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この本は私が愛読している増田氏の最新作(2012.5.15時点)です。今回も日本を含む世界経済の動向について、一次データを彼が加工したグラフを多く使いながら解説しています。
最新経済を解説する様々な本の中において、増田氏の解説は私には最も分かりやすく理解できる部分が殆どです。この本のキーポイントである4つの幻想が崩壊しようとしていると予想していますが、果たしてそれはいつ来るのでしょうか。
多くの本には2020年迄には何かが起こると書かれていますが、欧州においてドイツと協調路線をとっていたサルコジ大統領が負けたことが今後どの程度影響していくのでしょうか。今年は多くの国での大統領クラスの選挙が行われるので、今年が転換年になるかもしれませんね。
以下は気になったポイントです。
・高いマーケットシェアを持ち、価格支配力を握ったガリバーに牛耳られた産業は、そのガリバー企業だけが強くても、産業全体としては国際競争に負けて衰退する(p14)
・第二次世界大戦後の世界経済には2つの大きな節目しかない、1)1970年代の二度にわたるオイルショック、2)1989年ベルリンショックから1991年ソビエト崩壊にいたる、社会主義圏の消滅(p25)
・オイルショックに対する日本の対策は、1)3大都市圏への人口集中、2)鉄道網の構築、3)不断の省エネ技術の開発、実用化(p25)
・インフレに対して庶民のもつ感覚は、物価の値上がり分のみ生活が苦しくなること(p36)
・日本で持続的なデフレが起きたのは、もともと個人会計が健全で、借金踏み倒し経済の慢性化は困ると思ったから(p47)
・米国の形状赤字の約半分は対中貿易赤字で、残りは原油輸入によるもの、その帳尻は海外からの投融資で賄っている(p48)
・アメリカ大衆を苦しめているは、ガソリン代の高止まりか、もっと高くなる気配(エネルギーコストに占めるガソリン代:24@2002→38%@2011があること(p51)
・米国ではFRBがいくら紙幣を増刷しても民間(企業、個人世帯)が借りてくれないので、銀行がFRBに対する過剰準備の積み増しをしている(p60)
・日本の10年物国債は実質ベースでは 1.4-1.8%であり低すぎないので、新発債は3-5倍の応募がある(p62)
・過去30年間での日米での大卒者の比率を 同年代グループで比較すると、日本が26→55%となったのに対して、米国はほぼ40%(40→41.6)である(p73)
・米国での新規開業企業の社数は 2007年をピークに激減している(p78)
・最近の米国での民事訴訟裁判では、物件売却額とローン残高の差額が大きいと、金融機関に差額請求権を認める判例(ノンリコースを認めない)がでている(p81)
・アップルのサムソンに対する独禁法訴訟があるが、サムスンはアップルより知的資産は多い(p148)
・海産物や家畜肉を生で食べることの多い日本の食品基準が各国より厳しいのは当たり前、建物基準が厳しいのも同様(p159)
・リーマンショック後の銀行への救済パッケージの総額(14.4兆ドル)は、アメリカ独立戦争以来のすべての戦争費用、すべての国家プロジェクトを合わせた額(8.1兆ドル:インフレ換算の実質価格)よりも、1.8倍大きい(p167)
・アメリカ金融機関の「信用評価変動損益」とは、自社の株価や社債価格が下がっているので、「自社株や自社発行債券を今買えば安くなり、利益となるもの(p169)
・スウェーデンはバルト3国、オーストリアは旧ハプスブルク帝国内、ギリシアはバルカン諸国に金融帝国を築いていた(p185)
・スウェーデンは総資産の75%を対外融資にあてている、2位のオランダ、3位のオーストリアまでは、債務不履行がキャリートレードが自国経済の破綻を招く可能性あり(p187)
・FordがGMに負けたのは、Fordは壊れにくいので買換え需要を生まなかった、デザインを考慮した欠点だらけのGM車は買換需要を促した(p215)
・金に対して値もちの良かった通貨ベストは、日本・中国・スイスフラン、ワーストは、ケニア、ランド、トルコ等(p240)
・100ドルでどの程度の金が買えるかという視点で見る限り、最近の金価格高騰は大きな変化ではない(p249)
・日本で高齢者困窮度が低いのは、あらゆる所得層、年齢層にわたって貧富の格差が小さい社会であるから(p271)
2012年5月15日作成
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増田 悦佐 (著)
ヨーロッパも、アメリカも、中国も、総崩れだ。
グローバル化万歳論は 大いなるまやかしだった。
欧州危機に端を発する国際金融の混乱は、まったく収束のメドは立っていない。
ヨーロッパも、アメリカも、中国も総崩れで、グローバル化万歳論はおおいなるまやかし
だった。この混乱はたんにいくつかの国の財政破綻で終わるものではなく、より大きな
世界経済の大変動の始まりである。これまで世界各国の政治家・中央銀行・経済学者・
マスコミが吹聴してきた4つの幻想が崩れ落ちようとしているからである。すなわち、
(1)借金踏み倒し経済は永続するという幻想、
(2)超大国・多国籍巨大企業は効率的だという幻想、
(3)経済のグローバル化は歓迎すべきだという幻想、
(4)エリート支配こそ理想の社会をつくるという幻想
が終わりととげるとともに、欧米先進国もアジア新興国も衰退に向かう。しかしこれらの
4つの幻想にとらわれることなく、
(1)投資銀行も肥大化せず、
(2)どの業界も寡占は中途半端、
(3)グローバル化もさして進まず、
(4)超エリートが政治・経済を支配することもなかった
日本が、欧米先進諸国やアジア新興国の没落をよそに「屹立する」。
一貫して「日本楽観論」を主張して読者を魅了し続けてきた人気アナリストが、
欧州危機後の世界経済の行方を大胆に予言する一冊。
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歯切れも良いし、結果的に日本は生き残るとありますが、自分の国際経済に対する理解不足からか、すっと腹に落ちませんでした。ただ、ヨーロッパ諸国の酷い状態は良く分かりました。
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これだけはほかのものではかわりがきかないから、絶対に値上がりしては困る、そういうものが無慈悲に値上がりするのが、インフレという経済現象だ。インフレは弱者を狙い撃ちする。
1980年から2010年の30年間で学費は7倍 よほど大金持ちの子女か、返済不要の奨学金を貰えるほどの頭の良い学生でなければ大学を卒業するのは無理
国債がほとんど海外の投資家に持たれていないことも日本の強みだ。そもそも、国家財政の負担になるのは、支払い金利であって、国債の残高ではない。