスクと比較しながら書いてあり、放射性物質をはじめ食品のリスクについて気になる人にはお勧めです。
投稿元:
レビューを見る
食品中で発がんリスクが最も高いものがヒ素で、ヒ素を桁違いに含んでいるヒジキは、海外では輸入・販売を禁じられている、つーのは結構ショック。
投稿元:
レビューを見る
賛否両論あると思うけど,少なくとも,科学に携わる人なら,この言葉だけは強く共感するはず.
”科学を「やさしいことば」で説明すると,実は全く理解できていないのに理解した気になってしまうことでかえってコミュニケーションがうまくいかなくなることがあり,難しい問題です.”
この一文に出会えただけで読む価値があったと思う.
投稿元:
レビューを見る
◆きっかけ
『各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」で同著者がおすすめ関連本として紹介していて。2016/11/14
投稿元:
レビューを見る
食べ物にはいろんなリスクがある。当たり前だけど。それと昨今の放射線リスクとを定量的に比較している。この本はなんとなく信頼できる。文体等から判断するに。