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経済学者というと、最近、新自由主義、それ自体だめとは言わないが、に基づいて、規制緩和を叫ぶひと、あと囚人のジレンマとか行動経済学とか、ちょっとミクロにはまっている人が多いような気がする。
野口さんは、相変わらず、オーソドックスにマクロ経済と財政、社会保障などを論じている。
野口さんの指摘でなるほどと思う点。
(1)今回の5%の増税でどれだけ、財政が健全化するのか、財政赤字の問題となる社会保障が持続可能になるのか、について明確に示していない、示せないのは不適切。
実は、野口さんの試算では、消費税30%以上にしないと今の社会保障や地方交付税の財源を維持しつつ安定的な財政再建はできないと主張している。
野口さんのたとえでいえば、身体が悪いのはわかるので、具体的な対処をせずにとにかく手術(消費増税)しちゃいましょうといっているのと同じ。
(2)復興財源は一時的だし、社会ストックも残るので、将来世代に負担も回す方法でもよいはず。それを所得税、法人税という基幹税の増税したのはおかしい。
これもあんまり考えていなかったが、少なくとも、建設国債が60年償還しているのだから、じっくり時間をかけて償還していけばいいような気がする。なんか、どさくさで増税になってしまったな。復興に貢献したい国民の気持ちを悪用されたような気がする。
(3)社会保障問題に切り込まないのでは財政再建はありえない。毎年1兆円近く自然増する社会保障費を増税で対応できない。
今の高齢者から、自分のような中年までは、まだ、ぎりぎりプラスになるが、それより若い世代は、年金を支払っても手取りが極めて低くなる。そのような不公平を是正するのは、高齢者社会では難しいが、その難しい課題を、まさに将来世代に説くのが政治家の役目。
今の案だと増税する代わりに給付を増やすアメをつけているが、実は、どんどん既得権者も含めて、自分も含めて、年金給付年齢もあげ、年金額も減らしていかないと、どうにもまわらないはず。そういうことを、財務省もなげやりにならずに(なんか最近財務省、投げやり感あり)、ねばりづよく政治家に訴えて欲しい。
いずれにしても、もう、財政上も、金融上も、マクロ経済上も危機的状況に来ているのがよくわたった。マクロ経済に関心のある方にお勧め。
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著名な経済学者による日本の財政に対する見通し。
著者の見立てでは消費税増税は社会保障費の増大などで
30%にまであげる必要があるとする。
当然そんな増税は不可能なので社会保障費の削減を含めた抜本的な
改革が必要だと主張する。
インボイスについては素直に必要だと思った。
復興費を対外資産の取り崩しで埋めるべきだったという論にも納得。
日本国債の暴落の可能性についてはどちらかといえば楽観的だ。
少なくとも現在のようにほとんどが国内で消化されているうちは
カネは結局国内で周っているだけなので心配はない。
問題は外国人が日本国債を買い始めたときだ。
現在は企業の資金需要がない為、急激に長期金利が上昇するようなこともないであろうと述べている。
個人的に盲点だったのは仮に長期金利が上昇したとしてもすぐには
利払いは増えないという部分だ。
金利が上昇するのはあくまでも新発債や借換債の場合であり
現在発行済みの国債の利払いが増えるわけではない。
例えば今年発行された利率の高い国債の償還日はまだ先の話である。
もちろんこれが長期間にわたった場合は利払い費は増えることになる。
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トリガーワード:消費税増税、インボイス、国債、対外資産、経済論、財政支出、移転支出、社会保障費、内需拡大、スペンディング・ウェイブ、規制緩和、資産保有に対する課税
『「超」勉強法』や『「超」整理法』などで大ファンになった野口悠紀雄氏の著書。経済学の視点から、日本政府の財政的な対応がいかに不合理的であるか、そして望ましい対応策の提案がなされている。
自分が経済学に疎いので読み応えがあったが、消費税の増税だけでなく、支出(特に社会保障費)の抜本的な改革が必要であることはよく理解出来た。
