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少々遠のいていた経済小説を、と思って昨日購入したが、思った以上に面白くていっきに読んでしまった。経営不振に陥ったスポーツメーカーが、壮絶なコストカットで有名なターンアラウンドマネージャーを社長として迎えるが、こいつがとんでもない奴で…。という話。NYの「カラ売り」専門のファンドの日本人が、この社長のとんでもない経営の内容を暴いていく、っていう話。作者黒木亮氏の本は「小説エンロン」「トップレフト」が面白かったから何冊か読んだけれども、航空機ファイナンスの話とか、アジアのエマージングマーケットの話とかは、少々難しくて読むのに時間がかかったが、今回のは非常に読みやすかった。金融用語についてもきちんと解説されていたし。ただ、私がわかるレベルだから、専門家からみたら、だいぶ簡略化されているのかもしれないけれども…。
非情なコストカットを行いながら、自らは巨額の報酬を得て、贅沢三昧の社長と、ニュージャージーの工場を閉鎖されて職を失ったNYハーレムの黒人親子との対比がしつこいくらい出てきた。
ひとつ気になったのは、文庫化するにあたって加筆訂正をしたと書いてあったけれども、同じ人物の同じ紹介文が何度も出てくるところ。連載中は必要だったかもしれないけど、文庫化する際には削れば良かったのに、と思った。いっきに読んでしまうとその表現がなんども出てきて気になった。
「金貸しのような眼鏡をかけた…」という表現など。どんな眼鏡だろ、ってそのたびに思ったし。
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黒木さん最新の文庫本。
「カラ売り屋」(黒木さんの昔の著者)で活躍した
パンゲアの北川さんが主人公。
今回はコストカッターの異名を取る悪役との対決です。
何でもかんでもコスト削減、リストラを進め、
会計操作を行い、株価上昇を狙う悪役に対して、
主人公の北川さんがそれを見抜いて、
カラ売りを仕掛けるというストーリー。
話が単純なので、読んでいてわかりやすいし、
最後の結論も何となく想像できるんだけど、
それでもその後の展開が気になってしまう…という小説です。
久々に読んだ小説ですが、
やっぱり黒木さんの小説は面白い!と改めて思わされました。
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黒木亮さんの作品の中でもお気に入りの
カラ売り屋「パンゲア」シリーズの新作かと思ったら…、
旧作「リストラ屋」の文庫化だったんですね…。
でも…、内容は忘れていたので、新作気分で…f(^。^;)
日本の経済小説にしては珍しく
コストカッターを日本人に設定しているので、
作品では、非情なリストラにばかり焦点が集まっていますが…、
それだけでは、株価の上昇は説明できなぃので、
もっと、その本質にある「ビッグバス」を
詳しく書き込んでもよかったんじゃないかとも…。
カラ売り屋は、一般に悪ぃ印象を持たれていますが…、
むしろ、悪ぃ企業を浮き彫りにするといぅ点では
ふつぅのアナリストよりも、いい仕事をしているんじゃないかと…。
真山仁さんの「ハゲタカ」シリーズと同じくらぃ
この「パンゲア」シリーズはお気に入りなので、
もっと、「パンゲア」シリーズの新作を発表して欲しぃな~。
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粉飾の手口としてよく使われるものに、ビル・アンド・ホールドというものがあります。まだ倉庫にある在庫を売ったことに して、売り上げを計上してしまう…例えば、3月に販売したことにして、6月に返品するといった やり方です。
会計士が倉庫にある預かり品を調べておかしいと思っても、「これは売約済み製品を、先方の都合で預かっている ものです」と言われれば、その場では「分かりました」と引き下がるしかない。
あっ…もしかして、あの会社の売上ってこの「ビル・アンド・ホールド」じゃないのか…と気づいてしまった、結果的に勉強になった本です。笑
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カラ売り屋「パンゲア」の北川と、リストラ屋「極東スポーツ 社長」の蛭田の対決。
ワンマン経営の不正を暴いていく北川の姿が、まるでミステリーの謎を紐解いていくようで、とても面白かった。
アメリカ、日本、メキシコなど多くの都市が舞台として登場し、その都市の歴史や特徴などを詳細に記述しており、多くの知識を得ることができる。
また、実在の企業や人物なども登場し、その記述も興味深い。
企業の「再建王」坪内寿夫、「再建の神様」大山梅雄にも大きな関心を持つことができた。
最後に、経済・金融用語集がまとめられており、小説の内容の理解を深めることができる。
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カラ売り屋VSコストカッター
ボクは黒木亮の本が好きだ。
学生時代に読んだ、トップレフト。
今思えば、ボクが今、金融系の企業に勤めているのも彼の本の影響だろう。
そんな黒木氏の新作文庫本。
主人公はカラ売り屋「パンゲア」の北川。
本書を読むまで、カラ売り屋というと、株価が下がることで利益を出す企業なので、あまりいいイメージがなかったが、その概念を覆された。
主人公の敵となるのが、企業再生請負人である蛭田。
老舗スポーツ会社再生のために、米系投資ファンドから送り込まれた社長だ。
