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広い宇宙の中で地球にしか生命体がいるかどうかは私はわかりませんが、少なくとも太陽系の惑星には、地球のような環境(陸と水がある)は他には無いようです。この本は学者の巽氏が、地球進化の謎を大陸の起源から丁寧に解説してくれています。地球の内部についても詳しい研究がなされているのだなと、最近の研究の成果の一部を垣間見ることができて久しぶりに知的な刺激を受けました。
以下は気になったポイントです。
・惑星地球の特徴として「地球は青かった」となるのは、太陽光が450-500ナノメートルの波長(青系統)の光を多く含んでいること、そして地球表面の7割を覆う海水がこの波長の光を相対的に吸収しにくいことが原因(まえがき、p3)
・地球最初の生命は、今から35-38億年前に、原始海洋で熱水が湧き出す場所で誕生した、つまり水がなければ生命は生まれなかった(まえがき、p3)
・地球の変動を支配するプレートテクトニクスは、地表を覆う硬い「蓋」が水を多く含むために柔くなるから作動可能である(pまえがき、p4)
・火星とほぼ同じ大きさの原始惑星「ティア」が地球に衝突して、その結果「月」が誕生した、衝突によって散逸した地球物質は急速に集積して月をつくった、月の岩石から45.2億年前、地球と月の岩石がまったく同一の酸素同位体比の特性を持っていて共通の物質を起源とするから(p11)
・日本のお家芸ともいえる高温・高圧実験の成果により、大陸・海洋地殻の構造が判明した(p19)
・地球がほかの太陽系惑星と決定的に異なるのは、大陸地殻と海洋地殻の2種類からなり、組成と厚さがことなるということ(p19,25)
・マントル下降流域である沈み込み帯でマグマが発生する根本的原因は、沈み込みプレートに含まれていた水がマントル物質の融点降下を引き起こすこと、部分融解物質が上昇して減圧される、二次対流が作り出す高温のマントルウェッジの加熱効果の3つのメカニズムが作動していることにある(p38)
・日本列島は今でこそ海の中に位置しているが、わずか2000万年程前に日本海が拡大する前は、アジア大陸の一部であった(p46)
・フィリピン海プレートの多くの部分は、南海トラフなどの海溝でマントルへ滑り込んでいる、この沈み込みに伴って、海溝型巨大地震である「南海・東南海・東海連動型地震」が発生してきた(p54)
・メタンハイドレードは、サブファックの原材料の一つである海洋堆積物や付加体・海溝斜面堆積物の中で行われる微生物の活動によって製造されると言われている、日本列島近傍に埋蔵されている総量は6兆立方メートル(100年分の使用量に相当)がある(p75)
・大陸がなぜ地球にのみ存在するかは、プレートテクトニクスが作動して沈み込み帯(サブファック)が存在し、そして沈み込みに伴って、いったん地球内部へもちこまれた水が触媒の役割をはたして、安山岩質のマグマを生産しているから(p95)
・熱の移動様式には、対流・伝導・輻射(放射)の3種類があるが、地球内部では���収係数が大きいため輻射はない、対流か伝導かは、レイリー数(浮力とそれに抵抗する粘性の比)による、限界値以下では伝導、それを超えると浮力が勝って対流による熱伝達になる(p99)
・惑星表面の温度、圧力条件が、液体の水の存在に合致しているかが必要、温度が低ければ氷になり、高すぎると水蒸気になるから(p107)
・地球表層におおよそ38億年前から液体の水が存在し続けたことが、地球でプレートテクトニクスの作動を可能にして、大陸がつくられた主要要因である(p109)
2012年7月15日作成