紙の本
やっぱ、ワーグナーは悪魔だった
2014/02/06 20:40
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投稿者:愚犬転助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベートーヴェンの第9の受容史だが、第9の凡俗な礼賛論とは完全に一線を画し、事実の羅列から、これまでにない第9像が見えてくる。最初の驚きは、第9が4半世紀、へんてこりんな交響曲扱いされてきたこと。音楽史の常識では、第9の初演にあって、ウィーンの観客は熱狂したことになっている。これは事実のようだが、曲に感動してものではないようだ。すでに大家であったベートーヴェンに敬意は払っても、曲への理解はなかったようだと、著書は分析する。
未熟なオーケストラと指揮者によって、第9は長くけったいな大曲扱いされてきたが、すべてを変えたのは、リヒャルト・ワーグナーだったというのが、この本の最大の特色。彼は譜面でこの曲の魅力に気づき、パリの公演でキモが何かに気づきはじめたという。彼の指揮による演奏で、第9は怪物になる。ワーグナーは「トリスタンとイゾルデ」作曲時、「リヒャルト、お前は悪魔か」と自分に酔ったらしいが、やはり悪魔だった。ワーグナーのオペラが、ベートーヴェンの交響曲をエログロたっぷりにネチネ飾りたてし、ベートーヴェン世界を巨大化させたものであることが、よくわかった。
このあとの第9にまつわる政治家、音楽家の軋轢と対立の歴史分析も秀逸だ。フルトヴェングラーが第9をドイツ精神の精華扱いしているあたり、長く第9はドイツを呪縛していたことを感じる。
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「第九」の誕生から現代までの歴史をエピソードたっぷりに教えてくれる。軽い読み物としては楽しめる。
自分の持ってる「第九」のCDの指揮者(バーンスタイン、フルトヴェングラー、カラヤンなど)が、どういう人で、どういう考えで「第九」を指揮していたかということも分かったりして面白かった。
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ベートーヴェンの作曲エピソードよりも、
誰が、どのような状況で第九を振ったのか?
という初演後のエピソードが充実している。
上流階級から労働階級へ
ヨーロッパからアメリカ、アジアへ
第九の演奏が広がって行く。
確かに名曲。
そして他の名曲とは一線を画した「特別」感。
しかし、単に世界平和を謳うメッセージソングではない。
ドイツ語が分からないし、日本語訳も読んでいない私は
何に心揺さぶられているのだろうか……。
第九初演以降の作曲家・指揮者に詳しい方が楽しめると思う。
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第九の初演で、耳が聞こえないのに指揮をしたベートーヴェンが大喝采に気付かなかった話は有名だが、作曲者の死後この曲がどのような局面で演奏され続けてきたのか、この作品が辿った歴史が論じられていて興味が尽きない。
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年を越す前にと思いながら、年を越して読了。
余りにも有名な曲の裏面史で、音楽通の方には既に常識のことばかりなのかもしれないが、私にとっては「へぇー、そうなんだ」という話が多かった。
特に、稼ぐために曲を作り売ろうとしたベートーヴェンの奔走ぶりと、その割には「長くて難しい」と余り評価されなかった様子は意外だった。
生まれた時はそんな曲だったのに、この曲をきちんと演奏するために交響楽団が形成され、国民国家の時代の中でこの曲が政治的に利用され、この曲が収まるようにCDという媒体の規格が決まる。すごい変化である。
そして、この本にカルロス・クライバーが登場しなかったことが、悔やまれてならない。クライバーの「第九」をBGMに、この本を読んでみたかった。
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書名はずばり「第九」。
著者の中川右介氏は私より若い。
『世界の10大オーケストラ』『カラヤン帝国興亡史』『カラヤンとフルトヴェングラー』を読みました。
博識・資料渉猟・筆力・・・敬服します。
この本を読んで「第九」に関わるさまざまなことを知りました。
ワーグナーの楽劇は別にして、「第九」は人類が産み出した
音楽の最高傑作だと私は感じています。
昨年暮れのマエストロ下野+読響の「第九」は若々しく
エネルギーに溢れていて、大家の悠然たる演奏とは
また異なった感動がありました。
