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インドで、犬に食われる自由を発見してしまった写真家・藤原新也の短編小説集。
事実描写よりも、作品の主人公が「思った」「感じた」ことの描写が多く、なんだか感情を押し付けられたような気がして、好きになれない。
最後の短編、「夏のかたみ」だけは、登場人物が自分の思いを直裁に話すことなく、その人の振る舞いなどから、人となりや思いを想像させるため、直接語られないもどかしさの分だけ、人間の描写としてリアルに感じる。
ところで、本の中で何回か「未亡人」という表現が出てくるけど、この言葉は嫌いだ。
妻は妻で、夫とは独立の人格であるので、夫が先に死んだとしても、「未だ亡くなっていない人」などと、夫に引きずられて生死を語られる筋合いはないと思う。
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一編一編が珠玉のエッセイで、癒されるというか、心がふわっと軽くなる。
通底するのは、生死に関する人間本質的ドラマとか、日常の中でみつけられるちょっとした変化とたのしみ・心の喜び。
流石というか、ここまでの一冊はなかなかない。
とりわけ、冒頭の「尾瀬に死す」はしばらく忘れない一編になりそうだ。
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藤原新也が「私の長い人生の中で出会った出来事や普通の人々の物語」という、14篇を集めた短編集。
末期がんの妻の最後の望みを聞いて一緒に行った尾瀬で妻が亡くなり、殺人罪に問われた夫が、最高裁でも冤罪が晴れないことを覚悟して再び尾瀬を訪れたときに見た妻の夢によって、逆転無罪を勝ち取った『尾瀬に死す』はTVドラマにもなったが、いずれの物語も、ごく普通の日常を送る人が人生のある時期に出逢った、哀しく、切なく、そして少しだけドラマティックな出来事を描いたものである。
著者はあとがきで「人間の一生はたくさんの哀しみや苦しみに彩られながらも、その哀しみや苦しみの彩りによってさえ人間は救われ癒されるのだという、私の生きることへの想いや信念がおのずと滲み出ているように思う。哀しみもまた豊かさなのである。」と語っている。
藤原新也にして描き得る、心に沁みる14篇である。
(2012年7月了)
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写真家、藤原新也氏の短編小説集。と思ったら、あとがきに、ほぼ実話と書いてあった。彼が人生で出会った人たちとのつかの間の交流をとおして、彼が感じた事や、知人から聞いた話のようだ。
1篇が約10ページほどとかなり短いのだが、その中にエッセンスがぎゅっと詰まっている。どれもホロリとやや切ない。
この著者のことはあまり知らなかったのだが、今回初めて読んでみて、他の作品も読んでみたいと思った。とても良かった。
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普通の人たちのささやかな日常、ちょっとした変化を題材にした短編集。全部読み終わったが作品1つ1つに物足りなさを感じた。普通の人たちは一番普通ではないのに、普通に描かれているところ、小説というほどの創作もなく、随筆のような雰囲気に近い。
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淡々とした雰囲気だけどドラマチック。切ないお話もほっこりするお話もある。人の生死を扱ったお話が多いので、ところどころ哲学的な気持ちになる。あまり多くを語らない雰囲気なので読み返すとまた違う楽しみ方が出来そう。一編一編が短くて読みやすいので気軽に読める。じんわりと染み入るいい作品集。
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文章による映像体験とでも言おうか。
写真家の目を通すことで言葉が
置かれるべき位置に置かれている
という感じがする。
読むだけで、時にまざまざとなんの躊躇いもなく
脳裏に映像が浮かんでくる。
元はノンフィクションだが、いつの間にか
珠玉の短編小説を読んでいるような、
極上の映画でも見ているような感覚になった。
藤原新也さんが、感じた心のままに起こした
小さな行動によって、他者の人生ドラマの
一場面に加わり、そこで起こることを
切なさを帯びた優しい眼差しで見守っている。
その優しさがどこから来るのか、あとがきを
読んで納得したのだった。
「人間の一生はたくさんの哀しみや苦しみに
彩られながらも、その哀しみや苦しみの
彩りによってさえ人間は救われ癒やされるのだという、
私の生きることへの想いや信念が自ずと
滲み出ているように思う。
哀しみもまた豊かさなのである。
なぜならそこにはみずからの心を犠牲にした
他者への限りない想いが存在するからだ。
そしてまたそれは人の心の中に必ずなくてはならぬ
負の聖火だからだ。」
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寝る前の、ほんの少しの時間に1作ずつ読めるぐらいの、短い物語たちです。
著者は写真家なのですね。だからなのか、どれも短編映画のようにありありと風景(情景)が浮かびます。
特に好きなものは
海辺のトメさんとクビワとゼロ
カハタレバナ
トウキョウアリガト
夏のかたみ
ノンフィクションなんだ!!と、驚きつつ、
同じ人生なんてないんだから、全ての人が、
悩み迷い後悔し、懐かしみ愛おしみ、
願いや希望をもち、生きているのだと、
しみじみと思いました。