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ウッドストックとは1969年8月、ニューヨーク州郊外のヤスガー農場で開催された、参加者70万人とも言われる、20世紀最大の野外音楽フェスティバルである。
ボクとウッドストックとの出会いはまだ学生の頃、たまたま立ち寄ったレンタルビデオ店の棚に、確かVHS上下2巻セットで貸し出しされていたのを、何気なく借りてきたのがきっかけだった。家に帰ってテープをデッキにセットし再生ボタンを押すと、いきなりマリファナを吸う若者たち、雨で出来た大きな水溜りに飛び込む全裸の男女の姿が映し出された。今の時代であれば危険で近寄りたくないような光景だが、画面からは不思議と平和的な雰囲気が伝わってきた。そこには60年代後半ヒッピームーヴメント全盛の光景があったのだ。
ステージに目を向けると、サンタナ、スライ&ザ・ファミリーストーン、ジミ・ヘンドリックスなど当時の大スターたちが、野外ならではの開放的でダイナミックな演奏を展開していた。最もボクに衝撃を与えたのは、テン・イヤーズ・アフターのギタリスト兼ヴォーカリスト、アルヴィン・リーの演奏だ。ビデオに収録されている「I’m going home」は当時人気絶頂であったジミヘンをも嫉妬させた、という逸話が残るほどの名演奏であり、映像を見る限り逸話は真実だったと思う。
実はこのレビューを書いている時点で、まだ1ページも本を開いてないのである。開いてないどころか手元にも無いのだ。学生の頃に何気なく借りた2巻のビデオテープが、20年以上経った今でも、目を閉じるだけで、オーディエンスの息遣いまで聞こえてきそうな・・・そんな不思議な錯覚を起こさせるのである。本を開いた瞬間にあの時の興奮はよみがえって来るのだろうか、それとも20年の間に自分は変わってしまったのか。実際にページを開く前にこんなにワクワクする本も珍しい。