復興財源のような、一回限りかつ資産形成になる支出には対外資産を切り崩して当てる。社会保障費のような恒久的に必要な支出には基幹税が適しているが、消費税や所得税等のフローへの課税だけでなく、ストックへの課税が必要であること、さらに公的保険の枠内だけで行われている介護産業を、規制緩和し民間の参入を容易にして、現在の需要超過かつ低価格の状態から抜け出し、内需拡大の起爆剤とすることが書かれており、ある程度共感できるものだった。
何をするにも決定が遅くかつ誤った選択をしがちな政府任せではなく、民間企業の参入を容易にして規制で足を引っ張りすぎないようにすることが、停滞した医療介護産業、ひいては日本全体を復活させる鍵となるのだと感じた。(もちろん、基本的なインフラの提供を保証する必要はあるので、セーフティネットの拡充は必要)
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読了。
いつもながら野口教授の考察と指摘は興味深い。
巷間言われていて、何となく信じられている経済関連の事象とその原因について、丁寧に経済理論と実際の数値を用いて読み解いていくので、素人の私にも分かりやすい上に、「何となく」思い込んでいることが必ずしも正しくないことが分かり、目から鱗か落ちることもしばしば。
国債についての誤解の解説部分は以前ここでも抜粋転記させてもらった。
その他、例えば一般に「政府・日銀はデフレ脱却のために一層の金融緩和を」といった声が一部で喧しいが、野口教授の指摘は、90年代の金融緩和は家計、企業の両部門にむしろ悪影響を与え、不景気をより悪化させた、とする。正直、きちんとした検証が薄いまま、「景気が浮上しないのは日銀のせいだ」と言っている人たちの言説よりもよほど説得力がある考察がなされていて興味深い。
いずれにしても、大元の一つは現在の税制が「経済成長期」の各種前提で作られており、根本的に前提を変えた税制への移行を考えないと、税率だけ上げても事態は全く解決しないな、、、と強く思わせられた次第。
さすがの良書と思います。
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よく言われる、「震災復興の財源を「国債発行」でまかなうことは、将来にツケ= 負担を回すことになるので良くない」という主張が誤解であることは、野口悠紀雄教授の次の説明が分かりやすい。
償還のため例えば25年後の時点で増税すれば、「一見したところ、25年後の人々が負担を負うように思える。しかし、その時点の国債保有者は、償還金を受け取っている。結局のところ、償還時には、納税者から国債保有者に所得が移転されるだけだ。国全体としては、使える資源が減少するわけではない。つまり、25年後の日本人は、全体としては負担を負わないのである。」
「では、復興投資の負担は誰が負うのか?それは、国債が発行される時点の人々である。生産制約がある状態で国債を発行すれば、金利が上昇する。海外との取引がない経済では、それによって投資が減少する。つまり、企業の生産設備の復旧や住宅復旧を犠牲にして、道路や橋などを建設することになるわけだ。海外との取引がある経済では、円高が進む。金融緩和をして円高を阻止すれば、物価が上昇して消費が犠牲になる。いずれにしても、その時点で他の需要項目が減少することによって、復興投資がまかなわれるのである。」
(いわゆる「クラウディング・アウト」のメカニズム)
野口悠紀雄『消費増税では財政再建できない』より
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増税は不可避だけれども、もっと他にもできることがあるんじゃないか?っていう論が展開されてます。
・対外資産の取り崩し
・消費税のインボイス導入
・医療・介護の需要が高まっている中でそれらは公的支出に頼りすぎている面がある
・人口減より高齢化が進んでいることが、勤労所得中心の税制と相まって歪みを生じさせている
経済に強くないので消化しきれていませんが、日々流れてくるメディアを追ってるだけでは分からない「国債残高が増え続けている。じゃあ、どうするのか?」という部分がふんだんに盛り込まれていると思います。
それを学ぶ意味でおすすめ。
他の税制に関する書籍(自分は『すべての日本人のための 日本一やさしくて使える税金の本』)と一緒に読むといいかもしれません。
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経済用語が難しく、理解できない箇所も多いが、読み通す価値多き一冊。以下、重要点をメモ書き。
■国債は負担を先送りしない!
