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紙の本

蝿とダイヤモンド

2012/03/18 19:51

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:峰形 五介 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ユーゴスラヴィアが分裂し、崩壊へと向かっていた時代。サラエヴォのコシェヴォ病院に三人の赤ん坊がいた。セルビア人狙撃手の遺児であるアミール、後にイスラエル外相の養女となるレイラ、そして、戦場で拾われたナイキ。
 生後18日の赤ん坊であるにもかかわらず、ナイキは知っていた。この町が戦火にさらされていることを。自分が孤児であることを。両隣にいるアミールとレイラもまた無力な孤児であることを。
 砲撃によって穿たれた穴から星空を見上げて、ナイキは誓う。血の繋がらない弟妹――アミールとレイラを永遠に守る、と。
 しかし、病院が破壊され、三人は離れ離れになってしまう。
 それから三十三年後、かつての誓いを思い出したナイキは「弟妹」たちを探し始めるが、反啓蒙主義を奉じるテロ組織の闘争に巻き込まれていく。
 その闘争の裏には「モンスター」とでも呼ぶべき怪人物の影があった。



「日本初のヨーロッパ漫画誌!」を標榜する『ユーロマンガ』がリニューアルし、雑誌形式から単行本に変わった(創刊時に「Vol.6に達する前に廃刊になるのでは?」なんて失礼なことを書いたけど、きっちり6号まで続きました。ごめんなさい)。
 リニューアル後の第一弾がこの『モンスター 完全版』である。著者は、バンド・デシネの第一人者にして映像作家でもあるエンキ・ビラル。完全版ということで、第一巻『モンスターの眠り』(過去に邦訳されたことがあるらしい)、第二巻『12月32日』、最終巻(第三巻と第四巻の合本)『パリのランデブー/4人?』までのすべてのエピソードが収録されている他、巻末には用語解説やユーゴスラヴィア紛争の歴史やビラルと貞本義行との対談なども付いている。

 この作品はとにかくヴィジュアルが凄い。日本の漫画のような躍動感には欠けるが、一コマ一コマの完成度が高く、ちょっとした画集のような趣がある。砂漠から天空に伸びる軌道エレベーター、白い部屋で繰り広げられる血の惨劇、虚空に浮かぶゲートから放出される黒い雲、水槽の中の生首とその周囲を漂う魚たち、眉間に弾痕がある巨人の頭蓋骨、甲板にサッカーコートが設置された空飛ぶ空母、物語の随所で重要な役割を果たす蝿――冷たく湿った悪夢のようなイメージの奔流にただただ圧倒されるばかり。
 ヴィジュアルだけでなく、ストーリーも濃密。過去と現在が交錯する第一話が特におもしろい。物語が進行すると同時に主人公ナイキの記憶は過去にさかのぼり、生後18日から17日に、16日に、15日に……そして、この世に生まれ出た日(サラエヴォが無差別砲撃された日)に至るのだ。
 第二話からは怪人物ウォーホールが主人公を食うほどの活躍を見せる(第一話にも登場しているのだが、その時点ではただの悪役の域を出ていない)。死と復活を繰り返し、幾度も名を変え、姿を変え、生きる目的を変え、物語内でのポジションを変え、ナイキや読者を翻弄していく様はまさに「モンスター」だ。ラストで明かされるその正体もブッ飛んでいる。

『ユーロマンガ Vol.6』に掲載されていた記事によると、本書は「記憶をめぐる物語」なのだという。
 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争のさなかに生まれたナイキたちの記憶、本人曰く「常に狂ったようにジグザグ」に歩んできたというウォーホールの記憶、旧ユーゴスラヴィア出身である作者自身の記憶――それらが塗り込まれた物語は読者の記憶にも強く刻まれ、忘れ難いものになるだろう。

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2012/01/09 16:28

投稿元:ブクログ

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