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2017/5/12の日テレ系列『AnotherSky』という番組で左官職人・挾土秀平さんの特集を拝見しその仕事ぶりに圧倒されました。「土色」なんて言葉はナンセンスなほど自然由来の材料から青や、緑や、赤など様々な色を生み出し、その土地・その場所に適した建物の“表情”を生み出します。放送の翌日、偶然この本を手に取ることができたので読むことに。
テレビで拝見した挟土さんは豪胆で仕事に対しては頑固一徹という印象を持ちましたが、本書ではより様々な視点から挟土さんご自身のことや仕事論、左官という職業について知ることができます。
左官に限らず「伝統」や「過程」といった日本古来の文化が軽んじられている現代において、“伝統技術”は近年様々な懸念や課題が浮き彫りとなっています。効率化・簡易化が推し進められ、古き良き文化や姿勢が失われつつある現状に対する怒りや悲しみ、やり切れなさが痛いほど伝わってきました。広い地域・国で仕事をされ、各々の文化やヒトと触れる機会が多いからこそ日本という国を客観的に見る視点に長けているように思います。
他国にはない日本の素晴らしさ、それは長い長い年月を経て培われてきた日本人ならではの「美意識」であり、心情表現や景色に表される侘びさびや自然を尊び感謝することにあると説きます。
便利なモノに溢れ助けられている面は多分にありますが、日本人として心豊かに過ごすための核となる考え方に気付かされたように思います。日々の忙しさに振り回され時折投げやりな気持ちになった時こそ、伝統的なものに触れたり自然のなかで心落ち着かせる時間が人には必要なのかもしれません。
心に留めておきたい哲学が詰まっていました。
(欲を言えば建物の写真はカラーで見たかったです)