この蛭田は大リストラを行い、短期的に株価を吊り上げる。
リストラ、コストカッターというと、日産のV字回復を成し遂げたカルロスゴーンの活躍以降、機関投資家などからもてはやされていると思う。
もちろん、日産のカルロスゴーンの場合、リストラを行い短期的なV字回復をさせただけでなく、その後の成長戦略にも力を入れている。
ただ、本書に出てくる蛭田という男は、短期的に株価を上げることだけに注力。
そんなリストラ屋の蛭田とカラ売り屋の北川の全面対立小説なのだ。
本書は、金融の知識がなくても、わかりやすい表現で説明されており、理解しながら読み進めることができる。
誰もが楽しめる金融エンタメ小説なのだ。
そして、本書はいろいろな問題点を読者に投げかける。
会社と株主、従業員、取引先、役員・・・の関係。
すなわち、ステークホルダーというものを真剣に考えさせられる社会派小説とも言えるだろう。
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いつもながら切れ味鋭い黒木さんの新作、株価は上がるが会社をぼろぼろにする立て直し屋の様がえげつない。空売り屋とのバトルが秀逸。
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カラ売り屋vs企業再生請負人を描いた経済小説。ビジネスや人物の描写の仕方がリアルで、惹き込まれてしまいました。面白かったです。
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株価をつり上げるためだけに雇われた蛭田明は、更なるリストラを断行する。歴史があり世間から信頼されていた企業ブランドは地に落ちる。一時的な株価上昇という目的は達成するかに見えるのだが、蛭田のリストラの影響は甚大であった。不自然な株価上昇、社員の困惑、社会に与える影響などについてはカラ売り屋の北川の目を通して語られる。企業の社会における役割を見失うことがいかに不幸なことであるのか、そんな当然のことも強欲投資家たちにはわからない。
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カラ売り屋と企業再生請負人の攻防についてのお話。
他の作品同様、臨場感があり好きです。
作品としてキレイにまとまってるとは思うが、テーマに魅力を感じれなかった。
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数字しかみない雇われ経営者は現場を見ないで意思決定をしがち。人間味のない決断を連続して下すと優秀な社員が離れ企業が崩壊する。ベンチャーキャピタルのマネーゲームは人も企業も不幸にするね。
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不振の企業に着任した経営者とカラ売り屋の話である。
描写として特徴的なのが、経営者が悪で、カラ売り屋が正義となっていること。着任した経営者はアナウンスメント効果で株価を上昇させるが、結局売り上げをごまかし、最終的には粉飾してしまう。
カラ売り屋にスポットライトが当たる面白い小説だった。
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本書をどう読むか?所謂、リストラ屋と称されるコストカッターの実態とリストラクチャーされる企業側の悲哀を浮き彫りにした物語として読むことも出来る。カラ売り屋の北川も不正を暴く正義漢として描かれるが、所詮カネ儲けの手段としてヒルのように喰らい付いているだけといえばそうとも言える。(事実、最後に儲けたのは米国投資会社とカラ売り屋である)読後感もあまりよろしくないし…但し、逆説的に企業がかくあるべきというかリストラ屋では、会社がよくならないことを暗示している点では共感できる。
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シビアすぎて、現実感のない経済小説だ。企業再生経営と称して理不尽なレベルのコストカットを強い、株価を上げて報酬だけもらう。それは本当のハイエナである。
後味の悪いことこのうえなし。
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日産のゴーンが逮捕されるという時期に、
「ザコストカッター」という題名に引かれて読んだ。
どちらかと言えば、「空売り屋」の北川が主人公のように見えた。
空売り屋としての 財務諸表の目利きがきちんとできている。
空売りって、短期間で処理するかと思ったら、
かなり長い時間を保持できることを初めて知った。
売掛金の増大による売り上げの増大。
そして、キャッシュフローが増えないということから
ビルアンドホールドという手法であることがわかる。
そして、倉庫をリースしていることが、この推定の根拠にもなる。
それにしても 蛭田の持つ リストラとコストカットの仕方はすざましい。
コストカットではなく、ブランド確立の経営者がいるという北川の指摘は正しい。
中国、ブリックスをターゲットにした マーケティングと
中国への工場の集中化。
株を上げるためにどうするかを苦心する。
レインボープラスワンに関する リサーチの仕方が面白い。
ファッションと価格ではなく、よりがっしりしたものを
求めているというのが、よくできている。
結局 蛭田は 粉飾決算の方に 進んでいくことになる。
そうであっても、自分の報酬は 多額になる。
なんとなく、ゴーンを彷彿とさせる。
ゴーン問題の心象がよく見えて、面白かった。