紙の本
生き物の「作られ方」とロボットの「作られ方」はどう違う。
2022/03/15 15:43
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロボットを制作していると苦労して考えついた「これは」というものがすでに生き物が採用していた方法だと知って驚くことがある、と著者はいう。なぜ似てしまうのか。ロボットと生き物の違いは何か。著者は細かい説明は極力減らして根元の考え方を洗い出してみてくれる。
「似てしまう」のはどちらも力学法則の強い制約を受けているから。同じ「世界」で作動する限り、同じ条件での効率の良さを目指せば似た比率、似た動きになるということだ。
では違いは何か。一言でいえば「生き物はフルモデルチェンジはできない」ということらしい。新しい機能を獲得して進化してきたと言っても、それは「すでに存在する構造・機能」を少しずつ変化させて獲得したもの。部品の材料を全く違うものに変えたりするような「ロボットにはできる」が生き物にはできないことがある。
同じ自然界の法則に縛られながらも、作られ方が違うこと。人間は既に存在する生き物の機能を調べることでその機構に積極的に似せた、というのがこれまでのロボットの「進化」かもしれない。しかし「生き物にはできない」部分を知ることでロボットならではの進化ができるかも、著者の意気込みも感じられて楽しく読めた。
本書より10年ほど後であるが著者の「いい加減なロボット」が出版されている。ロボット技術で進んでいるところも多いことが分かったが、「考え方」のわかりやすさでは本書の方が個人的には上かと思う。
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ロボット工学の視点から、ロボットが生体に酷似している理由を明らかにしてくれます!
2020/02/19 09:27
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、現代社会においてどんどんと進化していく機械が、なぜ、生物そのものやその部分とそっくりな形態をしているのかをロボット工学の視点から考察した画期的で興味深い一冊です。同書であげられている例としては、ワイヤ駆動のヒューマノイドが馬に似ているとか、お掃除ロボットは生きた化石に酷似しているとか、ガラスを割らずに掴むロボットハンドが人間の手にそっくりだとかなどですが、どうして、ここまでロボットが人間や動物とその形態が似ているのでしょうか。実は、この理由には生体の精巧な力学構造があるということなのです。読んでいて非常に面白く、読み始めると止められない内容です。ぜひ、多くの人に読んでいただきたい良書です!
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切り口がよく、非常に理解しやすい内容でよかった。専門外の人でもすんなりと頭に入ると思う。ロボットのメカニックな視点ではなく、生物との対比で話がずっとすすむという説明は今までに見聞したことがなく、より入り込めたのかもしれない。ご愛嬌文も若干あり、はずしている?かもしれないものの、2時間程度で読めて、しかもさわりを味わえる本としてお薦めしたい。
骨が圧電アクチュエータ的であるということは知らなかった・・・。
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神が作った生き物のメカニズムは凄く、人間が考えて考えて作ったロボットやメカが期せずして似てしまう。著者は生き物の構造をここまで進化させた自然の凄さの礼賛しているが、ロボットで神、自然をも超えたものを作ってやろうという心意気が良かった。
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宇宙戦艦ヤマトの世代の私にとってガンダムシリーズになどにみられるヒト型ロボットはなぜか胡散臭く感じられたことがあった。今はそれほど思わないが、かつて戦艦や戦闘機などの兵器は人間とは別の形状であるべきであると考えていたのである。それは人間のようなやわな存在と宇宙での戦闘という関係が、たとえファンタジーであったとしても結びつかないからだった。
しかし、ある時からその考えが変わってきた。人間が自分の思っていることを直接に実行するためのインターフェイスはやはり自分の身体の延長としての道具ではないかと考えるようになったのである。自在に動かせる鋼鉄の腕や脚があれば、転換するのに時間がかかる戦艦や戦車よりいいに決まっている。たとえば、あの事故を起こした原発の中に直接入り、修理ができるロボットができるとしたら、ヒト型以外には考えられない。
本書はそんな私の妄想に、直接に届くロボット工学の話である。研究者が開発するロボットは生物の模倣をしようとしなくても自然にそれに似た要素をもってしまうという事例がさまざまな写真や図とともに分かりやすく述べられている。進化の過程で生物たちが勝ち取ってきた身体の仕組みがいかに合理的なものであるのかを証明することになる。
ただし、本書の末尾にはロボット工学が生物の進化に追いつき、やがてはそれを超えるものになるという展望を示している。あくまでも楽観的な将来像は技術者の言としてふさわしいものだ。
ロボットの技術はおそらくこの後も日進月歩だろうが、それを操る人間の知性はそれを上回ることができるのだろうか。ここでまた私の妄想のスイッチが入るのである。
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なぜ生物は回転機構を使わないのか、という話が出てきたが、私なりに考えるに「回転機構は草むらに弱い」からだと思う。
自然界のほとんどは草むらないしそれに準じた環境だと思う。その中で回転機構を使うと、すぐに草やら枝やらが絡まって使えなくなる。刈り払い機やチェーンソーを使ったことのある人は経験があるはずだ。つまり、(砂漠ならまだしも)生物にとって回転機構を使うことはめんどくさいのだ。あ、でもゆっくり回転させれば絡まんないかな。
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ロボットが何故生物と似てしまうのかという内容の本です。ロボットが人間の魂を持てるかどうかというSFの話ではなく、本書はロボット工学の観点から、生物とロボットを考察しています。内容は主にロボットの移動法や関節の工学的問題が主題となっています。
本書で面白かったのが車輪機構の話。なぜ生物には車輪のような仕組みが存在しないのかが、考察されています。
ロボット工学に興味のある人、またロボット工学を学んでいる人にもオススメの一冊です。
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神様が作ったロボットである生物と、人間の設計者が作ったロボットの
類似点、相違点をまとめている。ドラえもんの手のような機械など、コンプライアンスの高い機械はワクワクする。ロボットについて学べると同時に人体の仕組みも学べ、そちらにも興味がわいてくる。
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生体模倣についてロボット分野の視点からまとめた本.生物の例を挙げて比較しているが,「どうしても似てしまう」という帰結へは,そこまで説得力はない.
