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帝国解体 アメリカ最後の選択 みんなのレビュー
- チャルマーズ・ジョンソン (著), 雨宮 和子 (訳)
- 税込価格:2,200円(20pt)
- 出版社:岩波書店
- 取扱開始日:2012/03/29
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紙の本
軍事国家という帝国の終焉
2012/04/08 11:51
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:24wacky - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここでいう「帝国」とは16~17世紀のヨーロッパの話ではない。冷戦崩壊後覇を競うもののいなくなった世界で一人勝ちをするアメリカを指す。その意味するところは、世界に張り巡らされた膨大な軍事基地のネットワークのことであり、それが新しい形態の帝国なのだと。
問題のひとつは、その事実を多くのアメリカ人が知らないか認めたがらないことだと著者はいう。ペンタゴンが公表しているその数自体が信用できない、いやペンタゴン自身が実はその正確な数を把握していないのではと、あきれるべきか戦慄するべきか迷う暴露話が本書では書かれている。
著者はそれら軍事基地で米軍がやってきたことを明らかにする。アメリカの政権が気に入らない外国政府を秘密裏に転覆させたり、他国の軍部に国家テロリズムのやり口を訓練したり、他国での選挙を不正操作したり、その他諸々。これらの不法工作に対して報復されることをCIA用語で「ブローバック」という。それをタイトルにした本を著者は2000年に発表したが、それが翌年現実となってニューヨークを襲った。その時、アメリカ人は自分たちが何ゆえに報復されるのか理解できなかった。自国の軍隊が国外でやってきた工作について知らされていなかったからだ。
本書は2004年から2010年までの論考がまとめられている。つまり、現実の「ブローバック」が起こった後、カウボーイ気取りのブッシュ政権後期から、それに対する変革が期待されたオバマ政権に代わってからの「帝国」の真相を、鋭い筆致で刻印している。それを最も的確に現しているのは、「アメリカとは民主主義の国ではなかったのか?」という素朴な疑問に答えている箇所。つまり、アメリカは世界では専制的な帝国主義であり、国内では民主主義であると。《アメリカが国内民主主義と外国での専制支配とを組み合わせようとするのは、どうしようもないほど矛盾しているし、欺瞞である。一国は民主主義でもありうるし、また帝国主義でもありうる。しかし同時に両方でいることはあり得ないのだ》。
ところでブッシュが浪費し尽した軍事費のつけは財政破綻となった。その課題を解決しなければならないのが現オバマ政権であるが、オバマに代わったからといってそう簡単に解決しそうにない。本書によれば、そもそも防衛支出の数字が信用できない。その上、上下両院議員は、防衛関係の企業や事業が自分たちの選挙区にあり、雇用も促進されるといった利権構造の下にあるため、国防総省を支持することが自分たちの利益になるというからくりがあるという。
著者は「ブローバック」を指摘し、軍事帝国ネットワークの存在を追う過程で、在沖米軍基地の実情を知る。保守派とみなされた著者がいかに自国が沖縄に対してひどい仕打ちを続けてきたかに心を傷めていたかは、夫人の味のある後書きを読むとよく分かる。本書では「最低でも県外・国外」と謳った鳩山民主党政権が結局辺野古合意に回帰したあのときに、著者が書き残した短い論考が加えられている。このメッセージが実現したとき、帝国は解体されているだろう。
「鳩山の行動は意気地なしで浅ましい。しかし私は、日本人をこのような屈辱的な袋小路の奥深く追い詰めたアメリカ政府の傲慢さは、もっと非難されるべきだと信じている。アメリカは軍事基地帝国を維持することに取り憑かれ続けている。そういう帝国を維持する経済的な能力をアメリカはもはや持っておらず、またそんな基地などいらないという国が増えてきたというのに。アメリカは傲慢な態度は捨て、普天間基地を(私の住まいの近くにあるキャンプ・ペンドルトンのような)アメリカ国内の基地に移し、六五年間も辛抱してくれた沖縄住民に感謝すべきだと、強く訴える。」
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