投稿元:
レビューを見る
序章と終章を読んで大体の議論の展開を理解したが、結論が少々物足りない感じがある。小学校進学後の受験競争の回避の戦略としての私立小学校受験から、小学校進学後の受験競争の準備の戦略が多くみられることから、ボトムアップ型社会からプルトップ型社会に日本の教育が移行しているのではないかと議論をしているが、この議論をするうえでの証拠が足りない感がある。。プルトップ型は福地(2008)が議論する理念系で、確かに新自由主義のエリート主義教育の典型例でもあるが、小学校受験の親の傾向のみから日本の教育自体がプルトップ型に移行しているとは結論付けられない。親の教育戦略がそうであって、教育制度自体がそのような家族を後押しするように変わっている証拠を提示していないから、著者のこの結論付けのロジックは甘いと感じる。また、小学校進学後の受験競争の準備する家庭が多いということは過去のデータと比べて議論をしているわけではないので、実際にこのグループが増えたのか減ったのかはワンショットでとられたこのデータからは証明出来ない。
しかしながら近年の小学校受験の全貌を解き明かそうとした問題関心と、議論は教育社会学全体に大きく貢献するものであると思う。