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城山文学の傑作。鈴木商店焼き打ち事件は一部であり、鈴木商店一代記といったかんじの本である。生存する鈴木商店やその関係者に丹念にインタビュー取材をし描き上げた城山氏の執念に敬服。史実に忠実なせいか単純な感動というよりは、じわじわと考えさせられる本であった。
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米騒動という一つの事件から、鈴木商店の功労者である金子直吉の生涯を描く。歴史書と分類されてもいいのかもしれないが、筆者の主観が入る所も多く、読み物として読んだ。
デマの作られ方、政治との癒着、組織のあり方等々、今の日本の現状に当てはめても寸分たがわないと感じた。国家のためと自分を信じ、ひたすら奔走した金子の会社は、栄え、そして潰れていくが、その栄枯盛衰ぶりも面白かった。
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今の仕事をはじめて最初の上司から、勧められた本。ようやく完読。近代日本史の政権のことは不勉強で理解できないことも多かったが、神戸の地に、非財閥でありながら世界に名を馳せた鈴木商店、その盛衰が自らの足で得た情報で記されていてずんとくる。
何年か後にまた読みたい本。
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明治・大正の中で一商店から三井三菱をしのぐ財閥に鈴木商店を育てた金子直吉の一代記、米騒動において焼き討ちされた鈴木商店の真実を探りながら金子直吉の生涯を描く。実話だけに,砂糖問屋が40社以上の子会社を統率する会社になっていくとは信じがたいが、主人公の行動力には感心する。しかし老齢になりながらも会社をコントロールする様は、現実的な気持ちになってあまりいい気はしない。本田。藤沢コンビのようにきめたら一切手を引くという生き方の方に私は尊敬の念を抱く
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[ 内容 ]
大正七年米騒動で焼打ちされた鈴木商店は当時三井三菱と並ぶ大商社だった。
それが昭和初頭の大恐慌で消え去るまでの隠された真実と大番頭金子直吉の人間性をドキュメンタルに衝く。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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大正時代に発生した米騒動で焼打ちにされた鈴木商店。焼打ち事件の真相を丹念に探り、鈴木商店による買い占め→焼き打ちという定説を覆し、往時の鈴木商店とそこで活躍した超個性的な面々を描く。群集心理、メディアの横暴、一つの事件が人々の記憶にどう残るか? など、普遍的なエピソードもふんだんに盛り込まれいる。
昔、『栄光なき天才たち』で鈴木商店のことを初めて知ったんだけど、その凄さと悲劇がさらによく分かった。
昔の文章の引用なども多いためか、少々読みづらいのが難点。それでも読み進みたくなる本だけど。
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今年100冊目、上半期最後に読み始めて、下半期最初の読了がこれ。なかなか進まず、重かった。
サマリーなどを全く読まずに読み始めたので、てっきり江戸時代くらい昔の話かと思っていたら、大正~昭和の混乱期に存在し、焼き討ちにあって消えた商社「鈴木商店」の話であった。
基本的に話はレポートと証言から、淡々と客観的に鈴木商店の成長と消滅までを、金子、西川、高畑といった中心人物を軸に進んでいく。
と書くと、会社の沿革に具体的エピソードを加えたみたいな話かな?となるかもしれないが、途中から実は、「朝日新聞の大誤報」(少なくとも2報)という重要なトピックが持ち上がってくる。
つまり、鈴木商店は朝日新聞に潰されたわけである。実際の記事を引用しているが、これが今と全く変わらず「鈴木商店の不義を許すまじ」と具体的に書かないものの、そういう記事を書いているわけ。その辺り、他の新聞と比べて今も上手いけど、昔から変わらなかったんだなあ。
全体に手紙などの引用文が多かったり、それが読みにくかったりするし、本自体のボリュームも相当有るのだが、その分十分に読み応えが有る1冊である。
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米騒動については、シベリア出兵と前後して起きた事からか、「兵糧に米を回すことで国内供給が減り、米価が上昇したことによって起こった」という理解でいた。
鈴木商店に関しては、「焼き打ちに巻き込まれた」という程度の認識だったのだが、この本を読んで、そんな簡単な話ではなかったことに驚かずにはいられなかった。
改めて、歴史というものをある一面からのみ、それも又聞きで捉えることの危うさを学んだ気がする。
既に何十年経っているにもかかわらず、証人を探し出し、彼らに話を聞いた城山氏もすごい。
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再読。
城山三郎の「人間の記憶はあてにならない。記憶の中からは、もはや一つの真実というものは掴み出せない」と書き記す彼の小説は面白い。
朝日新聞の誤報道を聞くにつれ、この小説を思い出す。
鈴木商店は、大阪朝日新聞の攻撃から悪者に仕立てられた。
第二次世界大戦後に、最も多く経済閣僚を出したのが、鈴木系だと書いている。
これだけの会社を潰す必要があったのか?
考えさせられる内容である。
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鈴木商店の大番頭、金子直吉を通じて、焼き打ちや経営破綻に至る経緯を描く。
当時の関係者への聞き取りや、新聞記事などから、焼き打ちの原因に迫ろうとするが、結局迫りきれないもどかしさがある。
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個性的で芯のある人間が多く出てくる話で印象的。こういう人間が集まって世界と戦っていたことを考えると、今の優等生では厳しい気がする。
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城山三郎強化期間。
本書が、今まで10作品弱読んできた城山作品のうち最高の作品だと思う。
「鈴木商店は米の買い占めをしたのか」というシンプルなといを求め、半世紀以上前の出来事の承認を求めて日本を駆け巡る。「悪」とされたものを「本当に悪なのか」と問うことは、いずれの世であっても相当にエネルギーを使うはずだ。
その作業の軌跡があらゆるところに滲み出ており、読者である私のエネルギーも自然と消耗する、戦いのような読書経験だった。