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科学者が一生懸命知恵を絞って考えたロボットの構造が、実は既に生物に備わっていたという例が元文系の私にも分かりやすい言葉で書かれてて面白く読めました。
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工学の視点から「生体」の精巧な力学構造を解き明かし、生き物の限界を超えようと試みるロボット機構学。エンジニアの発想vs.自然界の創造力。
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ロボットと生き物の意図せざる共通点。その事実と,背景にある力学的,幾何学的な理由が紹介されています。また「生き物を超える」ロボット作りについても,独自の発想や試みが語られています。ますますロボットが好きになりますよ。
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ロボットに携わるエンジニアには非常に興味深い内容。似せることから始まったロボット研究。その構造は力学的と幾何学の制約に支配され、結局は生物と同じような機構をとらざるを得ない。しかし・・・。生物、つまり神がつくったものを真似るのではなく、それを超えることができることに気付く。例えばモータの存在。生物がもっていない(バクテリアの鞭毛モータがあるが)回転機構は、例えばジェットエンジンの様に生物の力を超えるものができる。生物は38億年の歴史の中で進化し現在の機構に変化してきたが、四肢系と六肢系に分かれた以降はマイナーチェンジである。材料も細胞分裂という現地生産が基本のため、不安定な材料を使わざるを得ない。馬の骨は速く走るために強度を高めた結果、再生ができない。生物がロボット化した場合のわかりやすい例であろう。一方でロボットは、フルモデルチェンジが可能な点で、生物と大きく異なるのである。我々は神の作った生物から謙虚に学ばせて頂く一方で、ロボットの独自の方向性を考えていく必要があるだろう。結果的に生物と同じ進化に行きつくのかもしれないが・・。部分的には神を超えたロボットがこの世にどのように存在していくのか。生物はカンブリア紀(5億4200万年~5億3000万年前)の間に突如多様化した。科学技術はひとつの発見や発明がきっかけで大きく展開するもの。ロボット工学も一挙にカンブリア紀に突入するかもしれない。将来どのようなロボットとの社会が待っているのか楽しみでなりません。
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生き物に似てしまうロボット
力学と幾何学の制約
力学・・・サイズと強度(大きさが増えると断面積は2乗倍、重量は3乗倍)、歩く時の重心(支持多角形の内側に重心を納める動き)
幾何学・・・関節の自由度、人間の関節の冗長度
腕の先端を決めるのに3次元+先端の向きを決めるのに3次元でつごう6次元がマジックナンバー。人間は1次元多いので腕の先端の位置を変えずに肘を動かしたり出来る。
筋肉がモーターで腱がワイヤー
ロボットに真似させたい生き物の特徴
筋肉・・・出力高い、やわらかい動き ロボットは電磁モーターか空力が多い。
微細構造・・・構造色とか、水を撥ねたり
やわらかい動き、コンプライアンス
コンプライアンスがないせいでロボットは中腰のまま立てる。人間は筋肉が疲れてしまう。
筋肉は増速機を使っている(逆梃子)。バックドライブによる微調整⇔ロボットは減速機のギアで電磁モーターの回転からトルクを高める。
冗長な二関節筋、しかしそのおかげでキャッチボールが出来る
MEMSや自己組織化で段々と模倣が可能になってきた
それでも違う生き物とロボット
金属やプラスチック・・・生物は現地生産方式なので使えない。ロボットは高熱や圧をかけて材料を加工できる。
車輪・・・末端部への栄養補給が。。。
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ロボットと生物がなぜどう似ているのか、力学的、幾何学的に簡潔に解説されている。工学的技術的な解説も多く含まれるが、生物の形や動作は日常の知識や体感でわかるので、その辺りの分野に詳しくなくても読みやすい。特に、似ていない点(なぜ生物には車輪構造がないのか等)に関しては、類似点に比べ話題になりにくい点でもあり、新鮮で興味深かった。脱線するが、J・P・ホーガンの「内なる宇宙」を読み返してみたくなった。