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紙の本
異界の歩き方
2012/08/26 21:28
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
身辺がバタバタと忙しい事を言い訳に歯の痛みをほったらかしにしたまま、新しい任地、f植物園に赴任した主人公。
その任地で歯医者に行くが、どうもその歯医者が少しおかしい。
そもそも自分以外患者がいない。
また、助手も兼ねている歯科医の妻は、前世がイヌだったため、忙しくて、なりふり構っていられなくなるとイヌの姿になってしまうという。
その事を「髪が乱れてる」くらいの感覚で受け止めているし、他人にもそのような感じで説明する。
さらに、下宿先の大家は時折、頭だけ雌鶏になる。
時間の進み方もなにかおかしい。
いつもと同じ日常のようで、どこか違う世界。
記憶を辿ってみると、巣穴に落ちた以降の記憶が途切れ途切れで、しかも巣穴から出た記憶がない。
出た記憶がない以上、まだ自分は巣穴の中にいるはず。それなのに日常のような世界にいる、という事は、ここは異界。
ここを出るにはどうしたらよいのか。そのためにさまよい歩く。
読み進むうちに主人公がさまよい歩く「異界」は、主人公の「記憶」の中だという事が分かってくる。
出てくるものは主人公の記憶の中の何かを象徴するものだが、分かりやすいものもあれば、一体、何の関係があるのか、よく分からないものも出てくる。
よく分からないからこそ、記憶の中の世界なのかもしれない。
最初は、わけも分からずさまようが、次第に、この「異界」で「探すべきもの」が見えてくる。
ただし、いずれも現実の世界では会う事ができなくなった者たち。つまり死者。
彼ら、彼女らとキチンと向き合うために記憶の中の世界をさまようことになったのか、と思うが、そもそもその記憶を抑え込んでしまった理由が今ひとつ分からない。
想像すれば、さもありなん、という気もするが、果たして、そこまで記憶を改変してしまうものか、という点が腑に落ちない。
ただ、そのために読むのが進まない、といった事もない。
手に汗握る展開はなく、どちらかというと緩やかに物語が進むのが自分のペースに合っている感じがする。
ところで、自分の記憶の中の世界をさまよう事になったら、どんなモノが登場するだろう。
本当は、あまり見たくないのだが、少しだけ興味がある。
紙の本
読み返すほどよい
2012/07/10 07:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴあちえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
図書館で何度となく借りたもので、手元に置きたくなりました。梨木香歩さんの植物の描き方には、風や湿り気、水の匂いまで思い起こすようで大好きです。物語の奥行きも深く、何度も繰り返し読みたくなります。
紙の本
夢の中をいきつもどりつ
2020/08/09 22:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
梨木香歩さんは、ともかく植物が何より好きで、ただ好きということ以上にその植物に宿る静かなるチカラを信じているに違いない。本作に至っては、ことさらに草花樹々の存在感に溢れ、それらのチカラを介して異世界と繋がっていくような変わった佇まいの物語だ。
主人公は、植物園に勤める技官の男で、話は、始終一貫して植物の記述とともにあり、そして白昼夢さながらの不思議な展開。この「f植物園の巣穴」を巡るのであれば、植物図鑑を道行にすることをおすすめしたい。
紙の本
ハマってしまう梨木ワールド
2019/05/28 08:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しんごろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは夢?それとも幻?自分も巣穴に落ちて迷い込んでしまった。そこには、いかにも日本という神秘で妖しい静謐な自然な白黒の世界。歩いてみた。白黒から緑、黄色…。色がつきはじめた。君は誰?坊というのか。坊よ!助けておくれ。坊と一緒に歩いて行くうちに、ふと目が覚めた。あっ、これはやっぱり夢だったのか。読んでる最中に、眠りの世界に吸い込まれ、自分もこの物語の世界に行った不思議な感覚でした。梨木ワールドは読んでると眠くなるのですが、クセになりますね。
紙の本
この手の本を余り読んでこなかった私にとっては、幻想的・夢想的小説の代表作のように感じられる。
2016/11/23 10:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この手の本を余り読んでこなかった私にとっては、幻想的・夢想的小説の代表作のように感じられる。この著者の本は、先に389:梨木 香歩『家守綺譚』(新潮文庫、2006年10月1日、新潮社)を読んで気に入り、そのデビュー作から読みたくなって手にしたものである。
前半は、正に現実と幻想世界とが交錯する摩訶不思議な世界での展開であり、彼女の得意とする植物(犬雁足・月下香・秋海棠(シュウカイドウ)・ムジナモなど)がふんだんに登場しフワフワと幻想世界を彷徨する気分である。しかし、中盤、河童もどきのような物体?生命体?霊体?が登場した辺りから、現実の世界が消え去り幻想世界の中で時間軸すら定まらない多次元の異空間に迷い込むと少々私の想像力の枠を飛び越えてしまい?????が乱舞。決して不快ではないが、どうも読後感が今一スッキリしない結果となった次第。初めて読んだ『家守綺譚』の方が、私にとっては圧倒的に良かったです。とは言え、引き続き読み継いでみたい作家である。