紙の本
時には本をふせて
2012/05/17 18:37
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『思考の整理学』が大ヒットとなった外山滋比古さんの、2010年から11年にかけて発表された創造に関するエッセイ「創るチカラ」と日本語の特長について考える「ことばの旅」、そして本書のための書き下ろし「あたまの散歩道」の三篇、いずれも短いエッセイの集積だが、を収めている。
冒頭に収録されているエッセイ(「作る・つくる・創る」)の中に「自分自身、ずっと本を読むことを中心に生きてきて、ずいぶん人間らしさを失っている」という表現があって、頭を一撃された。
本を読もうとしたのっけからこれであるから、きつい。
しかも、結構思うところもあり、外山さんの説に真っ向から反対できない。
さらに「だいたい本を読むというのは、ひとの考えたことを、書いたものをたどって頭に入れるにすぎない」と手厳しい。
読書によって、ある意味、自身の思考の成り立ちができたと思っている人間にとっては痛いところを衝かれた気分である。
読書で「人間らしさ」を学んできたと思ってきたが、実際には文字に書かれた「人間らしさ」でしかなく、所詮は呼吸をし、体温をもち、ああといえばこうといい、喜怒哀楽も制御できない生身の人間とは程遠い「人間らしさ」をそれと信じてきたのではないかとうなだれる。
書を捨てて町にでも出たなら、もっと今とは違う生き方をできたのではないか。
しかし、今さら書は捨てられない。
読書の功罪について書く外山さんだが、「あたまの散歩道」という書き下ろしの中で、こんなことを書いている。
「考えあぐね、書きあぐねているとき、三十分もあたりを歩いてくると、気分一新」するのだという。つまり、外山さんは書を捨てよとはいっていない。
書を時には伏せて、歩いてみては、と説いている。
あるいは、「又寝考」というエッセイの中では、又寝(昼寝の一種と考えていい)を薦めている。目覚めのあと、頭がすっきりするということを書いている。
これも書を捨てよではなく、又寝の時は書を伏せよということだろう。
つまりは、頭の中がいっぱいになる状態をやめなさいという。
本書の書名にもなっている「忘れる」力も、そういうことだ。
そして、それはある意味、時には、本を伏せよといっているといっていいのではないだろうか、と思い知らされる。
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外山滋比古 『「忘れる」力』 (潮出版社) を読んでたら、ちょっとメモしておきたいことが出てた。
よく 「朝廷」 というが、なぜ 「朝」 なのか。
-- 昔の中国では、天子は (天使ではないよ!) 朝から役所を開いて政務を見た。「朝」 という文字が入っているのは、そのことに由来する。
東京に台東区という名の区がある。なぜ 「台東」 なのか。
-- 戦後までは 入谷区 と 浅草区 に分かれていた。それが合併したのである。
前者は 上野の山 のあるところ、後者はもちろん 浅草寺 のあるところである。
合併することにはなったが、さて、地名をどうするか。どちらも伝統があるので譲るつもりはない。
台東区という地名は妥協の産物である。入谷 の名も 浅草 の名も使わないことで、相手の顔を立てた。
台東区の 台東 は、上野の山を表す 台 と、その東にある浅草ということで 東、これを合わせた地名を作ったのである。
味気ない地名 (歴史も伝統も放棄して・・・) になってしまったのは、そういう経緯があるらしい。
福岡市の市名のことを思い出す。博多と福岡と、どちらの地名を取るか。
票決を取ると、ちょうど半々に分かれた。で、議長が 福岡 に1票入れたことで 福岡市 となった。
けれど駅名は 博多駅 である。
私の住んでる県のことも書こうと思ったが、憤りがふつふつと湧いてきそうなのでやめておく。
--- 以上は今日 (3/15) ブログに書いた内容だ。
終わりの方に 「自由思考」 と題した文がある。「自由」 という言葉と英語の Free という語について。けれど、ここでは筆が滑った気味がある。Free を 「不自由がない」 と解し、自民党などという党名はそもそもおかしいと論じているのだが、自民党という党名の場合には Liberal と英訳されるもので Free ではない。それをあたかも自由民主党の 「自由」 とは Free の意味だと強引に結びつけている。気持ちよく書いておられるのであろうが、自民党の支持者でない者でもおかしいことを言うものだと首を傾げるのではなかろうか。
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また、読んでいないが是非読んでみたい。
気になる語句として、健忘症という言葉の健という意味
これは、どのような意味であるか
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氏の「考えるとはどういうことか」という本が面白かったので、続けて新刊を読んでみた。同じようなことも書いてあり、それなりに面白かったけど、、、、それなりに、だった。
タイトルが「xxxxの力」っていう点で、ちょっとヤな予感はしてたんだけど。 この手の、ひとつの思考方法や、行動様式を想起させる本は、あっちこっちの連載をくっつけて一冊にすると、どうにもブレるというか、内容にまとまりがなくなる。事実この書も、第1部は月刊誌の連載、第2部はとあるホームページへの連載、そして第3部が書き下ろし。 極めて日本的発想の安易な本づくり。
いろんな雑学や思考法は参考になるけど、一冊を通して、ひとつのことを言ってるんじゃないのが、なんとも残念でした。
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翻訳する際に原文忠実を否とし、創作的翻訳を是とする発想は目からウロコ。思考の整理学は全然面白いと思えなかったのに、本書はなぜこんな面白いのか。
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日本語を外国語(主に英語)と比べて、優れているとの肯定に元気になれる。
!「内田百閒はおそらく明治以降、最高の文章家である」と書かれていた。
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テーマが生まれる前に予想的創造思考が必要である。これがしっかりしていれば、テーマは容易に生まれる。文章を書くのは文章を創ること、創作であるということを承認すればいろいろと面白いことがわかってくる。