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再読。
吉田健一最後の長編小説。
いつものように登場人物がただ酒を飲み、ダラダラと語り合うだけ……と言ってしまえばそれまでだが、まるで一緒になって飲んでいるようないい気分になれる。吉田健一の文章は、どれを、何度読んでも気持ちがいい。
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たとえば実験的にこの小説の書き方を真似てみると、この背景が書かれた時代に吉田健一はその空気を吸っていて、それはどういうことかというと、直接的に彼の目に見えたこと、頭にうかんだことを書いているのであって、私小説とも、あるいはエッセイとも言える。しかし、これが彼のさいごの小説と呼ばれるからには間違いなく小説である筈で、やはり私の読み違いが原因の筈である。
そもそも、私という存在は良く読み間違いをしては、その書物に支払った代金を無駄にしており、それならいっそ活字など読まなければ良いのではないかと考えることもあるのだが、書店にいくたびにその事実を忘れ、それでもハードカバーは少し値が張るのでいつ後悔しても良いやうに文庫本から気になるタイトルや、過去に読んだことのある作者の作品を選ぶのであるが、その際に内容をちらと読んで、読むに値する書物かどうか判断できたら良いのだけれど前述のとおり、その能力が決定的に欠けているのである。
このようなことを書いていると、それならお前の棚にある本はどれもつまらないものになるのだなと、意地のわるいことを言う輩も出てくるはずだが、そうではなく、ただ私の評価を当てにしてはならないと言っているだけで、実際におもしろいかどうかは自分の目で確かめたほうが良いのではないかと、ここにレビューなり感想なり書きながら矛盾したことを言っている。
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いいお酒みたいな本です。いいお酒なんだろうけど、頭ではわかるけど、年齢を重ねないと心からはそう思えない部分もある。でもこの味、ちょっとクセになる気もするし、違う香りがして、いいお酒なんだなって思うから、この味が心にしっくり来るような年の取り方をしたい。そんな感じの本。