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若手の研究者ふたりによるグローバル経済を主題にした対談です。
著者の一人中野剛志氏はTPP反対派の急先鋒として有名になりましたが、この本を読むと本質は学究的な人なのだと分かります。
内容は経済学と言うよりも経済思想寄りで、リーマンショック後の世界的な不況をマネーの動きだけではなくその裏にある思想から捉えようと言う試みと言えます。
グローバル化は過去何度も起きている、誤解されがちな保護主義の本質、自由貿易が帝国主義へとつながっている、と言った議論は刺激的で、ある種人間存在の本質を掘り下げるような深い分析には唸らされました。
ただ、著者二人は基本的な認識がほぼ共通していて、どの発言が中野氏のもので柴山氏のものかという点を意識しなくても読めてしまうぐらいに論旨が似ているので、対談の醍醐味という点ではやや弱いかもしれません。
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世界経済が「グローバル化」に向けて加速している。
その「波」に乗り遅れれば、取り残されてしまう。
そんな「強迫観念」じみた考えから抜け切れていない日本人には、対処療法的な本。
世界を一元的なシステムで管理するなんて無理な話。
そういった「理屈」を、歴史や著名な経済学者の言葉や、各国の思惑・国柄などから紐解いていく。
頭でっかちになりがちな経済論だが、この本はより「人間側」にたった経済理論が展開されていて、読んでいて「そうだよなぁ」と一人ごちてしまった。
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本書は、反TPP論者で評判の中野剛司氏と経済思想家柴山圭太氏の対談をもとにしただけに、一般人にもわかりやすい内容となっているが、その内容は深く、またおもしろく、そして興味深く、高く評価できると感じた。
本書では、現在の世界経済の現状について「世界がグローバル化のわなに落ちた」と喝破している。柴山氏は「グローバル化は経済危機の原因であって、グローバル化を経済危機の処方箋とはできない」と語っている。そのわかりやすい主張は説得力があると感じた。
また、危機の根本原因を「グローバルインバランス」と分析していることも、興味深い。世界的なマネーの流れが危機の原因であるならば、小手先の各国別の対処ではどうにもならないと感じた。
「格差社会」「デフレ」についての議論も説得力があると感じたが、この二人の対談で、一番興味深く感じたのは、『敵の発見』である。二人の対談では、結果的に誰も得をしないグローバル経済のもとで唯一利益を得ているのは「金融資本」であると結論付けている。これは、正しい認識なのだろうか? マルクスの時代には、労働者と資本家の対立が語られたが、まだ金融資本主義という段階ではなかったという。この論争は「金融階級vs他の階級」の階級闘争にまで至るのだろうか。
本書の「グローバル経済が不安定なのは当たり前。国内経済と違って誰も管理するものがいない」との指摘は説得力がある。本書の指摘が正しければ、世界経済の混迷はまだまだ続くどころかはじまったばかりという事になる。現在の世界経済の混迷には経済・思想・政治全てにわたる考察が必要とする本書の内容を高く評価したい。
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ハイエク言うところの知の連続性は確実に分断されているんだろうな。知の構造図はそろそろ再構成されるべき。
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『TPP亡国論』の中野剛志氏と、その知己の柴山桂太氏による対談本。グローバル恐慌の真相を「政治経済思想」という観点から分析したもの。
私にとっては、2011年最大の衝撃作です。目から鱗というよりも、頭を後から殴られたような衝撃を受けました。私が日頃より疑問を抱いている世界経済の仕組みを理解するのに役立ちました。なお、評価を4にしたのは、私の中で本書を消化しきれていないためです。
それにしても恐るべきは、中野氏の洞察力と深い知識。TPPは、日本の抱える問題の一つに過ぎない。今後の同氏のご活躍を期待したい。
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・グローバル化というものが今始まったものではなく、第一次世界大戦前や第二次世界大戦前において起きていたものだという見方、考え方に驚きました。ITの進歩も含め、過去のグローバル化の歴史がそのまま現在に当てはまるとは思っていませんが、歴史に照らし合わせることができる部分が多分にあるという点では、面白い観点だと思いました。
・アメリカの住宅バブルという幻影がリーマンショックを引き起こし、現在のヨーロッパ経済の不安を引き起こしている点についての記載については自分の考え方を確認する意味でも読んで良かったと思いました。また、デンマークなどの福祉国家がうまくいっていた要因として、アメリカの住宅バブルの恩恵の大きさが挙げられていた点についても自分にとっては新たな気づきでした。
・保護主義、重商主義、自由主義など、これまでの自分の中での定義と異なる定義がなされており、とても勉強になりました。
一般に言われている「~主義」というのも含め、それぞれ言葉の定義の解釈に違いがあるのだから、広いとらえ方で話を解釈しないと大きな誤解を生んでしまうなと思いました。
