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塔里木秘教考 みんなのレビュー

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みんなのレビュー6件

みんなの評価4.2

評価内訳

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6 件中 1 件~ 6 件を表示

紙の本

端正で古めかしい語り口から生み出される、変幻自由自在な怪異譚。

2015/08/11 01:08

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:arima0831 - この投稿者のレビュー一覧を見る

中国文学者でもある中野美代子先生の小説。
舞台は中央アジア。まずは新疆ウイグル自治区のウルムチから始まる。時代はおそらく1970年代のいつごろか。

しがない若手博物館員のアブリムクが、ある日不思議な古文書を読み解き始める。12世紀の古ウイグル語の文書とされていたものが、実は9世紀ごろのソグド語の写本ではないか、と疑いながら読んでいくと、何故かソグド語の文中にウイグル語で「アトム・ボンビシ(原子爆弾)」という言葉が出てくるのだった。
そして彼は、何故か中国政府の手によって連れ去られてしまう。

同居する双子の兄ウスマンは、地質調査を専門とする技師。帰らぬ弟を待っているうち、政治的な思惑から漢族の娘と結婚させられた上、突然タリム盆地の中心部で油田探しを命じられる。

一方別に展開する物語は、9世紀ごろのサマルカンドで始まる。
ここにも双子の兄弟がいて、弟は詳細を認められて隊商の一員に。兄は絵の才能を認められて神殿にマニ教の宗教画を描く役割を負ってやはり隊商に随行する。しかし、砂嵐に巻き込まれ、兄弟は離れ離れになってしまう。

そしてこの二組の双子の兄弟たちが、時空を超えて繋がりあう。時間軸を狂わせる砂漠の魔力に翻弄されながら、果たして彼らは片割れに再び巡り合えるのか…?

全編非常に静かで端正な言葉で綴られていく中で、幻想的な空気が濃厚に滲んで、時折耽美的な部分さえ見え隠れする。複雑な歴史背景や宗教状況などを綿密に抑えつつ、独特の幻想世界が織り成されていく。中世の中央アジアの状況も興味深いが、中国政府の圧政に虐げられるウイグル民族たちの社会的な立場なども物語のモチーフとなってくる。

そうした骨格のしっかりした背景に支えられつつ、荒唐無稽な幻想世界が止めようなく広がっていく。なんという広がりに満ちた話だろう、と読みながらため息をついた。
これは傑作だ。

中央アジア、シルクロード、新疆ウイグル地区、といった言葉に反応する向きは、非常に楽しんで読める話に違いないから、強力にお勧めしたい。そうでなかったとしても、独特の幻想譚だけを取り出して味わって楽しめるはず。

こんな素晴らしい作品を、二年近く積読山に埋もれさせていた不覚!
もっと早く読めばよかった、と後悔しているところだったり。

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紙の本

Atom Heart Story

2012/06/24 10:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

中国文学研究の泰斗というか風雲児というのか、奔放な言説でぐうの音も言わさぬ中野美代子による、ウイグル地方の時空を貫くの創作小説。9世紀と20世紀の二つの物語が、この地で行われた原爆実験によって繋がり、悲劇をもたらす。サマルカンドに近いペンジケントの町で、豪商の下で働く双子の美少年のうち、弟の方は当時は貴重品だった紙作りに才能を見いだされ、兄は絵描きに没頭している。商人はバグダットとシナを結んだ交易で利益を上げ、例えば香木、サラマンダーとも呼ばれる燃えない布つまり石綿、それシナ製の上質の紙などを運ぶ。その隊商に同行する中で、砂漠での砂嵐、シナ兵の攻撃と虐殺、寺院の壁画制作と、次々と冒険が降り掛かかる。
一方20世紀のウイグル自治区で、鉱山局の資源開発技師の兄と、博物館で古文書に関心を持つ弟の双子がいる。ある古文書の写真を撮って帰った弟は、突如拉致される。兄の開発する石油鉱脈は、マニ教の経典にある「魔界の水」との繋がりを予感させる。
砂漠の旅では、河はどことも知れぬ地下を流れて地表に現れ、砂嵐は磁石も狂うほどに方角を失わせ、またバグダットの黒い花のように、どんなに歩いても近づけず、遠くに見えるがすぐ側にある不思議な現象が知られている。これらの時空の混乱は、しかし火を噴く井戸の中で見た金属の構築物に同質の物だろうか。
まったく政治的なことには無縁のように思えた兄弟も、館長に続いて監禁されて読解した古ウイグル語文書に原子爆弾を示す言葉を発見し、ウイグル独立運動への弾圧の手が忍び寄って来る。
砂漠でも、あるいは世の中すべてにおいて、時空間のねじれは存在するのかもしれず、それをことさらに原子爆弾に結びつける理由はないのかもしれないが、ひねた読者である僕らはついそういう連想が働く。しかし作者はそんなことお構い無く、何の因果も示さずに、ただ坦々と不可思議な物語を紡ぎ、中央アジアを縦横に、融通無碍に駆け巡る。行き交う様々な民族や宗教は、予想のつかない展開を引きずり出す。時空間の歪みも、社会体制の不合理も、若者達にとっては成長の通過点でしかない。その中で、仏教寺院の壁画を見て新たな手法のヒラメキを得るなど、けっして無為の混乱ではなく、新しい世界に向けた歩みも生まれている。過去から未来に向かっては文化、文書の痕跡を残し、未来から過去へはテクノロジーの衝撃を送り込む。そんな円環構造をつい夢想してしまう、これは危険な物語だ。

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2012/12/10 18:29

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2012/05/17 00:04

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2012/05/25 14:35

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2012/09/24 19:37

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