紙の本
交錯する人々の心の中
2012/06/04 23:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽかぽか - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画「ベルリン天使の詩」は、行きかう人々の心の声を神様が聞く物語だったけれど、この短編集もそんな風に、色々な職業や年齢の人たちの何気ない日々や心の声を聞いているような気分になる。家出少年、写真家の学生、OL、日雇労働者などなど・・・。
短編集なのでひとりひとりの細かな個性を感じるところまで人物描写を味わうことはできないものの、ある人の心の声を読んでいる途中で、別な人物とすれ違い、今度はその人の心の声が聞こえてきて。それぞれの世界はどこかで繋がっていたり、同じ物を違う角度で眺めていたりといった面白さを味わえる。
それぞれの人の生活は特に大きな出来事が起きる訳ではなく、誰もがそうであるように日々が淡々と過ぎていくが、それでもやはりそれぞれ異なる感覚で、異なる人生を送っていて・・・その雰囲気がヨーロッパのミニシアターっぽくて、それで「ベルリン天使の詩」が浮かんだのかもしれない。
個人的には三話目「台風一過」の、登場人物の眺めている景色の色合いや、細かな音が聞こえてくるような繊細な表現が好み。大きな感動こそないけれど、読んだ後に静かに残る、少しけだるい感じを帯びた余韻がじんわりと心地良かった。
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2012.06.08 読了
短編集。表題作はとても吉田修一らしい物語だった。つい最近、九州出身の方と軍艦島の話をしたところだったので、やけに迫るものがあった。
やわらかさのあるものや、少し陰のあるものなど、吉田修一の魅力を一通り楽しめる内容。
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読む本切らしそうだったので、本屋で適当に見繕って買った内の一冊。
良さげに見えたのだけど、家に帰ってから皆さんのレビューを見るとイマイチの感もあって、ちょっとテンション下がる。先に読み終えた嫁さんも何となく戸惑いの表情。
5~15分ほどで読める、何となくしみったれた感じの、あるいは妙に生々しい、または気が重くなるような、短いお話が10。
最初のお話で『立野くんは、どういう風に女のコを抱くのだろうかと私は思う』ときて、さすがに訊けずに普通の会話を6行やったら、『立野くんがどういう風に女のコを抱くのか、何となく分かったような気がした』って、…。
全編そんな感じで、残念ながら、私にはどこが良いのか分からなかったよ。
こういう本には解説が欲しいんだけど、そんな時に限ってないんだなぁ。
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あまり人には話したくない、知られたくないような
そんなところが、映像でぱっと映って、ぱっと終わる
そして、心の中にちょっとしたひっかかりを残す
そんな短編集・・・でした
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「キャンセルされた街 の案内」
なのか、
「キャンセルされた 街の案内」
なるほど。深い
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短編集。
単行本で初読、文庫で再読。
描写、情景、雰囲気だとかが吉田修一ぽくて好き。
長崎出身の私としては表題作にもなってる
「キャンセルされた街の案内」の長崎弁がたまりません。
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タイトルが目を惹いた。
即買い、表題作の一編を一気に読んだ。読めてしまった。読んだけれども何故『キャンセルされた街の案内』なのか皆目わからなかった。
回想のなかで主人公は、無人島のインチキガイドで小遣いを稼いだりする。その無人島はかつてはひとつの炭鉱街を形成していた軍艦島と呼ばれる有名な島というか「街」だ。だから「街の案内」はわかるのだか「キャンセルされた」場面はない、どうしてキャンセルされた、なのだろうか。
物語はどうにも煮え切らなくて不甲斐ない小説家志望の若者が主人公で、彼の回想や書いてる小説のなかの物語が現実と全然脈絡なしに交錯する。表面的には意味を成さないかのようなタイトルと、このエピソードとエピソードの間の脈絡のなさが、なぜだかいいと思った。なぜだかはわからないがそれがいいのだ。
元彼女が不倫にのめり込むのを目の当たりにしても何も言えない。長崎の郷里から生来のニートである兄がでてきて部屋に居座るが、追い出すどころか邪魔にもできない。小説を書くのもトイレに篭ったり、公園に逃げ出して膝の上でやる有様だ。そんな読んでいる方が腹が立ってくるというか、まったく盛り上がりには欠けるはずの主人公を巡るストーリーが、脈絡なく割り混んでくる話に引っ掻き回され俄然面白くなる。