国債が内国債であるかぎり、負担を直接に将来に移すことはできない。国債に頼る場合は主に投資が犠牲にされる。税が用いられる場合は主に消費が犠牲にされる。
「財源が国債か税か」の選択は「現時点で負担するか、将来時点で負担するか」ではなく、「投資を犠牲にするか、消費を犠牲にするか」の選択である。
■財政赤字拡大の原因は、公共事業でなく人口高齢化
政府固定資本形成はむしろ減少。社会保障給付が増大。
■国債の消化が進んだのは、企業が資金過剰になったため
金融緩和で法人企業の支払利子が減少。法人税率の引き下げで税負担もさほど増えず。金融緩和の本来の目的である設備投資が増えず、企業は資金過剰に。そのため国債の消化が容易になった。
問題は、投資がされないということは、将来の日本経済の生産性低下と社会資本の老朽化が進むということ。「資本設備の高齢化」も進んでいるのである。
■資産保有と介護費用負担を関連させるべき
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早稲田大学院教授 野口悠紀雄氏の著作である。(元大蔵省、現財務省)に在籍されていたので、財政全般に非常に詳しい。個々の論点に対する答えが、経済学的合理性を持って書かれている。結論は5%消費税を引き上げても、新規国債発を抑える効果は二年しかなく、焼け石に水である。なぜそうなるのか、税収の伸びより、歳出の伸びのほうが大きいからである。税収面では、日本経済の停滞に伴って、特に法人税が減少したことである。歳出の面では、特に社会保障関係費の増加が大きい。仮に、消費税率を20%にしたとして、それで問題は終わりにならない。結局は、現在程度の国債費発行は今後も続く。常識的な程度の増税で、財政再建は不可能であると考えるべきである。
日本の財政はいつ破綻するのか?
これまで、景気低迷により、国内の銀行は、企業向けの貸出を減らし、比較的安定している国債を購入してきた。民間金融機関の10年末の貸出残高は532兆円程度で、仮に毎年、50兆円の国債発行が続くとすると、今後10年以内に、国債発行が行き詰まってしまうことは十分考えられる。ここで野口教授は政策を転換して、金利上昇を食い止めるには、日本銀行による国債の大量購入を提案されている。しかし、これは通貨増発によるインフレをもたらす。現実に、日銀が国債の購入による、年1%程度、あるいはそれ以上の金融緩和を推進しょうとしている。
自分自身の意見を言えば、財政問題とは、結局のところ、政治と民主主義、社会的コンセンサスの問題である。
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超整理法で有名な野口先生の本業である経済・財政論。
なかなか素人の私にはわかりませんが、増税をしなくても財政再建可能な方法を提示しているあたりは、流石です。
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超整理術の野口先生は経済学者だったのだ。 しかも工学部卒で大蔵官僚という経歴を持つ。 個人の家計、国の会計ではなく、日本全体のマクロでみると、全く違った実態が見えてくる。
消費税は広く浅くで法案を通し易いが、すぐ不足する。 消費税の目的税化は実は何のタガもない。
恒久負担の社会福祉に埋蔵金を使い、一時負担の復興資金に増税するのはあべこべ。
高齢化社会を迎えて、所得課税に偏った日本の税制を改革し、所有課税を強化すべき。
等々。
この本の内容が財務官僚の常識だとしたら、現在の消費税増税国会論戦は茶番ということになる。
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財政再建の御旗の下、消費増税の足音が日増しに高まっている。ただ、社会保障費を賄うためには現時点でも消費税は30%にする必要があり、今後、増税を上回るペースで社会保障費が膨れ上がっていくことを考慮すれば税率はほぼ青天井であることを覚悟しなければならない。また、前途には捕捉率の問題が立ちはだかっている。これを解決するには、事務負担の大きいインボイス方式をとらなければならないなど、課題は山積である。国債発行による財政再建は急場しのぎに過ぎないうえ、その消化も早晩行き詰ることは火を見るより明らか。莫大な対外資産についても、その大半を占める米国債の取り崩しは日米外交上ほぼ不可能。もはや財政再建には、爆増する社会保障費の見直し以外にはないというところまできている。ばらまきを即刻やめ、さらなる歳出の切り込み。これしか術はないと思うのだが。
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増税する前に、歳出削減をするべきだという声はよく聞くが、それは歳出の多くを占める社会保障費の削減に他ならない。
しかし、社会保障費をどう減らすかについて述べている人は、少ないように思う。
なお、筆者も消費税の増税は必要とのスタンス。
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著者は著名な経済学者であるだけに、本書の内容には説得力がある。「消費税を増税しても財政再建できない」「国際消化はいつ行き詰まるか」などは、読んでわかりやすいが、果たしてそうなのだろうか?
