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私自身、聴覚過敏かもというところがあって、
日頃の悩みを解決するヒントが得られればと思って
唯一、聴覚過敏をテーマにした本書を手に入れました。
患者さん向けの本ではありません。
医師向け、研究者向けの専門書です。
聴覚過敏についての確かな情報が少ないなか、患者が読むことも想定しているとのことですが、患者には内容的に難しくて専門的すぎる内容なので、買う人はわかって買ったほうがよさそうです。
私は医学系の英語論文を仕事でよむことが多いのですが、この本の翻訳はあまりこなれていなく、直訳的で分かりにくい表現がやや多い点が★のマイナスです。ただ、内容的には情報が濃くて貴重な本だと思います。
聴覚過敏について、文献や様々な研究成果をもとに
現在の時点でわかっていること学術的に解き明かしていきます。
世界の様々な研究を幅広く検討して考察しています。
この本を読んでわかったことは、
少ないながら聴覚過敏も専門的に研究もされていること、
すぐに効果がでるような治療法はいまのところないということ、
やはり自分は聴覚過敏らしい
ということです。
本のなかに聴覚過敏の重症度を評価できる14項目からなる質問表がのっています。自分では診断にはならないけれど、この表は、どういう要素が聴覚過敏なのかということを知るのに参考になります。
耳栓や音を防ぐためのヘッドホンを使用したり、静かな部屋でかえって音が気になったりなど、わかる部分がたくさんあります。
治療については
認知行動療法や音響療法が紹介されています。
認知行動療法は物理的に治すものではなく、心理学的なアプローチです。治療には根気がいりそうだし、そのまえに正しい手順で聴覚過敏の治療を行っている病院を探す必要がありそうです。
音響療法は研究によって効果があるだったり、効果は認められないだったり。ただ根本的な治療がないのでこういった治療で少しでもよくなればと試してみる人は多いようです。
聴覚過敏の原因がはっきりせず診断もほとんど確立していないため、聴覚過敏は自閉症やアスペルガー症候群の人がなるものとか、単なる神経質だとか誤解が多いと思います。
私も周囲の人に言っても多分理解はしてもらえないだろうと思うから、話すことも相談することもありませんでした。
日本でもっと聴覚過敏の診断と治療を行える病院がふえて、
患者さんが体系化された治療を受けれるように早くなればと願っています。
この本の日本語翻訳を出版してくれた出版社と訳者さんに感謝です。