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株式会社アルファベータで編集長を務めながら精力的に著作をモノにしている中川右介さんによる昨年末発刊の著書。
クラシック界で最も有名な曲であるベートーヴェンの第九交響曲の誕生と以後の演奏遍歴を年代を追って解説している。
ベートーヴェンによる作曲から初演、その後の演奏遍歴を読むにこの曲が同時代人ではなく後世に大きな影響を与えていったことがよくわかる。メンデルスゾーン、ワーグナー、マーラー... 作曲家として今に名を残す人々にどのように作用していたのかも興味深い。
この曲だけではないだろうが、オーケストラの形や演奏能力の標準としての指標にもなったのだろう。
原典や各種の資料にも丁寧に当たって正確な記述を期そうとしていることがわかる好著であり、第九についてのまとまった資料としての価値も高い。
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第九絡みの本といえば、通常名演奏の紹介やら解釈上の諸問題やらを細かく論じる物が多い中、少なからずそうした事にも必要上最小限に触れはするものの、むしろ第九が「喜ばしい式典に演奏される曲」であったり、逆に「鎮魂などの厳かな場面に演奏される曲」という意味合い持たされるようになった経緯や、政治に利用される様になって深まってきた深刻な演奏環境、第九によって演奏上の解釈という仕事が指揮者に不可欠の問題になった事、さらに演奏会場の問題や職業指揮者誕生のきっかけなど、広い意味で第九が世間と音楽社会にどのような影響をあたえるような存在になってきたのかをわかりやすく解説した良書。
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博識な知見をもって第九の歴史について掘り下げた著作。
ベートーヴェンが第九を書いた時から、初演、そしてどのように世界に広がっていったかがよく分かります。
当時の器楽では演奏・発声するのが難しい交響曲で敬遠されていたということです。
日本では年末の恒例行事として演奏されるこの曲は世界でいったいどういう意味をもっているのか。
また大指揮者の演奏にも迫っています。
各種CDの紹介もいいですね。
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第九が作られてから、どこでどう演奏されてきたかの変遷まとめ。
第九そのものについていろいろ論じてるわけじゃなかった。そこを期待して買ったので期待外れ。読み物としては普通に面白かったけど。
ワーグナーとかジークフリートとか見て、深水の本でそういうネタあったなって思い出しました。
別に音楽に造詣が深いわけでもなんでもないので、たぶん指揮者や楽団の違いは分からないと思う。
ベートーヴェンの最期の言葉。
「友よ拍手を! 喜劇は終わった!」
ってのは知らなかったです。これ元はアウグストゥスだよね? Plaudite, acta est fabula.拍手を。芝居は終わった。
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第九の誕生から歴史を追ってたどっていて面白かった。
初演では利益が出なかったとか、演奏が難しく、また演奏時間も長いことからなかなか完全な形で演奏されなかったとか。
人の歓喜を歌う第九がヒトラーとナチスに利用された歴史も取り上げられている。
日本での第九の演奏についても取り上げられている。日本での初演は、1918年6月1日、四国の徳島の坂東俘虜収容所に収容されていたドイツ人捕虜たちによるもの。この収容所では西洋野菜が栽培され、ハムやベーコン、菓子などが作られ、それらの作り方や建物の設計建築などが日本人にも教えられ、日独文化交流が行われていたようです。
フルトヴェングラーは、「第九はあくまで「声楽付き交響曲」であって歌曲ではない」「歌詞は二義的なもので、まず音楽なのだ」と言ったそうだが、そうはいっても、やはり合唱と歌を単にメロディーとしてだけ聴くことはできず、そこに歌われている歌詞が心に響かないではいられない。
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第九の完成から、初演、さらにそれからの他の作曲家の作品へ及ぼした影響、翻弄される楽団や指揮者の物語を経て、2001年に直筆の楽譜が世界遺産に登録されるまでを綴ったノンフィクション。
いかに第九が人類にとって重要で特別なのかがよくわかる。
僕個人としては、曲が完成してから、ベートーヴェンが初演の手配やマネタイズに四苦八苦して足掻きたおすところが面白かった。しかし、初演から3年後にベートーヴェンは56歳で亡くなっているので、相当しんどかったのではないだろうか。