「消費税を五%引き上げても、改善効果わずか二年!」などは、もうすぐ事実でわかるかもしれない。
また「国債」についての考察は、「資産課税」との処方箋も書いているのだから、裕福者への課税強化の主張なのだろうか。だとしたらば、アメリカのオバマの政策と同じなのか。
「人口減少」や「マクロ経済」の考察等も、わかり易いとはいえ、具体性は今ひとつのようにも思える。
「介護は日本を支える産業になり得るのか」の考察も、その視点は興味深いが、「政策提言「にまで思考を結実してくれると、もっとわかり易いとも思えた。
本書は、政治も経済も混迷を深める現在の日本を、どう見るのかという貴重な視点を提供してくる良書ではあると思うが、まだまだ内容の深化が不足しているようにも思える。
素人としてはぜひ専門家に、「失われた20年」からの脱却の「すっきりした結論」を求めたいのだが、まだまだそれは現状では無理なのだろうかとも思った。
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週刊ダイヤモンド(オンライン含む)の連載がもとになっており、やさしいです。
消費税の話は少しだけしか出てきません。
インボイスは転嫁を保証する魔法の杖ではないので、この部分は一面的。リバースモーゲージは実務的には極めてこんなんであり、介護費用をこれで賄うのは難しいのでは。
医療や介護に対する解決策が「行列に並ぶ」しかない社会主義的状態というのは的確で面白く感じられました。
国民経済計算の話がいろいろ出てくるので、内閣府のHPや信頼できる基礎テキストでもっと勉強してみたいなと思います。
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はじめに
第1章 消費税を増税しても財政再建できない
1.消費税率を5%引き上げても、改善効果わずか2年!
2.財政健全化のためには税率30%が必要
3.消費税の目的税化は、増税のためのトリック
4.財政への信頼崩壊は財政危機を加速する
5.税率引き上げ前にインボイスがどうしても必要
補論 収支シミュレーションの前提と計算方法
第2章 国債消化はいつ行き詰まるか
1.国債消化構造の危うさ
2.日本国債のDoomsdayはいつ来るか?
3.国債消化のマクロ的メカニズム
4.財政支出が財政収入に還流すれば問題はない
5.金利が上昇しても、利払い費はすぐには増加しない
6.国債は負担を将来に転嫁しない
補論 金利上昇が国債利払いに与える影響
第3章 対外資産を売却して復興財源をまかなうべきだった
1.結局は恒久増税になった復興財源
2.対外資産の取り崩しで復興資金を調達できる
3.外貨準備の取り崩しで復興資金を調達できる
4.必要なのは財政論でなく経済論
第4章 歳出の見直しをどう進めるか
1.増税分を呑み込む歳出増
2.マニフェスト関連経費はまだ残っている
3.財政支出の大部分が移転支出であることの意味
第5章 社会保障の見直しこそ最重要
1.人口高齢化で社会保障給付は自動的に増える
2.公的施策はどこまでカバーすべきか
3.内需を増加させたいなら、なぜ医療費を抑制する?
第6章 経済停滞の原因は人口減少ではない
1.人口構造で未来が予測できるか?
2.40~59歳人口の減少は、日本経済に大きな影響
第7章 高齢化がマクロ経済に与えた影響
1.高齢化で貯蓄率は低下したか?
2.貯蓄減少のメカニズム
3.人口構造の変化は、資産保有に影響を与えたか?
4.貯蓄が減少したのに、貯蓄投資差額は拡大
5.財政赤字拡大の原因は、公共事業ではない
6.金融緩和は、経済活性化でなく企業の資金過剰をもたらした
7.国内の貯蓄超過は経常収支の黒字に対応する
8.高齢化社会では、インフレに備えた資産運用が必要
第8章 介護は日本を支える産業になり得るか?&l
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結論から言うと、支出(社会保障)を抑えることが財政再建への道であるということ。高齢化と共に支給額が増える年金や医療、介護保険。これらの負担を抑える施策を打たない限りは消費税および社会保険料の負担は年々増加の一途をたどる。自動車・電機に代わる新たな産業(介護、サービス etc)の育成がこれからの課題になるということか。