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紙の本
ありふれた町で宝石を見つける
2012/02/04 12:42
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野々宮子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
町歩きは気軽でありながら奥深く、興味のつきないものだ。
観光名所や絶景を求めて行くのではなく、仕事の帰りにいつもと違う路地を入ったら、古い家並みが残っていた。居心地のよい、珈琲の美味しい店がみつかったということはよくある。ふだんの暮らしの中に溶け込んでいる場所と、はじめて自分が出会う喜び。自分の足で歩き、自分の目や耳で見つける旅の楽しさを教えてくれるムックである。
たまたま、地方旅行の直前に見つけたこの本は心強いお供になってくれた。シンプルな黄色のイラストマップと静かな写真たち。よくあるガイドブックのあれもこれもと情報がひしめきあっている記事や、カラフルすぎて疲れるカラー写真とはひと味もふた味も違う。押しつけられている感じがしない。ここに載っている場所にも行ってみたいけれど、自分でも見つけてみようと思う。
著者の若菜さんは「山と渓谷」の編集部にいたこともある人。健脚で山や草花が好きで、本もたくさん読んでいる。鎌倉の古書店主とのやりとりなど、本好きにはこたえられない記事もある。身構えることなく、それぞれの地方都市を歩いて、自分とカメラマンとで見つけたものをすっと掬い上げて丁寧に書いている。気持ちのよい本作りをしている。
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