話は飛ぶが、吉田修一が早朝のスタバでノートPCを叩いているのを目撃したことがある。正確には吉田修一らしき人と言うべきかもしれないが、その人は、『横道世之介』やこの『キャンセルされた街の案内』の主人公のような長崎出身のもっさい男とはまったく違うイメージだった。その直前にアエラの表紙で見たのと同じ極めてクールできりりとした風貌で、しかも黒ずくめの服装だった。ちょうど作家が原稿を書く時は縦書きかな横書きなのかな、原稿用紙フォーマットはつかうのかな、とか興味のあった私は、彼の席の傍を通りしなにディスプレイを覗き込もうとした。だが、きっ、と鋭い目で睨まれて見ることができなかった。
あれは、ホンモノだったのだろうか。
のほほんとストーリーを追っていて、突然緊迫感を強いる挿話に出くわしたときの驚きは、あのホンモノらしき吉田修一と目があってはっとしたときのドキドキと同じだった。
闖入してくる回想シーンでは、軍艦島の廃墟でヌードモデルと変態カメラマンの真具合を見てしまったり、インチキがばれて客に激しく殴られたりする。
それらが自分の不甲斐なさに忸怩と悶えているはずの主人公の隠された激情に脈絡なしにシンクロして読むものの心を掻きむしる。
インチキガイドは、島から泳いで逃げて来た男の聞いた話を、「私の父は」と脚色してインチキ案内をドラマチックに語る術を身につけていく。これって、もっさい長崎の少年が長崎出身のクールな作家にやがてなっていったプロセスの引き写しであろうか。そんな風に勘ぐりながら読み進むとぞくぞく感がどんどん増していく。
凶暴な台風に向かって幼かった兄と主人公は突堤の上でわけもなく叫ぶ。このシーンも唐突に割り込んでいる。
いよいよ物語の最終盤、主人公は試作中の小説の最後に決定的な「嘘」���書き加えることを決心する。それは、決断することから逃げ続けて来た男の生まれ変りに等しい一大決心だ。それこそ、作家吉田修一誕生の瞬間の告白ではないのか。
最後の最後、またしてもなんの脈絡もなく、台風のシーンがまた回想される。
兄が叫ぶ。わー。幼い吉田修一が叫ぶ。わー。わけもなく叫び続ける。わー。わー。
読んでいる私も叫ぶ。わー。わー。わー。
吉田修一恐るべし。
私はスタバでみた男の悪魔の様な尖ったまなじりの目を思い出していた。
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何も考えずに読んだら
何も残らず忘れてしまうと思う。
だけどちゃっかり頭の隅っこに住み込んでくる。
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吉田修一節が凝縮された10の短編集。
いつも思うのだがこの人の作品の登場人物は仕事や生活環境がバラエティーに富んでいる。色々な人生を覗かせてくれるところが魅力なのかも。
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吉田修一らしい短編集。ただ、今回は個人的には良い作品がなかった。
日常の中の日常。あんな人、こんな人傍に居そうで、居ないんだろうなと思いながら読み飛ばす。読み終わると少し肩が疲れた。
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短編集。おもしろい位どれもストンと終わる。そのなんとなく消化不良がかえって期待を裏切らずいい。雨で土埃がにおうような嗅覚を刺激してくれる作品。
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あぁ女たちは二度遊ぶの人か。どーりでというか何というか、あんまオモシロくない。タイトルほどに惹かれない内容なんだ。たんに好みの問題かなぁ。
どの話もだからどうした?といった感じな上に、パツンと終わっちゃうからより消化不良。
表題のキャンセルされた街の案内だけは、回想が入り混じりノスタルジックな趣きがあるので、だからどうした感は相変わらずあるもののわりと好みだった。
とはいえ全体としては、うーん、オモシロくないかなぁ、、、
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日々の春、零下五度、台風一過、深夜二時の男、乳歯、奴ら、大阪ほのか、24Pieces、灯台、キャンセルされた街の案内の10編からなる短編集。
吉田修一さんの作品は、恋愛ものとハードな内容なものがバラバラとあるので人に紹介する時に非常に難しいのだが、この短編集は全てを網羅しているので、人に勧める吉田修一入門書としてかなりオススメ。
個人的には、過去と現在の自分が語り合う「灯台」、長崎を舞台とした「キャンセルされた街の案内」が良かった。
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軍艦島の話が良かった。結局自分も不誠実で誤摩化しばかりの人生だな、と今頃になって思う。
そんな押し入れの奥の奥へ隠してた箱を開けたような
気持ちにさせられた。
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短編集。う~ん、私には合わなかった。かな。
~解説より~流れては消える人生の一瞬を鮮やかに切りとった、10の忘れられない物語。