色々と書きましたが、まだまだ自分が不勉強な為、ただただなるほどと思いながら読んだという印象です。
他の方が書かれているように、同じ方向性を持った人同士での対話だったので、この考え方に対して反対意見を持っている方の考えを見てみたいなと思いました。
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TPP亡国論に続いて読んだ。中野剛志の知性に感服する。資本主義と市場経済の違い、、貿易ぬおける自由主義と保護主義の違いの解説は目から鱗が落ちた。
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グローバル恐慌の真相
■合計196ページ
一章:グローバル化の罠に落ちたアメリカと世界 42ページ
二章:デフレで「未来」を手放す日本 66ページ
三章:格差と分裂で破綻する中国とEU 40ページ
四章;冬の時代のための経済ナショナリズム 46ページ
本書は2008年度に起こったリーマンショックによるグローバル恐慌の要因を、
1989年冷戦集結後にアメリカやEU、中国各国のグローバル化の弊害を基に
言及した本。
アメリカの経済格差や日本の政治問題(デフレ対策)について述べたあと、
中国の民族問題についても触れているところは非常に興味を持った。
・日本経済の安定化
→公共投資増によるデフレ脱却措置
→内需拡大による国際競争力強化
→イノベーションを生める土壌づくり
を行うべきだと感じた。
難しかったので約10%程しかできていないように思う。
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グローバル化を標榜するからには、グローバル化に反対し、保護主義を主張する筆者らの意見をきちんと理解したい。しかし果たして内需主導で我々は生き残れるのか?
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中野剛志氏と柴山桂太氏のシンプルで本質を抉る対談集である。
新自由主義イデオロギーに毒されたヤスモンのエセ学者さんたちの言っていることに騙され続けている日本社会にとって、青天の霹靂なことばかり著されている。
しかしながら、根拠となる事実は、西欧資本主義社会が過去、積み重ねてきたものである。
アダムスミス、ケインズ、カール・ポランニー、シュンペーター、フリードリッヒ・リストなどなど、そんじょそこらの偏向してしまう日本のヤスモンの経済学者とはまったくことなる異能の社会科学総合学者さんが分析してきたことに基づいている対談は読み応えがありました(笑)。
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目新しい事は書いてないけど
シンプルで読みやすい。
難しい事がシンプルで分かりやすいってことは
二人とも頭いいってことだね。w
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日本型雇用慣行。終身雇用制と年功序列型賃金制度とOJT、これらが相互補完的に働く。
不況下でリストラが進められる中で広がったのが「高給取ってろくに仕事もできないおっさん達は許せない、こういう連中こそ首を切るべきだ」という論調。
そして年功序列型賃金制度から能力主義的賃金制にという流れ。
これはたぶんに外資の論理だ。
OJTが基本となる日本型雇用慣行では若年労働者を育てるのに金がかかる。
これが投資にあたる訳だが外資はこれを許さない。
そもそも外資はOff-JTを基本としていて、人材への投資という意味でのOJTに理解がないのかもしれない。
雇用の流動化どころか、そもそも雇用がこんな状況なのに外資の論理で動いていたら……。
冒頭で中野氏が「もっと思想的、哲学的に、国家や市場の本質を見据えたうえで」(19)と言うように、資本主義やグローバル化といった原理・思想の本来的な姿から、企業の論理、民族性の問題、経済史…と幅広くかつ明快に読ませてくれる。
中野氏が言いたかったことは「人間そのものへ還れ」ということではないだろうか。(経済)理論を生み出してきた人間の理性に限界があること、コミュニティや文化・風土を土台にしていること、人間の尊厳……そういったものの重要性がマクロ経済の分析から説得的に語られている。
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若干よみずらさはあったものの、対談形式で用語も丁寧に例を交えて解説されている。
経済学に関心のある人は読みやすいが、日本がどのようにしていまの「失敗」に突き進んできたのか、世界の反例を挙げながら解説している。
ただ、若干読みずらい。
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この二人の議論は、非常におもしろい。いまいちテレビのニュースを見ていて納得いかない、よく分からない問題を池上彰よりわかりやすく論じてくれていると思うのは、私だけだろうか。
中野氏、柴山氏に出会ったおかげで経済や政治に興味を持つようになった。
グローバルという言葉に少し違和感を感じ始めている人に是非一読をお薦めします。
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グローバルが何でもいいってわけではないと、グローバル化を批評する内容。中身が難しく、消化できていない。ただ、対談形式なのでとっつきやすい。